ザ・グレート・展開予測ショー

黒い呪いと天使の笛の音(11)


投稿者名:AS
投稿日時:(01/ 4/18)




ー黒い呪いと天使の笛の音(11)ー



コツ、コツ、コツ・・・
やや薄暗い廊下を、一組の男女が肩を並べて歩いている。
ズンズンズン
ふいに、男が、何やら我慢しきれなくなったという表情で、女性よりも、先に進んで行く。
「・・・」
一歩。
「・・・・・・」
二歩。
「・・・ちょっと!」
三歩、先に行ったところで、男の背後から声が上がった。
「?」
男はその声に振り向くと、機嫌の悪い声で、返事を返した。
「何だよ。」
「何だよ・・・じゃー無いでしょ!?」
男に劣らぬ、機嫌の悪そうな声で、女・・・少女が言い返す。
そのまま少女は、男に、言い返す暇も与えずに一気にまくしたてた。
「さっきから! 人がせっかく褒めたのに、気の無い返事を返すだけで! 今だって呼び止めなかったら自分だけで先に行ってたでしょ!?」
「・・・・・・」
決まりの悪い表情で、男は視線を逸らすと、黙ってまた先へと・・・
「あー! 待ちなさいっっ!!」
少女はそう言うと、男の腕を勢いよく掴んだ。
グイッ!
「ーーー! イデデデ・・・ッッ!!」
「!?」
男が発した、苦痛の声に、少女は慌てて手を離した。
「・・・ぬあーーにしやがんだっっっ!!? 痛えじゃねえか!!」
廊下に、男の怒号が響き渡る。
「な・・・だ、だって・・・」
少し負い目を感じているのか、言い返そうとして、口ごもった少女を一瞥し、男は、再び歩きだした。
「ち、ちょっと! どこに・・・」
「医務室!」
そう答えると、振り返りもせずにスタスタ先を行く男を・・・
(・・・もう二度と、格好良かったなんて言わない・・・)
ふくれた顔の少女が後を追った。


ガチャッ!
「! あれ・・・」
バターンッッ!!
「・・・・・・」
「・・・ちょっと」
「今日、そういや朝のもおにんぐ占いで、医者が居るトコは運勢最悪だったんだ。」
「モー二ング!」
しっかりと指摘をして、少女は肩を落とした。
「・・・ハア・・・もう少しましな言い訳出来ませんの?」
「ほっとけ!」
再び口ゲンカの火蓋が切られようとする。
その時。
ブン・・・
ドガ!
「ーーー!?!」
ドサアッ!
後頭部に突然衝撃を感じた次の瞬間、襲って来た鈍い、しかし、重く、激しい痛みに男は倒れ込んだ。
「ゆ、雪之丞さん!?」
「? 何でいきなり倒れてんの?」
外側に開くドアを、思いっきり開けて出てきた、その女の声に毒つきながら・・・
(ドアは・・・静かに開けろってんだ・・・)
雪之丞は意識を失った。


しばらくして・・・
「アハハハ! いやーそりゃ痛かったよねー。」
「・・・・・・」
「鍛錬が足りませんわ。」
「・・・・・・」
「災難だったノー・・・ププ・・・」
「・・・てめーら・・・」
気絶して倒れた雪之丞を話の種に、盛り上がるルーキー達。
ガチャ
「あれ・・・いつの間にかひよっこが勢ぞろいしてるわけ。」
突然会話に割って入って来たその声に、医務室に居る全員の視線が集まる。
(・・・・・・ジトー・・・)
その中で、何人か、視線に敵意を込めている連中が・・・


〜回想〜
「ほら! どいつもこいつも大した怪我じゃー無いワケ! ヒーリング使えるのは手を空けておくワケ!!」
「無茶言わんで下さい!!」
「一時の医師の使命とー、一生の医師生命・・・どっちがいーい?」
〜回想終わり〜


「それにしてもヒーリング使える医者が全員暇だとは・・・ワシの幸運も捨てたモンじゃー無いケンノー」
「そうねー」
「おい、誰がひよっこだと・・・?」
会話を聞きながら、医者連合は、胸中で叫んだ。
(このワガママ女ーーーーーー!!!!)


「さて、そろそろあの娘の試合だけど、どうするワケ?」
その問いに、髪を立てた少女が真っ先に答える。
「とーぜん! 応援に行くよ!」
その反応を満足気に見、他の連中に目を向ける。
「おたくらは?」
「俺はここで治療を・・・」
にべも無く、そう答えた雪之丞の横で、少女が立ち上がる。
「行きますわ。」
そう言って立ち上がる少女をしばし、呆然と見て・・・
「お、おい!?」
「なあに?」
「・・・・・・」
更に、やや離れた場所で、腰かけていた大男が・・・
「ワシも行くケンノー」
「おーいっ!」
「じゃ、話がまとまったトコで、早速行くワケ!」
「さんせーい!」
「・・・・・・」


そして・・・静かになった医務室。
「君・・・友達いないのかね・・・?」
一人治療を受けながら、医者の哀れみのこもった問いに・・・
「・・・・・・うるせえ・・・」
彼は、うつむきながら、答えた・・・


そして・・・

ドンドンドーーン!!
「おっキヌちゃーーーーん!!! 頑張れーーーーーー!!!」
「豪華な応援ねー。」
「ああああ・・・・・・!」

主役の試合が始まろうとしていた・・・






AS「遅れましたけど、出来ました・・・楽しんでもらえたら、嬉しいです。」


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