ザ・グレート・展開予測ショー

横島夜行  解放


投稿者名:TAK・A
投稿日時:(01/ 5/ 2)

(何だ無事だったんじゃない。全く心配させて)
 ほっとして横島に声をかけようとする美神。
 だが横島のすぐそばにボブカットの少女が現れる。
 少女を抱きしめる横島。自分に振り向き勝ち誇った笑みを浮かべる少女。
「!」
 そこで目が覚めた。一瞬だが眠ってしまっていたようだ。
(最悪だわ)
 分かっている。彼女はあんな笑みを浮かべたりしない。あれは自分の嫉妬の産物だ。
 十五の時母が死んだと聞かされて以来、誰にも頼らず一人で生きてきた。他人がどう思おうと関係ない、自分の自由に生きる。他人を犠牲にしてもかまわないとすら思っていた。
 「あれ」もそんな他人の一人だった。時給の安いだけが取り柄のいつでも切れる使い走りの小僧。そう思っていた。なのに今では自分の中でいかに大きな存在と化していることか。
 美神にとってあの夢は目を背けていた自分の弱さそのものだった。
 自分は「あれ」に甘えている。最近ではそう認めざるを得ないと思うようになってきた。自分がどんなひどい目に遭わせても、結局自分のそばにいてくれる。そんな相手を求めていたというのか。実際、「あれ」が自分を超えたとき悔しさよりもうれしさがわずかに勝っていた。自分のために強くなった。そう思っていたから。自分を殺すことが出来るのに偽物と思いこんでいてもそうしなかった。それが嬉しかった。
 今、美神は長い間目を背けていた弱さに直面せざるを得ないときが近づいているのを悟っていた。
 しかし「あれ」に向かって一歩も踏み込めない。
 てれることないと人はいう。しかしもっと切実な問題だ。「あれ」を受け入れた自分が想像できない。
 もう一つ理由がある。
(ルシオラ、アンタの望みは叶ったわ。だけどいつ横島君を解放してくれるの?)

 十八年近く生きてきた。だけど人に自慢できることなどたいしてない。
 最も秀でた力すら女一人守れるものではない。

「ポチ、おまえを恨まないのは無理だ。だけどおまえはアシュ様とルシオラを少なくとも解放してくれた。それだけは感謝しているよ」

 彼女の妹のこの言葉だけがあの戦いで得たささやかな戦果。ちっぽけな誇り。

 それ故、横島は知盛の自分たちを呪縛から解き放ってほしいという願いを聞き入れた。

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