ザ・グレート・展開予測ショー

予知夢、または美神のちょっと素直なところ。


投稿者名:ツナさん
投稿日時:(01/ 5/14)

 睡眠薬代わりのビンテージワインをグラスにあける。
 私の生まれた人同じ年代の赤ワイン。
 とかく気取る風も無くグラスを取り、一息に飲み干してしまう。
 いつもなら味わえるこの洗練された切れの良い、チーズに巣くったアオカビのような渋みも、わずかに舌をくすぐる濃縮された干しぶどうのような甘味も、今の気分では味わえない。
 時々私はいやな夢を見る。
 それは幼き日、父親とわかれた日のことであり、兄と慕った男との別れであり、母との別れの時の夢でもある。
 少し前まではそんな夢を気にすることなんて無かった、いや、気にする必要も無かったのかもしれない。
 一人でいてもあまり寂しいとは思わなくなっていたし、仕事に夢中で余計なことを考えているひまが無かったからかしら。
 でも最近はふと一人でいる自分に、寂しさを感じていた。
 あんな馬鹿でも、いなけりゃ寂しいのかな。やっぱり。

 幾度も繰り返される夢。
 
 そう言えば、横島君と二人で泊り込みの仕事をしたとき、変な夢を見たのよね・・・。
 あんときは最悪なことに横島君ととなり併せで野宿する羽目になって。
 

 夏、赤道近くの真上から照り付けてくる暑い日ざしのもと。
 どこかの美しい砂浜を私は歩いている。
 それはすがすがしい晴れやかな気分で、そして幸せいっぱいだった。
 
 となりに誰かが歩いている。私はその人の腕に腕を絡ませていた。誰かが私たちの写真をの写真を撮ってくれる。
   
 御礼を言いながらカメラを受け取りに行く彼の背中には見覚えが有った。
 
 どこで見たんだろうか。

 ・・・振り向いた。射光に照らされ一瞬顔が隠れたようにも見える。
 でもそのあと見たその顔は。
「・・・どうした令子?」
「横島・・・君?」
私の顔はそのときどんな顔だったのだろうか。彼は私の顔を覗き込むと、心配そうにしている。
「どうした、何か悪いものでも食ったのか?」
「ん、そんなことは無いけど・・・」
夢とは不思議なもので、それがあたりまえのことのように思ってしまう。二人は先日結婚して、今はサイパンに新婚旅行にきているんだ・・・。  
 さて、そろそろホテルに戻ろうか、彼はそういうと私をリードする。
「しかし10年前じゃ考えもつかんなぁ、二人で腕を組んで歩いてるなんてさ」
そうね。の頃はあんた私のでっちだったし。
「確かにな。・・・でも俺もいまや日本一のGSだよ?」
間抜けな所は相変わらずだけどね。

幾ばくかのときが過ぎて、私たちはオープンカフェで夜の風に当たりながら、カクテルを傾けている。
「なぁ、後悔して無いか?俺と結婚してさぁ」
うーん・・・アンタが浮気さえしなければ幸せな結婚生活が送れそう・・・って何女のけつ眺めてるのよ・・・・・

「この宿六がぁ!!!」

ばこぉ!
「ごめん令子、悪気は無かったんだ、目がかってに・・・・」 
 
私の捻りの入ったストレートが横島君の顔面に当たった。横島君は私の手をそっと除けながら下手な弁解をしている。
 私の目に入った横島君は、確かに横島君だけど横島君では無かった。
 横島君も同じ事を感じたのだろう。目に疑問符が浮かんでいる。

『夢?』
私たちの声がハモった。
「・・・・また、同じ夢を見てたんすかね・・・俺たち」
「いーえ、絶対違うわ、いやもし同じだったとしても絶対認めないわ私と横島君が新婚旅行に行って、幸せそうだった夢」
「ほらやっぱり同じ夢でしょ?」
 
・・・どきりとした。私は何を言っているんだろうと考えたりした。
 幸せ?・・・・・この馬鹿と結婚して?

 やだ、胸がどきどきしてる・・・
横島君はただじっと私を見ている。いつものふざけた顔とは少し違うように感じた。
 右腕が温かい。・・・・なんであんたと腕組んでるの・・・。
「起きたらこうでしたよ」
「・・・そー」
 私は無意識のうちの横島君に体を預けていた。横島君もちゃっかり方に腕を回している。
 
 薄ら寒いその夜は、朝までずっとそのままだった。ちょっと嫌じゃなかった。

 あの時はその場の勢いだったのよ。絶対そう。
 あんなの二度とごめんだわ。
 でもあれからあんまり嫌な夢は見てないよーなきがするのよね・・・。
 あの馬鹿怒鳴りつけてる夢はよく見るけど・・・。
「おはよーございます、美神さん」
「おはよ」
いてるそばから早速横島君が来たみたいね。
「ん、なんすか?」
「なんでもないわよ。さてと。今日は旧侯爵邸の悪霊を除霊しに行くんだったわね・・・おキヌちゃんは臨海学校だっけ。じゃあまた二人で行くわよ」
「また徹夜すね」
「妙な気起こしたら拳銃で頭ぶち抜くからね」
「はいはい」


fin  
 
 

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