ザ・グレート・展開予測ショー

ミットナイト・ダンディ(その十四)


投稿者名:ツナさん
投稿日時:(01/ 5/ 2)

 数秒もせずにヘリの轟音が横島たちの頭上に轟く。爆風が当たりの草木を大きくしならせ水面に小波が立つ中、ヘリのスピーカーから声が響く。
「横島さん、先生、応援読んできました!」
援軍を連れ立ってピートが戻ってきたのである。
 しかし、それを黙ってみている悪霊ではなかった。
 悪霊はあれが何だかをすぐに察知し、破壊しようと動きを見せた。
 悪霊は手近な大人の頭大を二周りは上回ろうかと言う巨石を容赦なくヘリのプロペラ部分を狙って投げ付け始めたのである。
 そうなるとヘリはたまったものではない。パイロットはすぐに緊急上昇をはじめる。
「どうにかならんのか?」
西条が縄梯子でもいいからどこかにおろしてくれと指示を出すがパイロットも命がけである。
「無理です、離脱します!!!」
と急旋回をはじめた、とその時。
尾翼のプロペラに巨石が命中し、制御不能に陥る。
「だ、ダメです、不時着します!」
仕方なく慎重に降下をはじめるパイロット。ヘリが回転をはじめた中、すさまじい技量と集中力で着陸を果たそうと躍起になっている。
「ちょっと、大丈夫なわけ?」
エミが操縦席に身を乗り出してわめき、美神は黙って脱出準備をしている。
 また高度はは20メートル程度あるが、横島の文珠をいくつかへそくりしているので手はある。
「おさきにぃ!」
そしてさっさと脱出を図った瞬間、再び巨石がヘリを襲う。今度はかなりの数である。
その巨石の飛来と同時にピートが美神とエミの手を掴み、その意図を汲んだ西条は適当なところを掴んだ。そしてピートはそのまま宙に飛び出す。回転するヘリの尾翼が4人の背中を掠めた。
「すまん!!!」
西条が涙をのむ。一拍置いて巨石がヘリに激突し。

その光景を唐巣たちは呆然とと見ていた。まさかいきなりヘリを狙うとは思っていなかったのである。
 時間にして数秒、その間彼らは不覚にもヘリが落とされるのに見入ってしまって、悪霊が巨石を投げるのを阻止することを失念してしまったのである。
 そして阻止しようと横島が動いたときにはもう遅かった。ヘリは尾翼と操縦席に数発巨石を食らって墜落炎上をしてしまったのである。
 もうもうと煙が立ち昇る中、一同、唖然とするしかなかった。
 まさか、と思っていたことが現実となると人は動きが止まる。と同時に失望感と怒りが込み上げる。
 このとき唐巣たちは4人が脱出したことに気づかなかった。
 丁度唐巣たちから見ると脱出した美神たちはヘリや巨木の影に入ってしまっていて、脱出したそれ自体を見ることが出来なかった。
 冷静に考えれば脱出可能であることは分かるにしても、予想だにしないヘリの撃墜劇に気が動転してしまっている彼らにそう考える精神的余裕は無い。
 となると次の行動は復讐心からの行動になる。
 4人のなかではじめに動いたのはおキヌちゃんだった。
 懐から札を取り出すとそれを放つ。放たれた札からバロム13が飛び出してきておキヌの周辺に集う。
「みんな!横島さんを援護して!」
 おキヌちゃんが危惧したのは横島の暴走である。
 怒りに身を任せてはその分危険が生ずることを彼女は理解していた。
 と同時に彼女は一匹だけ残してヘリの周辺を探ってくるよう指示した。もしかしたら、と言う一念がそうさせたのであろう。
 バロム13は忠実に指示に従う。
「大丈夫、皆生きているはずだ」
そういっているのは唐巣である。と言っても確信は無い。唐巣は冷静に判断することに勤めた。もし助かっていたとしても、大怪我をしている可能性が高い。かの状況からの脱出はそれだけ困難を極める、と唐巣は踏んだ。そのうえでこれからどうしようか、と考える。
 横島はおそらくこのまま悪霊に突撃いていくであろう。彼の心はすでに平成を失っているのが離れていても分かる。
 おキヌちゃんはおそらくそれに追随するはずだ。
 となると唐巣は一人で明日美を守らなくてはいけない。彼女は先の一撃で霊力を著しく消費させていた。今はほとんど普通の人間と変わらない。
 唐巣にしてもヒーリングを受け多少回復したとはいえ、いまだ本調子には程遠い。
 となると残る手は一つしかない。
 逃げの一手。
 唐巣は横島たちを押さえにして明日美をつれ逃げよう、と瞬時に結論を出していた。
 見捨てるような形になるが、仕方ない。いや、あえてこの場にとどまるより逃げたほうが横島たちの負担は少ないと考えた。いた所で今や足手まといにしかなりえないのである。
 結論が出れば後は行動に移るのみ。唐巣は明日美にその旨を伝えると、すばやく移動を開始した。
 おキヌちゃんはそれを見て胸をなでおろす。それだ正しいと言うことぐらいは分かっていた。

 そして横島である。彼の頭の中ではなぜかルシオラのことが浮かんでいた。彼女との最後の別れのシーンが脳裏をよぎったのだ。
 もういやだ!
 彼の心の中でそんな叫びが渦巻く。
 死なせたくない、失いたくない!!!
 その叫びは足先から脳天までを駆け巡り、それと同時に怒りが込み上げる。
「う、うぁぁぁぁぁぁああああ!!!!」
切れた。そういう表現が一番見合うだろう。同時に横島の手の内にいきなり数個の文珠が発現した。
 横島の霊力の源は煩悩である。しかし煩悩とは何なのだろう、それは本能の一角を占める重要な感情である。つまり横島の霊力の源はいわば本能的な感情から生まれると言っていい。
 愛するも傷つけたものに対する怒りもまたそんな本能的な、煩悩に近い物なのかもしれない。
 そんな急激な霊力の高まりに、横島自身が戸惑った。眠っていた力が一気に解放されたような錯覚に陥る。  
 やれる。横島はそう判断した。そうなれば迷わず突撃あるのみである。
 いたって冷静ではなかったが、横島はなにやら確信めいたものを感じていた。
 
続く

今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa