ザ・グレート・展開予測ショー

黒い呪いと天使の笛の音(16)


投稿者名:AS
投稿日時:(01/ 4/24)

「あ・・・! 美神さん!」
その姿を認め、少女は顔を綻ばせた。
「美神さん、私ー・・・」
ガバアッ!
最後まで言わせず、美神は思いっきり、少女を抱きしめた。
「ーーー良くやったわ! おキヌちゃんっ! さすがはこの美神令子の一番弟子! うんうん!」
抱きしめていた両手で、バンバンとおキヌの背中を叩く。
「ちょっ・・・美神さん、苦しい・・・」
途切れ途切れの声に、美神は手を放す。
「あ、ごめんね、おキヌちゃん。」
「いえ・・・」
しばらくして、おキヌが息を整えたのを見て、美神は手を差し出した。
「ごほん! ・・・じゃ改めて・・・」
咳払いして、切り出す。
「おキヌちゃん、合格おめでとう!」
「・・・は、はいっ!」
その言葉に実感が湧いたのか、おキヌの表情が輝く。
(やった・・・! 私、合格したんだ・・・!)

その時。おキヌの嬉しさいっぱいの笑顔を、陰気な顔で見る者が二人・・・物陰にたたずんでいた。

(そうしてられるのも・・・今のうちだよ・・・)

一方の、その呟きと共に・・・『禍禍しい企み』が動き出した。



ー黒い呪いと天使の笛の音(16)後編ー



「・・・・・・」
幸せいっぱいの、二人の女性に、陰気な顔の『少年』が近づいていく。
それには気づかず、二人の女性は談笑し続けていた。
「あ、そういえば、美神さん・・・」
「何?」
「えっと・・・さっき私の事、一番弟子・・・って・・・」
キョトンとする美神。
「? うん、そう言ったけど?」
「一番弟子・・・は、横島さんじゃあ・・・?」
真面目な顔の、おキヌの言葉に美神は・・・
「ぷ、あははははは!」
爆笑した。
「やーねー! おキヌちゃんたらー!」
「み、美神さん?」
「横島君は、それなりに、まあまあ頼りになるけどー・・・」
ゴクッ・・・
二人の背後にいる『少年』は、固唾をのんで、美神の次の言葉を待った。
そして、続く言葉は・・・

『ただの丁稚だもの』

ズシャアアッ!
悲しいくらい、予想通りの言葉に『少年』は『こけた』。
「あら? あんた何やってんの?」
「横島さん?」
二人の声に、横島はガバッと身を起こした。
「あ、あ、あんたなぁぁぁっっ!!!」
そのまま、その勢いで美神に向かい、詰めよる。
そんな横島に、美神は一言。

『なあに? 丁稚君。(ニッコリ)』

丁稚君・・・もとい、横島は撃沈した。

「よ、横島さんっ! しっかり!」
「当然でしょ? 実力は別にしたとして・・・あんたが一番弟子だったら品性疑われるもの。」
ユサユサとおキヌに揺さぶられる沈没船に、追撃が加えられる。
「横島さん・・・」
(・・・こ、こんな事しに来たんじゃ無かった・・・)
心配そうなおキヌの声に、横島は目的を思い出した。
ゆっくりと身を起こす。
「おキヌちゃん!」
同じく、身を起こしたおキヌは突然声をかけられ、動揺する。
「は、はい?」
「え、えーと・・・合格おめでと!」
普段、言い慣れない言葉の為、少しどもっていたが、その言葉におキヌは嬉しそうに目を輝かせた。
「横島さん・・・」
「おキヌちゃん・・・」
良い雰囲気の二人。 美神は・・・
「・・・・・・」
不機嫌そうだが止めようとはしない。
そして、両方同時に飛びつこうとした、その時。

『おキヌちゃーーー!!!』

ドガシャ!
『少年』は弾き飛ばされた。
「おキヌちゃん! すごいっ! すごいだっ! もうわたすー、鼻高々だ!」
「さ、早苗お姉ちゃん・・・」
「お・・・」
更にお祝いの言葉をまくしたてようとする早苗。 しかし・・・
ドンッ!
「きゃっ!」
突然おキヌにぶつかって来た『少年』に、早苗の台詞は中断を余儀なくされた。
「おキヌちゃん!」
よろめくおキヌを美神が支える。
「あ、美神さん・・・」
「大丈夫!? まったくどこのどいつ・・・」
「! あ、あれっ!?」
美神が言い切る前に、おキヌが驚きの声を上げる。
「ど、どうしただ!?」
「ふ、笛が無いの・・・」
『え!?』
驚いて、全員、ぶつかった相手が駆け去った方を見やる。
そこには『笛』がー・・・
「あ、良かった・・・」
『笛』に駆け寄るおキヌ。 その時美神と横島は言いしれぬ悪寒を感じた。
『ま、待って! おキヌちゃ・・・』
「え?」
その時、おキヌの指先が『笛』に触れ・・・

バシイィィッ!

『笛』が放った黒い光に、おキヌは跳ね飛ばされた。

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