ザ・グレート・展開予測ショー

ミットナイト・ダンディ(その十二)


投稿者名:ツナさん
投稿日時:(01/ 4/28)

 結界の中、唐巣たちは作戦を練った。
 悪霊は今のところ横島にねらいを絞ってくると踏んだ唐巣は横島をおとりにして前線でふんばってもらい、唐巣とおキヌちゃんでサポートしようと言うことになった。
 当然横島は自分が的にされるなんて真っ平だと言い放ったが、そこはおキヌちゃんにうまく丸め込まれて、気合十分に戦闘準備に取り掛かる。
 まず破魔札は予算度外視で高額な物を数十枚用意した。
 さらに神通棍を数本、聖霊石を4つをだす。
 と言うよりこれしか美神さんにもたしてもらっていない、とは横島の談。
 美神が仕事に出るときはこの数十倍は持ち歩くのに。
 唐巣は聖水と言われる特殊な製法で清められた液体の瓶を数本用意した。
 この液体を振りまけば多少はダメージを期待できるらしい。
 おキヌちゃんは相変わらずネクロマンサーの笛を吹いていなければならない。
 あまりに地味なのであまり役に立っていないように思えるが彼女が笛を吹くことによって悪霊の能力のひとつ、催眠念波を押さえ込むことができる。
 文珠が尽きたので多少隙ができる可能性もあるがそれは仕方ないことだ。
 さらに彼女には一応切り札がある。
 横島と解決したるマンションでの事件以来、おキヌちゃんのペット、もとい式神と化しているバロム13だ。
(注:忘れられてると思うが魔界出身の魔犬です。おキヌちゃんに惚れてなついてしまった。最近は変身能力を発掘し、超小型犬としておキヌちゃんの部屋で生活中。しかし小型化は出来ても巨大化は出来ないらしい。またいかつい顔も変身能力でかわいらしい柴犬に。13匹います)
 魔界の生物だけにかなり強力である。優しいおキヌちゃんはあまり使いたがらないが、そうも言ってられないだろう。今は式神の札の中に入っている。 
 水野は相変わらずおキヌちゃんの影に隠れているだけ。河童の血を引いているらしくとも所詮は素人である。一応念のため100万円の破魔札を持たせてはあるが、せいぜい一瞬気をそらすのが精一杯で、何か有ってもその隙に頑張って逃げてもらうしかない。
「さて、せいぜいふんばるっきゃねぇな。あと10分もすればピートが応援をつれてくる」
「応援って誰ですか?」
「美神さんか西条のどっちかだ。美神さんなら戦力になるし西条なら物資補給ができるうえいざって時は壁になる、と言うよりぜひ壁になって死んでもらいたい」
「壁ですか・・・」
横島がギっと拳を握り締めやばいことをあまりに熱く語るので、水野は苦笑いするしかなかった。
「西条君だって立派に戦力になるだろう、そんなに悪く言うもんじゃないよ横島君」
「おねーちゃんにもてまくったりおねーちゃんに優しく介抱されている奴はみんな的じゃ!!!」
拳を突き上げ目を血走らせて断言する横島。
「自分がもてないからって・・・悲しい人ですね」
「気にするな明日美君。彼はこういう男だけど煩悩、もとい実力だけはあるんだから」
唐巣に言われてもいまいち納得の出来ない、横島を信頼できない水野であった。
 などと話しているうちに文珠の結界が効力を失い消え去った。
『おまえなかなか見所があるぞ。その魂の叫びがほしい・・・』
「野郎のラブコールは反吐がでる!!!」 
横島はとことん変わり者に気に入られるたちなのか。
 とにかく悪霊が唐巣一行に再び迫り来た。
 十数メートルほどはなれているか、それでも悪霊がふた回りほど大きくなっているのが分かる。水野とはじめてあった時に感じた強烈な霊威を感じる。よく感じ取れば回りに雑霊が集まっていた。おそらく今感じる圧力が、催眠念波の類なのだろう。直接的なものよりははるかに弱いが、プレッシャーは強い。身が竦(すく)む。
 すかさずおキヌちゃんが笛を吹き、唐巣が聖水を振りまく。するとすぐに霊威は消えたが、今度は悪霊そのものが迫ってくる。すべての力を攻撃にまわしたのか、念波を使ってくる様子はない。
「後ろ頼む!」
横島はそう唐巣に叫び掛けると、再び霊波刀を発動させる。
『そんな鈍らで我を切れるか!』
「やかましい!!」
横島は霊波刀を最上段に構え、腰を低くして突進する。
悪霊は右腕を振り上げるとそのまま鞭のように振り下ろす。
 もともと骨格もくそも無い霊体である。
 右腕は大きく伸びて横島の足を襲うが横島はそれを読んでいたかのように飛び跳ねて避ける。
 そのタイミングに併せて左からも鞭のような一閃が襲ってくる。
「ぐお!」
横島はそれを見て一瞬ギョッとした顔をしたが、慌てず霊波刀でその腕を切り落とし、そのままの勢いで懐に飛び込むと袈裟斬りに切り下ろし、さらに返し刃で胴を薙ぎ切る。
「少しはきいたろ・・・・ってぇぇぇ!!!」
『無駄成り!魂となりて我となれ!!!』
確かに傷を負わせたがまったくダメージになっていない。いきなり腹のあたりから錐ような突起が飛び出して横島を襲う。横島はそれにすばやく反応して後ろに飛びながらその突起を斬り飛ばす。
「うっひゃぁ」
そこで一瞬気がそれた。その瞬間を狙って背後から両腕が襲ってくる。
「危ない横島君、天と地と聖霊よ、勇者を襲う魔の手を打ち払いたまえ!」
そこに間髪いれず唐巣の一撃、顔面に霊波弾を食らった悪霊が手を緩めた。横島はその隙をねって後退しつつ破魔札を数枚たたきつける。
 
