ザ・グレート・展開予測ショー

黒い呪いと天使の笛の音(22)


投稿者名:AS
投稿日時:(01/ 5/ 1)

 カシャァァン!
「くそっ!」
 『奴ら』が先程までいた空き地から、数百メートルほど離れた場所にある、撤去予定だった廃ビル・・・そこは撤去作業の寸前、突如として悪霊の溜まり場となってしまい、打ち捨てられ、今では誰も寄り付かない・・・筈の場所だった。
 なお・・・このビルの除霊依頼が、とある強欲辣腕美人GSのところに届きはしたが、ギャラの関係等でにべも無く断られた事は・・・今さら言うまでも無い。
 ともかく・・・誰もいない筈のその場所に、何かが叩きつけられる音が響いた。



ー黒い呪いと天使の笛の音(22)ー



「つまり、今あの女がやってる事はー・・・ただの時間稼ぎにしかならないワケ」
 暴れまくる美神を横目にした、エミの説明が続く。
「あたしも前に本で読んだだけで、実際に見るのはこれが初めてなワケ。 自分でやろうとは思わなかったし、それにー・・・」
 話の途中で、エミは突然口をつぐんだ。
「それに・・・?」
「・・・・・・」
(こんなタチ悪いのはとっくに・・・『廃業』したワケ)
 その続きを心の中だけでこっそり打ち明け、彼女は話をそらそうと、別の事を口にした。
「・・・それに、この呪いはいろいろ面倒なワケ」
「面倒? 何がさ?」
(ふぅ・・・)
 うまくごまかせた事に、ホッとするエミ。 
(・・・・・・)
 もっとも片方は眉をひそめていたが、追及はして来なかった。
「この呪いは・・・厳密に言えば呪いじゃ無いけど悪意のこもった魔術だからね」
「・・・・・・?」
「この呪いはかける前に相手の物を一つ・・・たった一つだけ奪う必要があるワケ」
 聞いてる二人の内、一方は話を理解出来ずに困惑している顔だが、もう一方は何かに気づいた様に、あっと息を呑んだ。
「もしてして! あの笛ですの!?」
 黒髪の方の言葉に、エミは大きく頷いた。

 ギ・・・ギギィー・・・!
 廃虚のビルの奥にある寂れた部屋。 その部屋に通じる扉が床に跡をつけながら開いていく。
「居るのは分かってんだ! 出てこい!」
 部屋に入った三人の中で、唯一の男が声を張り上げる。
「ノックもしないで・・・随分な物言いだね・・・」
「!?」
 三人は『後ろからの声』に、振り返った。 そこには・・・
「久しぶりだね・・・歓迎するよ!」
 バターン!
「!? しまった!」
 『少年』の言葉が終わるや否やー・・・物凄い勢いで扉が固く閉ざされる。
ドン! ドンッ!
「開けろ! こら!」
「無駄な事はよすでござるっ!」
 扉の向こうからのせっぱつまったその声に、少年の口もとが歪み、笑みがこぼれる。
「まあ、ゆっくりしなよ・・・そうだ・・・この呪いの事でも話そうか・・・退屈しないように・・・ね」
 ドガアッ!
 一際大きく、扉を叩く音がした。

「・・・と、いうワケ」
「じ、じゃあおキヌちゃん助からないのか!?」
(ハァ・・・ハァ・・・)
「嘘・・・でしょ?」
 残酷な言葉が、苦しげな少女の息遣いと共に・・・皆を絶望で包んだ・・・かに見えた。
「は・・・何が?」
 悲壮な問いに対し、返って来た言葉には、悲壮さなど微塵も感じられなかった。
 ともかく、場にコケているのが二人・・・揃って顔を上げて同じ内容の言葉をぶつける。
「だからっ! 手段が無いって・・・」
「嘘なんでしょう!?」
 鬼気迫る二人の言葉に、エミは軽く手を振った。
「ああ・・・手段は無いわよ? 『こっち』には・・・」
 エミは言葉の途中で、不敵な『笑み』を浮かべる。
「心配無いワケ・・・何たってこっちには! 『呪いのプロ』がいるんだから! 大船に乗ったつもりでいればいいワケ!」
「・・・ハハ・・・」
 自信たっぷりのエミ・・・に対し、二人も乾いた『笑み』を浮かべた。

「そう! 僕はその時そいつから・・・」
「出せ! お前の話に付き合ってる暇なんかねぇんだ!」
 ドンドンと扉を叩く音が虚しく響く中、少年は自分に酔ったかの様に、『朗読』を続ける。

「・・・この呪いを、お前らを懲らしめる呪いを・・・」
『こっから出せーーーーーーーーーっっっ!!!!!!』

 辺りに怒号が虚しくこだました・・・


今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa