ザ・グレート・展開予測ショー

黒い呪いと天使の笛の音(25)


投稿者名:AS
投稿日時:(01/ 5/ 6)

 廃虚と化したビルの、重々しい鉄の扉に閉ざされた部屋・・・その部屋の前で一人の少年が微笑んでいる。
(ふふ・・・く・・・くく・・・)
 本人は実に、爽快な気分なのだが・・・その口もとから笑みをこぼす姿はまるで、天の邪鬼がタチの悪い悪戯に成功した時の様に見える。
(・・・ばぁか・・・誰がお前らに斬られるもんか・・・!)
 胸中で、少年は扉の向こうにいる『仇敵』達に舌を出した。
(・・・・・・)
 ごそごそと、服の下から鎖つきのペンダントを取り出す。
(時間制限付きの上・・・一人分の空間しか効果は現れない霊力無効化アイテム・・・だけど・・・)
 しばらくペンダントを眺め、再び胸もとに隠す。
(霊波刀なんて無駄なあがきさ・・・扉に触れた途端・・・くっくく・・・)
 自分ごと扉を斬ろうとして失敗した間抜け共を罵るか・・・このまま歯噛みするのを見物するのも悪くない・・・と、どす黒い考えを幾つも巡らし、ほくそ笑む少年・・・
 更に『間抜け共』を陥れようと、口を開こうとした時。
(ん・・・?)
 ふいに、感じる、違和感。
(何だ・・・興奮で体が熱くーーーー!!!?)

『ウワヂャーーーーーーーーーー!!!!!』

 突如として、背にした扉が巨大なアイロンと化した・・・



ー黒い呪いと天使の笛の音(25)ー



「あち! アチ! あチゃーーーーーーッ!!!!」
 両手で必死に、背中を叩きつつ・・・ごろごろ床を転がる。
 床と言っても廃虚と化したビルでは・・・陰湿な分、地面を転がる以上に汚れがこびりつくのだが・・・今の少年にはそんな事に気をまわすだけのゆとりは無かった。
 ザシュ! ズバァッ!
 閃光が走り、灼熱の扉が四散する。
「気をつけろよ・・・扉には足つけるなよ・・・」
 ゆっくりと、扉の破片をよけて・・・三人の男女が姿を現す。
「ああ・・・! ぐ・・・!」
 焼肉やお好み焼きの感覚をダイレクトに味わった少年は今だ・・・伏せったままじたばたともがいている。
「残念だったなー・・・狐火に焼かれるなんつー間接的な事にゃ、せっかくのお守りも役に立たなかったな・・・」
「ーーー!!?」
 最も因縁の深い、仇敵の男ー・・・横島の言葉に、少年は熱さも忘れて驚愕した。
「斬られるかもしんねーのにそんな落ち着いてられる奴いねーよ・・・ま、やたら死にたがる奴もいるだろーが・・・な・・・」
 一瞬、遠い目をして、言葉を止めるが・・・すぐに言葉を続けた。
「ま、そん時に、お前が霊力防ぐ物持ってるって確信した」
少年は苦しげに身を起こしながら、横島に問いかけた。
「確信・・・いつから・・・気づいてた・・・?」
 ニヤリとして、答える。
「シロとタマモが急に霊波を嗅ぎとれなくなった時からな」

『ーーーー!!!』

 少年のみならず、シロとタマモも驚愕の表情になる。
 そんな周囲の反応にややムッとしながらも・・・言葉を続ける横島。
「・・・んで念のためーお前がお守り持ってる時の為に、『山』『彦』の文珠を使ったわけだ。 あと扉を斬るのに気づかせたのも、お前の反応を試そうとした・・・ってわけだ」
 ガバァッ!
「!? お、おい! シロ!?」
「先生っ! 拙者拙者・・・一生ついていくでござるーーー!!!」
 シロはこれ以上無いという程、目を輝かせー・・・横島にじゃれまくる。
(おおげさなんだから・・・でも・・・)
 肩をすくめて、シロの喜び様を見、横島に目を向ける。
(そうね、ちょっとだけ・・・ほんのちょっとだけ、見直したかな・・・)
 タマモが感心した目で、シロに手を焼く横島をしばらく眺めているとー・・・

「・・・く・・・くく・・・」
 
『!』
 いつの間にか立ち上がった少年が、目をぎらつかせて何か、棒きれの様な物を携えている。
 横島が無造作に一歩、踏み出した。 
「おい・・・いい加減にしねぇと・・・」
「それっ!」
 少年が携えていた棒を、壁に向かってに振り抜く。
 すると。
 ズン!
「な・・・っ!」
 棒が壁にめり込み、レバーの様になる。
「落ちろ!」
 少年がレバーを小刻みに動かすと・・・
『!』
横島達の足もとの、床が消えたー・・・

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