ザ・グレート・展開予測ショー

ミットナイト・ダンディ(その十一)


投稿者名:ツナさん
投稿日時:(01/ 4/24)

 連絡係を買って出たピートはすぐさま美神の事務所にとんだ。
 横島からもらった文珠のおかげで高速飛行してきたため、思ったより早く着いた。
 そこで早速入り口のドアをたたく。
『おや、ピート様、いらっしゃいませ』
人工幽霊一号がありきたりな挨拶をする。
「美神さんは?」
『いらっしゃいますが?」
「すぐに奥多摩へ飛んでもらいたいと伝えてください。かなり厄介な状況なんです」
矢継ぎ早にまくし立てていると美神が玄関先まで出てきた。
「どうしたのよ?」
「じつはですね・・・」
めんどくさいなぁ、という感じの美神に事の成り行きを説明する。
「というわけなんです」
「結構厄介な相手みたいね。神父がやられたとなると・・・ピート、動かないで」
「え?」
仕方ないな、という感じだった美神の顔が一変する。そしていきなりどこから出したか破魔札を出すと、ピートに向かって投げつける。
「うわぁ!!」
ピートはあわてて破魔札をかわした。
「なにするんです!美神さん!!」
当然のごとく抗議するピート。美神は黙って後ろを見るように促す。
「あんた、憑かれてたわよ。気づかなかったの?」
そこには動物霊のような者が破魔札を食らって消えかかっていた。
「そんな・・・全然気が付かなかった・・・」
「人工幽霊一号だけが気づいたみたいね。正直私も気づかなかったわ・・・」
『かなり弱い霊でしたので、雑霊の霊気と混ざってしまっって気づかれなかったんでしょう』
「でしょうね。・・・西条さんのところへ行きましょう、先生が調べたデータを詳しく解析してもらってあるはずだから」
「それで横島さんは西条さんか美神さんどちらかといったわけですね」
「Gメンならヘリコプターぐらい用意してくれるはずよ。先生とおキヌちゃんが心配だわ」
「横島さんは良いんですか?」
「横島君は2、3回殺しても死なないわよ」
ピートの突っ込みを美神はさも当然とあしらう。
「・・・冗談には思えませんね」
思わず苦笑するピートだった。

 一方唐巣たちはどうしたかというと。
 悪霊に吹き飛ばされた横島を回収した一行は、河童に連れられ200mほど下流まで逃げていた。
 今は横島がどうにかひねり出した文珠で目くらましをかねた結界を張って身を隠している。
 唐巣もどうにか落ち着きを取り戻し、今は水野に膝枕をしてもらいつつおキヌちゃんにヒーリングをかけてもらっている。やはり悪霊の一撃を受け止めたダメージは大きかったようだ。
 河童たちはというとすでに四方に散って改めて結界を張っているようだ。悪霊の念波は今は途切れているらしく、自由に行動できるようだ。
 リーダー河童の話では、とりあえず遠巻きに悪霊が一帯から出られない程度の弱い結界を張って、悪霊が人里に出るのを防ぐのだそうだ。
 しかし弱いなりにかなり耐久性が低く、本腰を入れて破りにかかられたら数分ももたないだろう、だからできるだけ早く回復して足止めをしてほしい、と言っていた。
「おっさん、これからどうするつもりだよ?」
そんな中横島が膝枕をしてもらいつつヒーリングをしてもらっている唐巣にぶっきらぼうに話し掛ける。
「横島君、口が悪いぞ」
「うるせぇ、女二人に開放されてるおっさんに敬意を表するいわれなんかない」
唐巣がやんわりとたしなめたが、横島は疲れもあいまって少々意固地になっているようだった。ふん、と鼻を鳴らすと結界の外を警戒する。
「向こうに動きは無いみたいだな、しかしまた一回り大きくなってやがる」
「うむ、急激な勢いであたりの雑霊を吸収しているようだ。・・・いやうかつだった。結界が破れてしまうとは。・・・しかしこのままでは奴に取り込まれた霊たちが浮かばれない・・・」
「ですね・・」
真剣な眼差しの横島。唐巣は水野とおキヌちゃんに礼をすると上半身を起こす。
「・・・私の同僚達も、ともえも見んなあの化物に取り込まれてしまったんですか?」
「そういうことだ。しかし核を成す魂を排除すればおそらくは開放されるだろう、これ以上罪も無い魂を苦しませるのは許しては置けない」
水野の質問に唐巣は自らに語りかけるかのように答える。
「皆を救ってください・・・・。誰も人を傷つけることなんて望んじゃいないはずです」
「わかっている・・・。だから涙をお拭きなさい。あなたは優しい人だ。その心がある限りきっと神は皆の魂を見捨てはしない」
「唐巣神父・・・」
二人は見つめあい、ぎゅっと手を握り合っている。
「・・・おっさん、場所わきまえろって・・・」
「横島さん、邪魔しちゃ悪いですよ」
ふと気づけば、水野の目の腫瘍がまた少し、小さくなっていた。

「場所は分かっているな、よし飛んでくれ!」
西条がパイロットに離陸を命じる。
ヘリには西条と美神、ピート、そしてなぜかエミが乗っている。
「エミ、なんであんたがいっしょにいるのよ?」
「ピートが大変なときに私だけ自宅でワインを飲んでるなんて出来ないわけ。ねぇピート」 
「助かります」
甘えてくるエミにピートは真摯な顔で答える。
「ていうよりもなんでいるのよ?」
「いやたまたまこの前の道を通りかかったらピートがいたから。であなたたちがGメンに入るのを見て、人工幽霊一号に事情聞きいて付いて来たのよ。だから話は聞いてるわけ」
「まあいいわ。で、西条さん、詳しい話を聞かせてくれる?」
「ああ、唐巣神父のメールを下に再調査したところ、いま神父たちが相手をしている奴は
約三百年ほど前からかの地に封印されている悪霊らしい。その悪霊は催眠念波を操り、また他の霊を吸収したり操ったりできるようだ」
「まあ、ありきたりね」
「しかも操った霊を介して催眠念波を使ったり、霊を取り付かせて人間自体を操ることもできるようだ。まあそれに関しては普通の人間が関の山のようだけどね」
「それでもかなり危ないじゃない。もしそいつの操ってる霊が街に大量に発生したら私たちだけじゃ手におえなくなるわよ?」
「そのとおりだ。今はそれほど多くの霊を操ることは出来ないようだけど、これ以上力をつけさせては厄介なことになる。結界が破られたんだ、さらに力をつけている可能性もある・・・。とにかく急ごう」
「あーあ、またただ働きか・・・」
美神が西条の話を聞きながらため息混じりに言う。
「いや、報奨金を出すよう上に請求しておいたから、幾ばくかはでるはずだよ。道具は全部Gメンもちなんだからいいじゃないか」
「強欲なわけ」
「あんたはピート目当てでしょ?」
エミのつぶやきを、美神がじと目でにらんで返す。
「あーんピートぉ、令子が怖い顔でにらむ〜」
「ほんといいたまだわ、あんた」
「ははは・・・」
なにげな明るさをよそに、一行の目は真剣そのものだった。

続く。

今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa