ザ・グレート・展開予測ショー

黒い呪いと天使の笛の音(23)


投稿者名:AS
投稿日時:(01/ 5/ 2)

 晴れ渡った青い空に、まぶしく輝く太陽・・・その恩恵を真っ先に受けるのは、この辺りで唯一禍禍しい『何か』を感じさせる異様な雰囲気の建物。 
 『一般人』は誰も立ち入ろうとはせず、寂れた上に野生のカラスやら、既にあちら側の住人となった『モノ』達まで集まり、心霊スポット等とは比較にならない危険度を誇るそのビルに・・・初めて、何人かの霊能者が足を踏み入れた。
だが。
「そして僕は・・・かっての恨みと味わって間もない屈辱を晴らすべく・・・」
「くおら! ガキ! 今すぐ出せばお仕置き1割分容赦してやるとこを0・1割にしてやる! さっさと開けろ!」
「せんせぇ・・・それは詐欺ではござらんか?」
「違うわシロ、引っかかる人なんているわけ無いもの」
 集まった霊能者は皆ー・・・あたりをさ迷うモノを除霊する事など、これっぽっちも頭に無い様だった・・・



ー黒い呪いと天使の笛の音(23)ー



 しばらくして・・・扉を叩く音も、怒声も止み、辺りに響くのは少年の『朗読』のみとなった。
「くそ・・・人が寛大な態度で接してやってるのに!」
「叩きすぎで手が真っ赤でござるぅ・・・」
 先程まで、横島は必死に少年を『説得』していたが、今はただブツブツと怨念じみた呟き声を出しながら、部屋をうろうろしている。
 シロは扉の前で赤くなった手にふーふー息を吹きかけている。
 二人のそんな様子をしばらくの間、ただ黙って見ていたタマモは、ため息をひとつ洩らすと二人に向かって声をかけた。
「で・・・これからどうするの?」 
 タマモの言葉を聞いて・・・横島とシロは顔を見合わせると、同時に頷き、重々しい扉に目を向ける。
 そして、出た結論は・・・
「シロあれ斬れ」
「りょーかいでござる」
 タマモはため息をついた。

「鏡?」
「そ、鏡なワケ」
「おおおーーーっっ!!!」
「くらえこの野郎っ!」
 追撃隊が結局力押しに出た一方・・・残った方でも、今だ美神が力押しで『黒い塊』を押さえつけ続けていた。
 いつの間にか雪之丞も加わり、暴れまくっている。
「こ、こらー! 少しは周囲への・・・ぶっ!」
「先生ー!」
 美神の心情を察してはいたが、周囲への被害からついに注意しようとした『神父』に、見境無くなった弟子の一撃がクリーンヒットする。
 その傍らで、エミは学生二人に講義を続けていた。
「鏡に自分が恨んでる・・・相手・・・」
「?」
「ごほん! 恨んでる相手をイメージして・・・この時一つ相手の持ち物も思い浮かべるワケ」
「その持ち物が・・・」
「笛ですのね?」
 二人の意見に頷き説明を続ける。
「鏡がそれらを映し出したらその鏡に一つ・・・命令するワケ」

「美神さんっ! 少し落ち着いて・・・ぐわっ!」
「あ、わりぃ・・・っておい!」
「ダンピールフラッシュー!!!」

「命令を受けた鏡は、相手の持ち物をこちらに差し出す・・・つまりこちらの世界における、偽物をね・・・」
「あーもー! だから! 一体おキヌちゃんはどうしてあんなになってんだよ!?」
 元々短気な一文字が、ついに我慢の限界を迎えた。
「・・・そうですわね。 そろそろ本題に入って頂けません?」
 弓もそれに同調し、問い詰めて来たのに対し、エミは少し残念そうに口を開いた。
「やれやれ・・・ま、じゃあすり替えられた偽物の笛を、本物が触ったらどうなると思う?」
「だから・・・むぐ!?」
(本物の氷室さんが・・・偽物の笛・・・氷室さんが偽物に・・・)
片手で一文字の口を押さえ、考え込む弓。
(・・・本物の氷室さんが偽物に間違われるとしたら・・・何に?)
 そこで弓の表情が強ばる。
「まさか!!」
「ぷはっ! 弓てめ・・・」
 くってかかろうとする一文字を、横からエミが抑えた。
「まあ待つワケ・・・で?」
 一文字を抑えながら目線を向けて来たエミに、弓はゆっくりと答えはじめた。

「あの影は・・・氷室さんを『偽物』として排除しようとしている・・・?」
 その答えに、エミは大きく頷いた。

「わざとじゃねーつってんだろ!?」
「ピ、ピート君! 君まで一緒になーーーー!!!?」

『グランド・クロス!!』

またもや神父は・・・弟子に吹っ飛ばされた・・・


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