ザ・グレート・展開予測ショー

黒い呪いと天使の笛の音(28)


投稿者名:AS
投稿日時:(01/ 5/10)

(こ、こいつ・・・!)
 今になってようやく、少年はタマモの正体に気がついた。
<残念だったなー・・・狐火に焼かれるなんつー・・・>
 狐火。 そして人を化かす幻術。 それらを操るのは、その名の示すとおり、狐の変化・・・いや、狐達にとっては神にも等しき存在。
「妖狐・・・!?」
 目の前で・・・苦労してると一目で分かる様なため息を洩らしたー・・・いかにも人間くさいこの少女が一度はこの国を大混乱へと導いた伝説の大妖怪。
(嘘だろ・・・!?)
 生きた証拠を目にしても、半信半疑の少年。
「・・・・・・」
 しかし・・・その少女は確かに九本の尾を生やしている。 疑う余地など無い。
 少年がじっと見ていると、妖狐の女は居心地悪そうに身じろぎする。 そうして口を開いた。
「ねぇ・・・」
「!?」
 突然口を開いた大妖怪に、とっさに身構える。
 そんな少年の様子はさして気にせず、タマモは言葉を続ける。

「横島と・・・何があったの?」



ー黒い呪いと天使の笛の音(28)ー



「エミ君」
「何なワケ?」
 後ろから声をかけて来た相手に、見向きもせずに答える。
 その目は・・・今はやや心苦しそうに影を攻撃している女性へと注がれている。
 その女性の闘い方は、先刻の触れた物全てを飲み込みずたずたにする竜巻の様なものから・・・洗練され理にかなった優雅なものへとなっていた。
 横に並んでいる二人のヒヨッコ達に目を向けると、暴れ狂っていた時とは全く違う『あの女』の闘い方に、目を奪われている様だった。
「おねーさま・・・ふぅ・・・」
「やっぱすげぇ・・・霊的格闘もここまでこなせるのか・・・」
 うっとりするヒヨッコ達を見ていると、別の声が届いた。
「エミさん、あの呪いを破るーーー!!?」
「ピート!? 何!? 何か用なの!?」
 目をつけている金髪の美青年に声をかけられ、エミは・・・いつもの対応を始めた。
「エ、エミさんっ! 非常時ですよっ!」
「大丈夫・・・とーぶんあの女が粘ってく・れ・る・か・ら・・・」
 そのまま迫ろうとするエミ。 不謹慎とも言えるが、いかなる事態に陥ろうとも普段通りなのは感嘆すべき『図太さ』と言えよう。 (周囲にとっては迷惑の一言に尽きるが・・・)
「・・・ゴホン!」
 その時、再び後ろから声がかかった。
「あー・・・エミ君! 出来れば我々にも事態の説明を頼みたいのだが・・・いいかね?」
 懸命に落ち着きを取り戻そうとしている感のある神父が、穏やかに声をかけてくるのに対し、エミは顔をしかめつつ、神父に向かって振り向いた。
(・・・ちっ・・・!)
 もちろん舌打ちは忘れなかった。
(た、助かった・・・)
 エミの『魔手』から逃れた青年は、心底ホッとした顔だ。
 そうしていると、ややきつい目をした青年が近づいてきた。
「じゃ、俺にも説明頼む。 解りやすくな」
「おい!」
 悪びれた所など全く無い青年の態度に、すかさず金髪の青年が文句を言おうと詰めよるが・・・神父がなだめると大人しくひき下がった。
「やれやれ・・・じゃあエミ君・・・頼むよ」
 相も変わらず問題児揃いの後輩達に嘆息しつつ、神父が話をふる。
「はいはい・・・それじゃあ・・・」
 ふいに、エミが口ごもる。 表情に暗くなる。
「・・・・・・」
「?」
「エミさん?」
 急に口を閉ざしたエミに、戸惑う青年二人。
「・・・・・・」
 神父はエミの表情から何かを察したらしく・・・こちらも渋面となった。
「ある程度は私も理解しているよ・・・大丈夫。 皆そんなに弱くないさ・・・」
「・・・そうね」
 あくまで穏やかな神父の言葉を受け、一つため息を洩らし、エミが口を開く。

「まずははじめてこの呪いが世に出た時の事から・・・ね」

 一方・・・タマモと少年は・・・

「それ・・・ほんと? 脚色無し?」
「誰がこの期におよんで嘘つくもんか!」
「・・・・・・」
 
(横島・・・あんたって・・・)

 深い・・・深いため息をついて、彼女は思った。

(・・・・・・さいてー・・・・・・)



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