ザ・グレート・展開予測ショー

森に向かえ!!(1)


投稿者名:トンプソン
投稿日時:(01/ 4/24)

『親父』と言うのは自分の父親や親しい目上の上司を指すが、言葉の前に漢字2文字を加えるとさる有名な固有名刺と化す。
そやつが来たのを最初に発見したのは獣達である。春眠なんとやらと、東京でも素晴らしい季節であった。
「ふわー、この時期は流石の拙者もベットが恋しいで御座る」
「・・ふにゃ、シロ・・うるさい・・私朝食パス」
何時ものことで御座ろうと苦笑を漏らす、と其処へ屋根裏の窓から定期的な打撃音が聞こえる。
「アリ?何で御座るか?」
目を覚まして着替えをするシロに対してタマモはゴソゴソと布団を頭から被るが、
-トントントントン-
「あー!うるさい!」
布団を跳ね除け、タマモが窓辺に視線を移すと其処には大カラスがいるではないか。
「なんだよ!人の睡眠邪魔をしてぇ」
彼女等が人かどうかは置いといて、腹立ち紛れに枕を投げ様とするタマモに、
「待つで御座る、何か訴えているようで御座るよ」
「カラスが、ってまー、このサイズなら物の怪の域でしょうけどね」
しぶしぶ窓を開けると大カラス礼儀良く、静かに屋根裏にほおってあった帽子架けに停まる。
「妖怪カラスがなんか、用かい?」
「ぷっ!下らない洒落で御座る!」
笑うシロを無視してカラスに話しかける。このカラス人語は喋れないようだ。
「何々?僕じゃないって?背中にいる御仁が?」
それはとても小さな妖怪である。口が見当たらないが喋る事は出来るようだ。現に、
『美神殿はおられるかな?、御二方』
「親父殿!」
素っ頓狂な声をあげるシロだ。
「はて?ワシを知っておるようじゃが、うーん、確かに知った顔のようじゃが」
「久しゅう御座います。犬塚が一子、シロに御座います」
「なんと!あの娘狼が!いや大きくなったもんじゃな」
この妖怪、シロとは面識があるらしい。
「下にいるで御座る。御案内するで御座る。タマモ美神殿を」
「嫌だよ、美神って寝起きが悪いんだもん」
「・・じゃんけんでござる」
「望むところ!」
今回はシロに軍配があがったようだ。
とても小さな妖怪、まるで目玉に手足が生えたかのようなそやつを丁重に手にする。
もうお気づきだろう。妖怪連中の頭脳、『目玉の親父』である。
「美神!あんた親父さんと知り合いなのか?」
「へ?」
低血圧を自称する美神の寝床で大声を出せば痛い目に合うが質問の意味が理解の範疇を越えている。
「親父?って誰よ」
「目玉の親父って妖怪よ」
その固有名刺が脳に達するや、
「親父さんが来てるの!どうして早く私を起こさないのよ!」
「起こさないのよって、来たばっかりよ」
「すぐに今へ向かうわ。あと親父さんに茶碗を。うちで一番良い奴だからね!!」
普段大名商売の美神を目の当たりにしているタマモには驚きを隠せない。
「あ、あぁ、解った」
タマモが部屋を出始めた頃、乱れた髪を梳いていたようだ。今に向かう前に茶碗と御湯を用意する。
「お、どうだったで御座るか?美神殿は」
「すぐに来るって、あと茶碗風呂を用意して置けって、どうぞ」
「こりゃすまんな。正直長旅で苦労してのぉ」
少し御湯を覚ましてから茶碗にはいる。
「ふぃ、人心地ついたわい。それにしてもキツネのお嬢ちゃんは??どっかで?」
「うー、殺生石のキツネらしいんだけど、前の記憶はないんだ」
「ほぉ!そうであったか。今は人間の世界に」
「あぁ、勉強のためにね」
3人が無駄話に花を咲かせ始めた頃に、
「すいません、送れましたわ、久方ぶりですね。親父様」
『様!』
人を人と思わない部分も併せ持つ美神が丁寧語で相対するなんぞ、珍しい場面だ。
「おお、久しいな。美神の、実は助けて欲しいのじゃよ」
普段助けて、と言われるとへそを曲げる美神が真摯にどうなさったのですか?と来たから、獣娘二人の驚きは倍増である。
「うむ、実は『ゲゲゲの森』に異変が起きたのじゃ」
その割りにはゆっくりしているな、と言うのがタマモの感想である。

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