ザ・グレート・展開予測ショー

黒い呪いと天使の笛の音(13)


投稿者名:AS
投稿日時:(01/ 4/21)

「おキヌちゃん・・・」
「ちょっと一文字さん!」
友達の試合をハラハラした表情で見守っている、気の強そうな、娘に、突然背後から不機嫌そうな声がかかった。
「うひゃあ!」
すっとんきょうな声を上げ、一文字は慌てて振り返った。
その先には・・・
「・・・な、何だ弓か・・・脅かすなよ・・・」
振り返った先に見知った顔があったので、一文字の少し上がった
心拍数も、落ち着いて・・・
「何だ弓か・・・では無いでしょうが! いきなり自分だけ駆け出して! 前々から思ってたけど、ほんと誰かさんそっくり!」
心拍数が落ち着く前に、弓が金切り声を出した。
「だ、誰かって・・・」
「だいたいあなたは・・・!」
「あー、もー! 何なんだよ!」
一文字も熱くなり、言い合いが激しくなろうとした、その時。
「動くわよ。」
『!』
いつの間にか、斜め前の椅子に腰かけた、色黒の女性のその一言に、二人はピタリと動きを止めた。
すぐさま試合場の方へと、視線を巡らす。
そこには、友達の少女に、同じ年齢の対戦者が飛び出す姿があった。
「おキヌちゃん!」
「氷室さん!」
緊迫した二人の声。
目的を思い出した『二人』が見たのは、まさに試合が動いた瞬間だった。



ー黒い呪いと天使の笛の音(13)ー



(き、来た・・・!)
対戦者、矢神桔梗が再び拳に霊力を集中したのを感じたおキヌは、笛を吹かずに破魔札を手にとって身構えた。
(大丈夫! ・・・きっと上手くいく!)
とっくみあいを挑んで来る相手に、どう対処するか・・・彼女が一晩考えて、現時点で出来る手段。
(私にしか出来ないこと・・・それは・・・)
おキヌの思考は、そこで中断させられた。
「しのげるものならー、しのいでみなさいっっ!!」
ハッ!
向かいからの、その声に、おキヌの脳裏に『危険』の二文字が浮かぶ。
ドンッッー!!
矢神はその一言を言い終わらぬ内に、先程より数段早く駆け抜けて来た。
ダンッ!
激しい踏み込みの音。 
「覚悟!」
勢いと体重の全てを、その踏み込みに乗せた矢神は拳をー・・・
「せ、精霊石フラッシュ!」
「!?」
カッ!
踏み込み、拳を振るおうとする、ほんの一瞬。
「な、眼、眼が・・・!」
ドガアアアァッ!!
その一瞬に、精霊石の光で眼をくらまされた、矢神の拳は的を大きく外れて、再び結界にぶち当たった。
「く、姑息な真似してー・・・!」
手応えからヒットしなかった事を察知し、彼女は目を押さえて、
神経を研ぎ済ませる。
その時。
「は、破魔札っ!」
「!」
左後ろの方向から聞こえて来た声に、矢神は即座に反応した。
(声に出すなんて、お間抜けさんね!)
すぐさま、その方向からの攻撃が届かぬ位置へと飛びのく。
(よし、ここなら・・・)
ドガアアアッ!
「ーーー!?」
(な、何!?)
安全圏へと、逃れた瞬間、背後からの衝撃に彼女は吹き飛ばされた。
「ぐ・・・!」
『や、やった・・・!』
苦痛に横たわる彼女の耳に、背後からの声が届く。
彼女、矢神は、視力が少し戻ったのに気づき、振り返った。
そこには・・・おキヌが二人いた。
「ぶ、分身!? 違う・・・これは・・・」
『さ、身体に戻らなきゃ!』
おおよそ事態を把握した矢神の目の前で、その考えが正しいのを裏づける様にー・・・片方のおキヌがもう片方に入り込む。
「なるほど、ね・・・幽体でも物を触れる事が出来るんだったわね・・・」

「や、やっただーーー!!! 見たか!? 見たか!? あれが
うちのおキヌちゃんだべ!」
「さ、早苗さん、落ち着いて・・・」
策が的中し、優勢のおキヌに、早苗はおおはしゃぎしている。
「えへへ・・・ほらそこ! きびきび旗振る!」
さすがに旗を振り続けるのが、キツくなった彼女は、即席応援団の一員として、暇そうな『彼』を迎え入れた。
「こ、この女はー・・・」
「ほら、太鼓はもっとリズミカルに! そこ! ラッパの音を止めない!」
「もう・・・飽きたでござる・・・」
「息つぎ・・・」
即席とはいえ、スパルタ団長の叱咤の声が飛ぶ中、一人機嫌よさげな人が居た。
「うんうん! さすが! 上手いからめ手! きっと私の教えが良かったのねー」
そこに臨時旗持ちがつっこんだ。
「こうやって・・・おキヌちゃんも反則に染まるんすねー・・・」
つっこみの後に、『惨劇』があったのは言うまでも無い。

一方、試合場では、苦痛に顔を歪めながら矢神が立ち上がる。
苦しそうな矢神の様子に、おキヌも辛そうな表情になる。
「あ、あの、矢神さん・・・もう・・・」
「言わないで。」
おキヌの言葉を、矢神はピシャリと止めた。
「気を遣ってくれるのは嬉しいけど、いらないわ・・・」
一瞬、目を閉じ・・・
「だって・・・」
目を開き、その眼でおキヌを睨み据える。
「勝つのは私だもの。」
「!」
言葉が終わるより早くー、矢神の頭から、何かが出現する。
「霊体の・・・触手・・・!」
「このダメージじゃもう体術は無理だしね・・・それに・・・」
ギュンッ!
「! わっ!」
「やっぱりあなたみたく、自分の特技で勝負しなきゃね!」
言いながら、次つぎと、『二本』の触手を操り、おキヌを追い詰める。
「わっわわ・・・精霊石!」
「!」
カッ!
今度は矢神も目を塞ぎ、対処するが、おキヌとは距離が離れた。
「よーし、これで!」
すかさずおキヌは、ネクロマンサーの笛を口元へ寄せる。
(むきだしの触手に直接霊波を・・・!)
(笛を捨てなさい!)
(!?)
突然、おキヌの頭の中に声が響いた。
(何で!? 触手は・・・)
その時、矢神とおキヌの間に触手が出現した。
「三本目の見えない触手よ・・・」
バシュ! バシュ!
戸惑うおキヌに、触手が全て接続された。
「勝負あったわね。」

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