ザ・グレート・展開予測ショー

黒い呪いと天使の笛の音(19)


投稿者名:AS
投稿日時:(01/ 4/28)

 そびえたつ黒い光の柱ー・・・私は『ソレ』を呆然と見つめていた。
 いまその柱はこの瞬間の私にとって、もっとも受け入れ難い姿で『ソコニアル』
 ギ・・・リィ・・・ッ
 決してまぶしくは映らない、その光をただ見つめる私の耳に何か・・・妙な音が聞こえた。 そう思った次の瞬間、唇に痛みが走る。 
「みっ、美神さん・・・!?」
 右横から何か、震え混じりの丁稚の声が届く。
 ツ・・・
(・・・?)
 唇に妙な感覚を覚え、指で触れてみる。 見るとひとさし指の先に、赤い色が見えた。
「美神さん、これ・・・」
「・・・・・・」
 口元をぬぐうと、後ろから手渡された純白のハンカチに、ポツリと赤い斑点が浮かぶ。
 ほんの少し前までは純白だったハンカチを返した時、友達の姿の・・・おキヌちゃんの姿の、ただの柱が動きだした。
「ぅ・・・」
「おキヌちゃん!」
『ゥ・・・ゥ・・・』
 その苦しそうな声までそっくり真似て・・・そいつはゆっくりと、こちらに近づいて来た。



ー黒い呪いと天使の笛の音(19)ー



「おたくら! ぼーっとしてんじゃ無いワケッ!!」
 ドガアアァッッ!!!
『・・・!』
 威勢のいい声で、乱入して来た商売仇が破魔札で『光』を吹き飛ばした。
 それと同時に・・・
(・・・ぅ・・・はぁ・・・)
「おキヌ殿!?」
 彼女の顔色が、ほんの少しだが良くなる。
「やっぱね・・・令子!」
それを見て何かを確信したのか・・・商売仇、小笠原エミがこちらにやってくる。
「いい!? これは中世での強力な呪殺・・・」
 彼女・・・エミはそこまで言って、口をつぐんた。
「どうやら・・・今は何も聞こえないようね・・・」
 黙っているこちらに勝手な解釈をしたのか・・・エミは隣の丁稚に向き直った。
「横島! おたく今文珠いくつあるワケ!?」
 真剣なエミの問いに、丁稚・・・横島もさすがにおちゃらけずに答える。
「四つ!」
「よし! おたくとそこのー・・・何だっけ?」
「犬塚シロでござる!」
「タマモ・・・」
エミは性格の表れる答え方をした二人を無視し、再び横島の方を向いた。
「うー・・・」
「・・・・・・」
 何やら不機嫌そうな目が注がれているが、エミは平然な顔をして横島と話しをしている。
 向こうでは彼女と同級の二人が、呪いの光に必死で攻撃を仕掛けているのが見えた。
「追跡でござるか!? 任せるでござる!」
「おキヌちゃんの為だし・・・つき合うわ」
 別の方からは、そんな声も聞こえる。
「・・・・・・」
 私は何故か動けずに、苦しそうな彼女に目を向けた。
 その時。

「その前にだ・・・シロ、あの笛に匂いとか残ってるか?」
「クンクン・・・あれ?」
「どうした?」
「この匂い確か・・・先生に呪いをかけた奴の・・・」
「!?」

 私はー・・・

「と、言う事は、負けた逆恨み・・・?」

 その会話をそこまで聞きとって・・・頭が真っ白になった。



 それからしばらくして・・・彼らは走り続けていた。
「急ぐぞ二人とも!」
「自転車泥棒」
「せんせぇ・・・」
 前から返って来たのはそんな言葉だった。
「やかましい! おキヌちゃんのため! 非常時における適切な処置だっ!」
『・・・・・・』
 かなり身勝手な彼の言葉に対し、反論は出なかったが、ため息が二つ洩れた。
「それに・・・何よりも・・・」
 そこまで言って何かを思い出したのか・・・彼は身震いした。
 『自転車で走る』彼の先を行く二人も、青ざめた顔になる。

「ああいうのを大爆発というんでござろうなー・・・」
「やけに大人しいからおかしいとは思ってたけどねー」

 会場を出る直前に聞こえた『声』・・・鼓膜を突き破るどころか、例えどんなに気丈な人だろうとおかまいなしに心臓を停めかねない声を思い返し、彼らは先を急いだー・・・

 なお・・・この少し前に観客を脅えさせ、パニック状態にしたのは『呪い』よりも、むしろその『声』だったというのは・・・

「やばい! あの女きっと魔族か何かだ!」
「そ、そうね! あるいは前世が妖怪か何かとか・・・」
「とにかく逃げよう!」

 余談である。

そして・・・遠く離れた地で、ほくそ笑む『モノ』がいた。

『さあ・・・どんな芽が出るのかなぁ・・・くくく・・・』


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