ザ・グレート・展開予測ショー

黒い呪いと天使の笛の音(14)


投稿者名:AS
投稿日時:(01/ 4/22)

「霊体の・・・触手・・・!」
息をのむ黒髪の・・・どこか、場を和ませる雰囲気の少女に相対する者の頭部から、まさに触手としか形容出来ない『モノ』が現れていた。
「このダメージじゃもう体術は無理だしね・・・それに・・・」
そう言った、彼女ー・・・『矢神桔梗』は頭部の『二本』の触手を標的に向けて、解き放つ。
彼女の意志と共に、解き放たれた『触手』は、まっすぐ、最短の距離を突き進む。 そして、その先にはー・・・
「! きゃあっ!」
触手は定めた標的、つまり、矢神と向き合う様な形で、同じ場所・・・結界の中にいる対戦者を捕らえようと、次々襲いかかる。
「わっ、わわ・・・!」
触手から必死に逃れようとする、黒髪の少女ー・・・
「頑張れーーーーー!!! おキヌちゃあーーーーー!!!!」
「ねばれ! おキヌちゃんっ!」
その少女の背後、次いで、右横から少女ー・・・おキヌへの応援の声が飛ぶ。
その声に力を与えられたのか、意を決した顔で、おキヌは足元よりも、少し前の場所に何かを投げつけた。
「お願い! 精霊石!」
「!」
カッ!
精霊石から放たれた、一瞬の閃光が、おキヌの姿を包みこむ。
対戦相手から、こちらが見えなくなるー・・・その一瞬に彼女は触手から離れた場所へと移動する。
(よし! これでー・・・)
片手に握った笛を、口元へ寄せる。
その時。
(笛を捨てなさい!)
おキヌの『心』に、『声』が響いた。



ー黒い呪いと天使の笛の音(14)ー



(!?)
突然、頭に響いた声に、おキヌは狼狽する。
(まさかこれってー・・・何で!? だって触手はー!)
(よくご覧なさい)
おキヌの疑問への、矢神の言葉が終わるや否や、二人の間に何かが・・・
(ーーー!?!)
(ふふ・・・新しい三本目の、『視えない』触手よ・・・)
おキヌの脳裏に、余裕を持った声が響く。
バシュ、バシュ!
その声に、おキヌが気を取られた隙を突き、相手の目に映るー、残り二本の触手が獲物を捕らえる。
その触手を介して伝わる、強制力を秘めた声は、更にこう告げた。
(勝負あったわ・・・観念なさい!)
その声が終わらぬ内に、強くなる強制力に・・・
(く・・・!)
おキヌは膝をついた。

「こ、これは!? あの触手の様な何かがつながれた途端、氷室選手の動きが・・・まるで操られているように・・・?」
「多分ー・・・その通りです。」
実況を担当する男は、隣の解説席に座る二人(後ろにアンドロイドもいる)の内、金髪の『若い少年』に目を向けた。
解説を期待して、話をふる。
「と、言いますと?」
「ふがー・・・ふががー・・・!」
『少年』の隣の老人が抗議の声を上げる。
何故か口にさるぐつわが・・・
「ふがー!」
ドガ!
「さ、どうぞ。」
「・・・・・・ええ・・・おそらくあれはー・・・」
しかし解説はー、とある熱くなりすぎた応援に、掻き消された。

『お、おおおキヌちゃあああーーーーーーー!!!!!』

「ち、ちち! ちょっと! 早苗さんっ! 暴れないで!」
「み、美神殿! 手伝ってくれでござるーーーー!!!」
暴走する狂乱団長を必死に押さえる団員二名。
「・・・・・・(ドクドク)」
補充された、旗持ち団員は押さえようとした時にー、必要以上の
反撃を受けダウンしている。
「・・・・・・」
そんな、頼もしい仲間を全く無視して、美神は試合に見入っている。
(目くらましは同じ相手に連続して使うべきじゃ無い・・・あの時相手の娘はあの光を逆利用して、ただでさえ見えない触手を、確実に接続した・・・)
もはやおキヌは両手まで床につけようとしている。
しかし美神は目をそらさない。
(まだまだ甘いのは確かね・・・けど・・・)
その目には昨日のような、迷いなど一切存在しなかった。
(うちのおキヌちゃんなんだもの・・・! 負けるはず無い!)

(う・・・くぁ・・・!)
おキヌは強制力に対して、必死に抵抗していた。
(しぶといわね・・・三本全部取り付けたのに・・・)
ねばるおキヌに、矢神は僅かな焦りを感じた。
(これ以上霊力使うと・・・次の試合に響くか・・・よし!)
(! うあ・・・っ!)
矢神はおキヌにとどめを刺すべく、最大の霊波を放った。
(そのまま両手足広げて! 横になりなさい!)
(く・・・)
おキヌの心にいくつかの声が、矢神ではない、誰かの声が響く。
『おキヌちゃんはこの! 美神令子除霊事務所の自慢のメンバー
なんだから! 負けるはずない!』
その声に、おキヌの気力が倍増した。
(な!?)
驚愕する矢神。 その眼前で、膝をついたままとはいえー・・・起き上がったおキヌが笛を吹き始めた。
(負けられない・・・うぅん・・・)
ピュリリリッ!
(負けたくない!)

その頃、医務室で・・・
「オレが若い頃はな・・・ヒーリングなんぞ気味悪がられるだけでなー・・・いつも独りだったなぁ・・・」
「分かる! 分かるぜ! その気持ち!」
いつの間にか、友情が芽生えようとしていた。
「あのー・・・治療・・・」
『やかましいっ!』




今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa