ザ・グレート・展開予測ショー

黒い呪いと天使の笛の音(16)


投稿者名:AS
投稿日時:(01/ 4/24)

ピュリリリッ! 
「そもそもあの笛は心で吹く笛・・・幽体でも物を触る事ができ、一般の人にさえ、その姿をハッキリと認識させる事すら可能だったおキヌちゃんなら・・・」
美神の皆(とくに早苗)への説明が進む中・・・試合場では、既に審判が動く素振りを見せている。
「・・・例え幽体離脱していても笛は吹ける。 しかも息継ぎという制限も無くなる。」
その場にいる応援団の面々は、ただ黙って美神の説明に聞きいっていた。
「・・・・・・」
「何しろ笛は、『ずらした幽体の口もと』にあるんだから。 
実際の口はちゃんと酸素を吸い込めるわけだし。」
そこで美神は、一旦話を区切って試合場へと視線を戻した。
ピュリリリッ・・・!
もはやそこには、霊力が尽きたのか、自身に敗北を促す笛の音に
矢神が抵抗する事も出来ずに倒れ伏している姿があった。
すでに触手は三本とも、消え去っている。
ピュリリリリ・・・!
絶え間無く続く笛の音。
「・・・・・・」
その笛の音の流れる中、遂に矢神は『決断』した。
「く・・・ギブ・・・アッ・・・プ・・・!」
「!」
苦しさからか、それとも悔しさからなのか・・・途切れ途切れの『その声』を拾った審判は試合場を覆っている結界を解き、仕事を遂行する為に、中へ入った。
そのままおキヌの手を取り、高らかに『宣言』する。

『勝者! 氷室キヌ!」

その瞬間、美神令子除霊事務所に、新たなGSが誕生した。



ー黒い呪いと天使の笛の音(16)前編ー



「ぅぅう・・・!」
高らかに響く審判の声に早苗は顔を伏せ、両拳を握りしめた。
そのまま更に頭の位置を下げ、肩を震わせる。
「・・・ぃ」
そして、爆発した。
「ぃぃいやっっただーーーーーーーーー!!!!!」

その場で喜びを爆発させ、飛び跳ねる早苗をよそに、少年・・・
横島は駆け出していた。
(やった! やったな! おキヌちゃん!)
いつもの様な煩悩は一切持たず、おキヌのもとへ急いだ。

「・・・・・・」
「ちょっと・・・」
「・・・・・・」
「一文字さん!?」
少し怒り気味の声に、彼女は振り返った。
「あ、ああ・・・何だよ弓?」
「何だじゃ・・・あら?」
怒り顔の弓は、自分の方に振り向いた一文字に、何故か違和感を感じた。
(・・・・・・?)
「な、何だよ・・・」
まじまじと自分の顔をのぞき込む弓に、一文字は居心地悪そうにした。
そしてしばらくして、弓が一言。
「あなたひょっとしてー・・・泣いてるの?」
その一言は、一文字から平静さを奪い去った。
「な・・・!」
「意外・・・結構涙もろいのね・・・」
「な、なな! 関係ねーだろ!?」
「何よ、その言い方!」
照れ隠しなのか、動揺している所為か・・・口調が乱暴になった一文字に、弓も即座に言い返す。
そして、始まる口喧嘩をよそに、色黒の女性は大男を連れて、場を後にする。
(・・・・・・)
女性は最後にちらりと、黒髪の少女を見、誰にも聞こえぬ様に・・・祝福の言葉を送った。
「さ、行くわよタイガー!」
「はいっ!」

その少し前、団長から姉へと戻った少女が我に返っていた。
「? あれ? 美神さんとあん男は?」
「二人ともおキヌ殿のとこに向かったでござるよ。」
その返事に、早苗は目をむいた。
「な、し、しまった・・・出遅れただ!」
言うなり駆け出す早苗を見て・・・
((ハァー・・・))
ため息が二つ、洩れた。

「・・・ふう。」
(まだ信じられない・・・)
一つ、大きな山を越えた少女は、放心したかの様に、たたずんでいた。
(・・・・・・)
その時、少女の耳に聞き慣れた声が飛び込んで来た。
「おキヌちゃん!」
「あ・・・! 美神さん!」

そして、その頃。
「な、何でやねん・・・」
何故か後ろから、『邪魔よっ!』の声と共に蹴り飛ばされた少年が互いに駆け寄る『二人』をただ見ていた。
「・・・・・・」






AS「初めての書き方ですけど・・・楽しんでもらえたら嬉しいです。」

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