ザ・グレート・展開予測ショー

黒い呪いと天使の笛の音(21)


投稿者名:AS
投稿日時:(01/ 4/30)

 閑散とした広場・・・否、空き地に面した道路に三人の男女がたたずんでいる。
(ちくしょー・・・この文珠は『とっておき』だったのに! それもこれもぜんっぶあのガキの・・・)
 手の中にある薄ぼんやりと光る珠を見ながら、男はぶつぶつ何事か呟いている。
 やがて顔を上げると、後ろにいる二人の女性に声をかけた。
「シロ、タマモ。 俺が文珠を使ったら、出来る限り『聞こえて来る声』に意識を集中してくれないか?」
『???』
 しばらく一人でぶつぶつ言ってた相手に、突然声をかけられた上に、その言葉の内容もいまひとつ意味を計りかねるものだったのでー・・・シロとタマモの顔に、いかにも『疑問』といった色が浮かんだ。
 そんな二人の様子に気づくと、男はもう少しかいつまんだ説明を始めた。
「あー・・・つまりこの文珠を使うと・・・あーなってー・・・そしたら・・・」
「ふんふん・・・へぇ・・・」
「なるほど! 流石は先生でござる!」
 今度の説明では、全てを理解してー・・・片方は少し感心したように、もう片方は男の機転に顔をほころばせている。
「・・・じゃ、いいな・・・行くぞ!」
「うん!」
「りょーかい!」
 二人が返事するのと同時に、男の両手に片方ずつある文珠が強烈に光り輝く。
 その文珠には、右の手の方には『山』、左の手には『彦』、の文字が浮かんでいた。



ー黒い呪いと天使の笛の音(21)ー



(すぅーーーーーー・・・)
ピタッ・・・!

『俺は根暗で執念深くておまけに女々しい変態だーーーーーーー!!!』

 晴れ渡る青空に、おおーきな白い雲・・・照りつける太陽。
 そのただ中にある一人の男・・・その男が、声の出る限り叫んだその内容は、周囲の爽やかさをぶち壊しにした。
 そして後ろから、ひそひそとした話し声が彼の耳に届く。

(・・・前からこっちは知ってた事だけどー・・・そっかぁ、とうとう自分でも認めたのねー・・・立派よ横島・・・大丈夫、誰が白い眼で見ても、私が友達でいてあげるから・・・)

(せんせぇ・・・拙者、先生がどこまで堕ちようと、付き従うでござるよ・・・)

「お前らーーー!!! 人の話を聞いとったんかぁぁ!!?」
「横島! 静かに!」
「先生! 作戦中でござるよ!」
 彼はこめかみに青筋を浮かべ、拳をきつく握り締めた。
「・・・・・・(後できついお仕置きしてやる・・・)」

 横島がメラメラと暗い炎を燃やしていると・・・『声』が返ってきた。

『僕は根暗で執念深くておまけに女々しい変態だーーーーーーー
!!!』

「横島!」
「先生っ! あっちでござる!」
「よっしゃ! 行くぞ!」

 三人は声の方向へと走りだした・・・

 一方、こちらに向かってくる三人を、口を押さえながら、双眼鏡越しの、驚愕の眼差しで見つめる者が一人。

『な、何でこんな・・・まさか! これがあいつの!?』

 ー文珠『山』『彦』ー
 
 対象が自分の声の届く範囲に居る、なおかつ声がお互いに聞こえる状況で使用可。 自分の出した声を強制的に、そっくりそのまま対象に返させる。 なお相手の一人称、声音は変わらない。

(ちくしょー・・・これ初めて使うのは、美神さんにあんな事とかこんな事言わせる時って決めとったのに・・・)
「先生?」
「・・・何か良からぬ事考えてる顔ね・・・」

「・・・と、いうワケ」
「じゃあおキヌちゃん助からないのか!?」
「・・・・・・」
(ハァ・・・ハァ・・・)
 少女の苦しげな息づかいが・・・
「嘘・・・でしょ?」
 残酷な知らせと共にー・・・皆を絶望で包んだ・・・






AS「仕方無いとはいえ笑えない展開・・・早く明るい話書きたい・・・こんな話ですけど、読んでもらえたら嬉しいです」



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