ザ・グレート・展開予測ショー

黒い呪いと天使の笛の音(番外)


投稿者名:AS
投稿日時:(01/ 4/21)




ー黒い呪いと天使の笛の音(番外)ー
<副題>ー氷室キヌ応援団結成までの道ー



「さあ! カメラは『壊されちゃった』けんど! わたすには! じゅーよーな使命があるだ!」
ここは・・・とある場所に在る、外見は何ら変わりの無い普通の会場。
しかし、その中では、人に害を為す『モノ』を退ける職業、GSを目指す者達が、競いあっていた。
しかし、今この場にいるのはそれらの資格希望者だけでは無い。
「まずはー・・・えぇと・・・どこさやったか・・・」
短めな髪の、どこか素朴で、けれど元気いっぱいの娘が、やたら大きなバックからごそごそと何かを取り出そうとしている。
「あ、あっただーーー!!!」
彼女は歓声を上げて、旗のようなものを引っ張り出した。
「わー・・・早苗殿、それは・・・?」
しっぽがついた少女の一人が、彼女が引っ張り出した物に好奇心を刺激されたのか、目を輝かす。
「ふっふっふ・・・この日の為に半年前から作った応援旗だ。」
その問いを待っていたかの様に、早苗は胸を張って答えた。
「お、お手製でござるかっ!?」
「んだ・・・苦労しただ・・・」
しみじみと、彼女は呟く。

この会場には、特定の選手と親しい者、あるいはGSに興味のある者ならば、応援、あるいは観戦を許可されている。
もちろんその為の道具も、持ち込み自由という・・・少し、いやかなり、風通しの良い試験だった。

「さ、あとは・・・よいしょ!」
「そ、それってー・・・」
次に『バッグから出てきたもの』に、もう一人のしっぽをつけた少女が驚きの声を出す。
「ふっふっふっ・・・うちの神社の倉にあった、多分由緒正しい
太鼓だ!」
「やけに大荷物だと思ったら・・・」
場にいる『唯一』の少年が、不満げに呟いた。
「ほーんと、随分な力の入れようねー」
その少年の声に続き、横の席に腰掛ける女性が呆れ半分、感心もやや込めた声を出す。
「えへへ・・・何たって可愛い妹の晴舞台! 昨日不覚を取った分、今日は気合い入れんだぞ! みんな!」
言いきった彼女。 ・・・しばらく間をおいて・・・
『・・・・・・はあ!?』
全員が疑問混じりに、揃って声を上げる。 しかし、目の奥に炎を燃やした彼女には、これっぽっちも届かなかった。
「はい! 力持ちのシロちゃんは太鼓頼むだ!」
「た、太鼓でござるか!?」
そう言って、早苗はシロに、同じ長さの二本の棒を差し出す。
一瞬、シロはテレビで見た、何かたかーいところで熱心に太鼓を
打つ、はっぴ姿の男を思い浮かべ・・・
「楽しそうでござるっ!」
しっぽをパタパタさせながら、喜々として、太鼓を打つのを快諾した。
「よしっ! ・・・後は・・・あった!」
続いて早苗はラッパを取り出した。
「こっちは学校から持って来ただ。」
冷静な指摘が飛ぶ。
「許可・・・もらったの?」
「許可? なして?」
おそらく、その時点から妹の応援にのみ思考回路を回した少女には、まともな判断力は期待出来ない。
「・・・・・・」
指摘した女性はそう判断すると、『我関せず』という風に、顔見知りの試合に目を向けた。
「さあ! ラッパはタマモちゃんだ!」
「何でっ!?」
決まりごとの様な早苗の言い方に、タマモは目をむく。
「何でって・・・あん男には口つけてもらいたくねえし・・・」
「俺はバイキンかー!?」
「それ以下だ。」
抗議した男は、にべもなく返された冷たい言葉に涙した。
「しくしく・・・」
そちらには少しも関心を持たずに、早苗はタマモに向き直った。
「あれは論外! で、美神さんには分からないとこの説明さ、して欲しいし・・・」
「・・・・・・」
「わたすは、この拡声器と・・・」
「どっから出したの!?」
「? ・・・旗振るのでいっぱいいっぱいだ・・・」
「・・・拒否権は?」
言ってからー・・・タマモはため息をついた。
「・・・・・・」
タマモの目の前で、視線を変えずに、早苗が涙目になった為である。
「・・・・・・」
「分かったわ・・・だからそういう目でじーっと見るのはやめて・・・」
タマモの言葉に、一転、早苗は目を輝かせた。
「そう言ってくれると信じてただっ!」
タマモの手にラッパが握られる。
(・・・・・・)
ラッパを渡して、いそいそと旗を取りに行く早苗の後ろ姿を見ながら・・・
(ハァー)
もう一度タマモはため息をついた。

かくして・・・にわか応援団が誕生した。
「さあ! これで準備万端! わたすが合図出すからー、せーの! で行くだぞ!」
「おー!」
「おー・・・(あとであそこへ連れてってもらお・・・)」

余り統制の取れていない、氷室キヌ応援団が動き出す。

その応援が、一時は妹の時を止めてしまうという事態を起こす事など、露ほども考えずに、早苗は『おキヌちゃんファイト』の文字が入った旗を持ち、拡声器(メガホン)を口元に近づけた。

『せーーーーの・・・!』

かくしてー、GS試験歴代最高の、豪華な応援の幕が上がる。

『おっキヌちゃーーーーん!! 頑張れーーーーーーー!!!」






AS「応援の裏側を書きました。 楽しんでもらえたら、嬉しいです。」

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