ザ・グレート・展開予測ショー

黒い呪いと天使の笛の音(31)


投稿者名:AS
投稿日時:(01/ 5/13)

 屍と化した男が虚ろな眼をしたまま行進していく。
(最低無比・・・さぃテー無HI・・・砕底夢非・・・)
 何か凄まじいショックを受けたのか・・・その男は同じフレーズを延々繰り返していた。
 そんな彼を見ていられずに、彼に肩を貸している少女が先程から『元凶』と談笑している相棒に声をかける。
「タマモーもう良いでござ・・・」
 そこで『彼女』が振り向いた。 変わらぬ笑み。 しかし少女はその『笑顔』に何故か極寒の地へ迷いこんだかの様な『寒さ』を感じた。 彼女が口を開く。
「ナニカシラシロ?」
「なな何でもないでござるよっ!」
「そ。 ・・・それでねー、その時あたしがお皿にあぶらあげを・・・」
 何事も無かったかの様にまた『根源』との話に戻ったタマモ。 シロを身震いさせた、全てを凍らすプレッシャーが霧散する。
「へへへ・・・俺は全てを超越したのさぁ・・・」
 師は今だに壊れている。 何やら妙な境地へと到達した様だ。
 ズキンッ!
 この時・・・初めてシロの胃がキリキリと悲鳴を上げた。
「ぅぅ・・・」
 屍。 絶対零度の狐。 心労狼。 そして全ての元凶。 呆れる程にちぐはぐなメンバーが道を往く。

「女神様・・・拙者何か悪い事したんでござるかぁ・・・」
 


ー黒い呪いと天使の笛の音(31)ー



(だいたい何がどーなって、こんな・・・いたた・・・事になったんでござろう・・・)
 シロは先程までいた、廃虚での出来事を思い浮かべた。

 ドサァッ!
「せ、先生ーーー!!?」
 倒れ伏した師に駆け寄るシロ。
「先生っ! しっかりするでござる! 傷は浅いでござる!」
「・・・つーか無いでしょ・・・」
「タマモッ!」
 シロの眼に炎が宿る。 灼熱の炎がほとばしった。
 ギンッ!
「タマモ! 先生に向かって・・・な・・・にを・・・」
「ナニカシラ?」
 ビュオオオオオーーー!!! ビキビキィッ!
 シロの炎は吹雪にさらされ、凍りついた。
「ネェ・・・ナニカイイタイコトアルンデショ?」
「な・・・ぅ・・・」
 目をそらすシロ。 そのまま目を泳がせる。
 ふと、その目に一人の少年の姿が映った。
「!」
 少年に向かい、飛びかかるシロ。
「! うわっ!」
「こいつ! 捕まえたでござる! よくも・・・」
「はいそこまで」
 ギュッ!
「ーーー!!?!」
 突然、後ろから尻尾を掴まれ飛び上がるシロ。
「な、な・・・タマモ!?」
「ほら」
 睨みつけるシロに向かって、タマモが何かをつきつけた。
 それは・・・
「! そ、それは・・・」
(!?)
 タマモの手にある『笛』に気づき、少年に目を向けるシロ。
 少年はしばらくうつむいていたが・・・やがて顔を上げた。
 その目にはもう怨念じみたものは感じられない。
「もう説得したから。 目的も果たしたしここにいる必要は無いわ」
「! あ、ま、待つでござ・・・」
 突然きびすを返したタマモに慌てるシロ。 その横を何かが走り抜ける。
「僕も行く・・・」
「・・・いいの?」
 少年はコクリと頷いた。
 それを見て僅かに微笑み、タマモが階段を降りていく。
「・・・・・・」
 シロは呆然として・・・呟いた。
「な、何がどーなってるんでござる???」
「・・・・・・」

(どう考えてもわからないでござる・・・一体どうやって説得を・・・)
 首を捻るシロの横で、大声が張り上げられた。

『な・・・ここは!!? あ! ・・・このガキャーー!!!』
「先生!?」
 突如、横島が正気を取り戻し、少年に飛びかかって・・・

『ウワヂャアーーーーーーーーー!!!!?』

・・・炎に包まれた。

「・・・何で俺ばっか・・・こんな目に・・・」
「先生・・・」
 丸焼きの師の姿にため息が洩れるのをよそに、タマモの声が辺りに響いた。
「着いた!」
 気が付くと、見慣れた会場がそこにあった。

「やっと・・・戻って来たわね・・・」

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