黒い呪いと天使の笛の音(18)
投稿者名:AS
投稿日時:(01/ 4/26)
走る。
「先生っ! こっちの方でござるっ!」
「あの笛にこびりついてた匂いよ! 早くっ!」
前を行く二人に急かされながら、走る。
「こらー! そこの自転車! 止まりなさーい!」
何やら警棒みたいのを振り回しながら、こっを追っかけてくるのが居るがー、気にせず走る。
「・・・にしてもせんせー・・・」
「あん?」
更に早く、ペダルを回転させ始めた少年に、狼少女が声をかけて来た。 隣の狐の『少女?』も耳を傾ける。
「こうしてると・・・あの時を思い出すでござるなぁ・・・」
目を閉じ、しみじみと『何か』を思い浮かべる狼少女の声に、
少年は何故か、自転車のサドルから腰を浮かす。
「シロ・・・・・・余計な事言った罰として、お前今日散歩お預けな」
「せ、せっしょーでござるー! 悪気は無かったでござるー」
「・・・?」
何故か急に機嫌を悪くした少年に、隣を走る『犬少女』が平謝りする様を、狐の娘は不思議そうに見つめる。
『!』
そんなやりとりの最中。 突然『二人』が足を止めた。
キキィッ!
「どうした! 見つけたのか!?」
『・・・・・・』
少年も自転車を止め、二人に声をかけるがー・・・当の二人は目を閉じ、何事かに集中している。
(クン・・・クン・・・)
(・・・・・・)
二人が匂いを拾うのに集中し始めた事を察し、少年も黙って見守る。
「・・・・・・」
(おキヌちゃん・・・)
少年は、ほんの十分程度前・・・『呪い』が『彼女』を襲った時の事を思い出し始めた。
ー黒い呪いと天使の笛の音(18)ー
「ーーー!!?」
叫び声を上げたのが誰だったのか、そして何と叫んだのかはもう思い出せない。 『ソレ』を正確に焼き付ける前に、体が動いていた。
「おキヌちゃん! おキヌちゃんしっかり!」
突然、笛から溢れ出た『黒い光』・・・その光に跳ね飛ばされた彼女に最初に駆けよったのは、自分。 そしてもう一人は良く見知ったキツい女性。
「お、おキヌちゃんっ!」
彼女の姉もほんの一瞬の放心状態から立ち直ると、すぐに駆けよって来た。
「ぅ・・・美・・・神さん・・・」
「おキヌちゃん! 大丈夫!? 怪我は!?」
彼女の苦しそうな声と、心配と動揺が入り混じり、震える女性の声が重なる。
「待ってろ、今・・・」
彼女を回復させるため、『癒』の文珠を作り出した時。
オオオ・・・ォ・・・
『!?』
一斉に黒い光の方へと振り向く。
「おキヌ殿ーーー!!」
向こうからシロとタマモ。 それに・・・
「おキヌちゃんっ! くそっ! 何なんだこりゃあ!」
「氷室さんっ!」
おキヌちゃんの友達の二人。 その向こうからも見知った顔の連中が駆けつけて来るのが見える。
「ふ、笛がー!?」
「!?」
その声にハッと振り向くと、床にあった筈の笛が黒い光を引っ張るかの様に、宙に舞い上がる。
そして黒い光はその笛に引っ張られる形で、柱の様に変化していった。
いや・・・これは。
「う・・・嘘だべ・・・?」
彼女の姉が震えた声を出す。
「ひ、人の形になってく・・・こ、これって・・・」
柱の様になったと思った次の瞬間・・・光は大きく歪み、そしてゆっくりと人の形を取っていく。
笛はその口もとの部分で静止した。 身体の部分は神道系の装束を模したかの様になる。そして顔に当たる部分も、ゆっくりと変化を始めた。
「お・・・キヌちゃん・・・?」
ご丁寧な事に背丈まで同じ位の高さに変化した、黒い光の顔はまるで・・・能面の様に見えるが、さっきまで笑顔でいた、少女と同じ顔だった・・・
AS「続きです・・・細かく書かなければ意味が通じなくなるけど・・・こういう描写は・・・暗い話が嫌いな方で無ければ、出来れば読んで欲しいです」
今までの
コメント:
- 続きどうなるのでしょうか (もず)
- 毎回いろんな構成の仕方を、話が破綻しないように試しているけど・・・前回と今回みたく、悪意のこもった暴力的な描写はいろんな意味で難しいです。 それはさておき・・・『こっ』を追っかけてくる・・・また失敗・・・謝罪のしようが・・・すみません・・・ (AS)
- もずさん、感想有難うございます。 (AS)
- 暗いお話は大好きです(悪趣味)。
あと、誤字については余りお気になさらないように。特に「文珠」の事を「文殊」と間違えている方も多い昨今、「謝罪」の必要は一切有りません。
タマモも「少女」でいいんじゃないでしょうか。いや、何なら「コギャル」とか……いや、今時は「ギャル(尻上り)」ですか?
さて、今回は直接前回の続きとせず、回想として処理しているのは面白いですね。不可変の過去として描かれるこの騒動が、どう重大な事態に及んだのか、興味をそそますね。 (Iholi)
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