ザ・グレート・展開予測ショー

黒い呪いと天使の笛の音(24)


投稿者名:AS
投稿日時:(01/ 5/ 4)

「うおぉぉっ!」
 恐怖。
 目前で繰り広げられるのは、哀れな黒い物体を、羅刹の如く情け容赦無く殴りつける女性の凶行。
 それは見た者全てに、酷さよりも先に本能的な恐怖を感じさせた。 恐怖は伝染し、やがて大混乱を巻き起こして行く。
「落ち着いて下さい! 我々の指示に従い・・・」
 恐慌状態に陥った一般の観客を落ち着かせ、避難させるべく役員達が奔走する。
「非常口はこちらです! 落ち着いて誘導に従って下さい!」
「慌てずに! お年寄りの方からです!」
 最初は雪崩の様だった人波もまばらになっていく。
 やがて・・・最後の一人まで会場の外へ避難させると、役員の中でも初老の域に入る男は、額から流れる汗を拭った。



ー黒い呪いと天使の笛の音(24)ー



 パタパタパタ・・・
 男にむかって、役員である事を示す名札をつけた、一人の女性が駆け寄って来る。
「正門からの避難誘導、完了しました!」
 その言葉に、男は大きく頷く。
「よし! では後は唐巣神父に任せて、我々も・・・」
「あ」
「む?」
 ポカンと口を開けた、女性が指さした方へと振り向く。
 そこには・・・

「グランド・クロス!」
「のわあぁぁぁぁ・・・」

「・・・・・・」
「・・・・・・あのー・・・?」
「む、何だね?」
 男は平然とした顔を『つくり』振り返った。
「今ー・・・勢いよく飛んでったの・・・」
 ガシッ!
「いいかね・・・我々は何も見なかった・・・そうだな?」
「え、でも・・・」
「殉職希望かね? なら先にこの保険金関係の書類に・・・」
「即刻! 退避いたしましょう!」
 勇敢な神父の無事を祈りながら、彼らはその場から離れた。

 会場内での騒動の一つが片付いた、その頃。
「シロあれ斬れ」
 説得を諦めた師の言葉に、人狼の少女は目を輝かせた。
「りょーかいでござる」
 そう言って、いそいそと扉に向かう少女を見ながら・・・
(結局力押し・・・なら最初っから・・・)
 自身も最近多くなったと思いつつ・・・タマモはため息をついた。
「けーき良くズバッと行けよー」
「任せるでござる!」
 尊敬する師の言葉に、シロが明るく返事した、その時。
「扉を斬る気かい?」
『!』
 いつの間にか朗読の声が止み、少年が扉越しに、こちらへ問いかけて来た。
「そうそう・・・そうやって最後は力に頼るのが『君達らしい』・・・よっこらせ、と」
 扉の向こうに何かがもたれかかった様な音がした。
「さ、斬りなよ」
「な・・・!」
 シロの顔が強ばる。
「僕なら構わないよ・・・さんざん偉そうな事言った君達が、結局はただの『偽善者』だって、わからせてやれるし」
「ざけんなガキ! さっさとそこどけ!」
 全く動じず、落ち着いた声が返る。
「うるさいな・・・だいたいおまえは偉そうな事言ったけど、金に尻尾ふって人の努力を台無しにしたくせに・・・」
「・・・!」
「あの女も同じ・・・試験を受けに来る人間じゃ、決して手に入らないサイズの精霊石に頼って・・・当然の報いさ・・・!」
「お、おキヌ殿はそんなこ・・・!」
「もう話す事は無い!」
 そう言い放って、少年は黙り込んだ。

「せんせぇ・・・」
「・・・どうするの? 横島・・・」
「・・・・・・」
 しばらく考え込んでいた横島が、ふいに顔を上げた。
「タマモ、耳貸せ・・・(ヒソヒソ)」

(静かになったな・・・ん、何だ? 興奮で体が熱くなーーー)
(!!!?)
「ウワヂャーーー!!!」
 灼熱の鉄板と化した扉に背中を焼かれ、少年が床を転がる。
 ザシュ! ズバァッ!
 その後ろで、幾つもの閃光が走り、扉が四散した。

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