ザ・グレート・展開予測ショー

ミットナイト・ダンディ(その十三)


投稿者名:ツナさん
投稿日時:(01/ 4/29)

 悪霊の右腕から振り下ろされる一閃がおキヌちゃんの頭上から打ち砕かんばかりに振り落とされようと言うその刹那。
「くそがぁ!!!」
横島がこの土壇場で超加速にも迫らんと言うほどの脚力で悪霊に迫るが、わずかの差で及びそうもない。
 おキヌちゃんはそれでもただ覚悟を決めて死地に赴く可憐な女戦士のごとく、悪霊の前に立ちふさふがる。
『汝の魂を肉体より解放する!!贄となりわが力となれ!』
悪霊の凶声が全身に突き刺さり、身震いとともにすり抜けていく。
 おキヌちゃんの心の中は穏やかだった。
 死の恐怖が微塵も感じられないほど。
 後悔が無かった、と言っては嘘になる。未練が無い、そんなことも無い。
 彼女の心の中にあったのは、ただ生き残ることだけだった。
 誰も失うことなく、何も失うことなく・・・・。
 そしてその思いはおキヌちゃんだけではなかった。
 ただ頭を抱え、震えていただけの水野明日美が、いつの間にか鋭い目つきで悪霊をにらんでいる。
 そしてそっとその手をつかむ唐巣。
 唐巣の手から暖かい何かが流れ込んでくるのがわかった。
『悪霊に集中して、ゆっくりと、恐れずに、相手を見据えるんだ、そう』
力とともに唐巣の声が流れ込んでくる。
『水野君の中には水の精霊たちから受け継いだすばらしい力が眠っているはずだ。私の力はそれを解放するきっかけに過ぎない。いいか、自分の中にある気の流れを感じるんだ。
 すべてを吐き出すつもりで。思いを込めて・・・』
唐巣を見ると、痛みからか気を失っている。唐巣は意識下で必死に水野にテレパスを送っていた。 
 唐巣は知っていた。彼女にあふれんばかりのGSの才能が眠っていることを。
 はじめは人間の体にはなじまないから使えないのかとも考えた。
 しかしそうではない。
 きっかけの問題なのだ。その力を解放するきっかけさえあれば。
 彼女は無意識にその才能を眠らせていたのだ。
 なにも知らぬまま子供の頃霊体験を重ねた結果かもしれない。
 彼女が普通に生きることを強く望んだ結果かもしれない。
 霊能力は力の大小はあれど誰もが持っている。
 ただどこかで戸惑い、恐怖を感じ、無意識のうちに自らその力を心のうちに封印してしまう。強大であればあるほど。
 そしてその戸惑いや恐怖をいかなる形であれ乗り越え、その力を認識した者だけが霊能力を発揮できるのだ。
 唐巣は自分の心のうちを水野に晒した。
 過去のこと、現在のこと。すべてを晒し、今なすべきことを伝えた。
 それはコンマ何秒にも満たない時間。それでも明日美はすべてを知った。
  
 水野明日美の中で何かがはじけた。

「やめてェ!!!!!!!!!」
耳を劈くような甲高い叫びとともに明日美の手から破魔札が放たれる。
 しかしその瞬間破魔札が燃え尽き爆風だけが悪霊を包み込み、吹き飛ばす。
「え???」
きょとんとした顔で大きくえぐられた地面と吹き飛ばされた悪霊を見ている明日美。
「水野君の霊力に破魔札が耐え切らなかったんだ。それで放たれた瞬間に暴発してしまったようだね・・・っつぅ、おキヌ君、ヒーリングを頼むよ、あばらが折れたみたいなんだ」
唐巣はGSの本能的な部分で目を覚まし、咄嗟に結界を張って爆風から二人を守っていた。
 脂汗をたらしながらもわずかに笑みをこぼす。
「わ、私一体なにを・・・・」
「今のが君が内に秘めた力なんだ・・・しかし思ったよりすばらしい力だね」
おキヌちゃんのヒーリング能力もかなりパワーアップしているらしく、あっという間に唐巣は起き上がれるほどに回復した。
「あ、横島さんは?」
「生きてると思うよ。ほらあそこにいる」
唐巣が示した暗闇の中に横島の姿が浮かぶ。服がぼろぼろになっている意外目立った外傷は無い。
「しかしやっと片がついたかな・・・・・ん?」
「ぼさっとするな!!!次が来る!!!」
唐巣がふう、とため息をつくと、横島から鋭い叫びが飛んでくる。まさか、と唐巣は悪霊が吹き飛ばされたほうを見る。その瞬間一度は爆風とともに消し飛んだ強烈なプレッシャーが全身に突き刺さる。
『今のはちとあせったが、まだまだ惰弱也!惰弱也!』
「効いちゃいないみたいね・・・」
横島がいささか気落ちした顔をする。

ばらばらばらばら・・・・

そのとき頭上からヘリコプターの音が聞こえた。

続く

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