どぱん、ぱんぱん!!

破魔札がはじけ、悪霊の周りに煙が舞う。
「効いたかな?」
横島は構えなおしながら悪霊の出方をまつ。
「気を抜くな横島君、・・・あまたの聖霊よ、聖者らの示しし道を汚せし邪たる魂を払う力を貸し与えたまえ」
唐巣は再び力を集め始める。多少疲れは見えるがまだまだ踏ん張らなくてははいけない。
『ぐぉぉぉぉぉ!!!』
「効いてないっすね・・・」
悪霊が雄叫びを上げながら煙の中から再び全身をあらわにする。
「汝荒らしたる道は聖者の道、何人たりとも荒らすことは許されぬ、その道より退け!」唐巣が再び攻撃を仕掛ける。
「だぁぁぁぁ!!!!」
その合間を縫って横島が霊波刀をめちゃくちゃ振り回して攻撃する。
しかしえぐられた部分はすぐさま再生し、再び攻撃を仕掛けてくる。しかし少しずつではあるが再生スピードが鈍っている。
「効いてはいる!!もっとやったる!!!!さっさっと昇天しちまえ!!!!」
『ぐぅぅ・・・この笛の音を放つのはだれだ』
悪霊は笛の音の発信源を探った。笛の音のせいで吸収した魂たちがざわめき始めたのである。それを押さえ込むのに手間取って回復がおぼつかなくなっている。
 このまま連続て攻撃を食らい続けたら核たる「自分」を晒すことになりかねない。
『・・・そこか、笛の音は!!』
悪霊はおキヌの位置を確認するとダメージ覚悟で渾身の力を込め横島に体当たりを敢行する。先におキヌをしとめておかないと厄介なことになる。
「っちぃ!!!」
横島はその体当たりを止めることが出来ず、なんとかダメージを抑えようと瞬時に巨大サイキックソーサーを出した。しかしそのまま吹き飛ばされ、悪霊はその瞬間を狙っておキヌに右手を伸ばす!!!
「きゃぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
右手は確実におキヌの右手を捕らえ、ネクロマンサーの笛を叩き落し、さらに左手が水野に振り下ろされた。
「きゃぁぁぁ!!!!」
水野が頭を抱え叫ぶ!
 が!
「させるか!!!」
そこに唐巣が飛び込んで来た。二人をかばうように立ちはだかり肩口からわき腹にかけててしたたかに打ち据えられる。しかも咄嗟のことで防御がなってない。
 まともにダメージを受けてしまった。
 おキヌと水野の耳に、唐巣の鎖骨から胸骨にかけてが軋みひび割れる音が飛び込んでくる。
「きゃぁぁぁぁぁぁ!!!」
「しっかりしてください!!!!」
倒れる唐巣を二人がかりで受け止める。
「ぐはぁ」
肺にダメージがきたのか血を吐く唐巣。そしてそこに当然のごとく追撃が迫る。
 体制を立て直したものの横島はその一撃に追いつけない。
おキヌちゃんは無意識のうちに二人をかばおうと盾になるように立ちはだかる。
もし悪霊に顔があったならここでにたりと笑ったに違いない。
「おきぬちゃぁぁぁぁん」
 絶体絶命、横島の叫びがあたりを木霊する。
 悪霊の一撃がおキヌの眼前まで迫っていた・・・!

続く






 

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