kanon −魂の運命(さだめ)−
投稿者名:来栖川のえる
投稿日時:(01/ 4/16)
・・・・・・・・・・・魂の牢獄が、あると言う・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・雨が降っていた。道行く人は皆かさをさして歩いている。こころなしか皆の足取りが速く感じる。・・・・・ただ、もくもくと歩く人々。なんのために歩いているのだろうか?
・・・・・・・・・・・・・雨が降っていた。だが、私には特に関係のないことだ。それに、私には持っているものなどない。私が持っているのは、着ている洋服のみ。お金なんかない。本当だ。一円たりとも持っていない。・・・・・・・・・私は歩き始めた。
「これ下さいでちゅ」
私が花屋の前を通りかかると、そんな声が聞こえた。・・・・私は少々気になって、少女のそばまで行く。
「はい、二つで2000円ね」
・・・・・・・・・・花のいい香りがする。私は、心行くまで花の匂いをかいだ。
「ありがとうでちゅ!」
少女はそう言うと花を持ってきていた袋に入れた。
そして、私の体をすりぬけて歩いてゆく。
「・・・・・・・・おっと、もう行くのか」
私は少女を追いかける。
・・・・・・・・・・・・・・私には、生前の記憶などなかった。ただただ分かるのは、私にはずっと「安らぎ」などないこと・・・・・・・・・・・・・・・・
「ふう、ついたでちゅ」
少女が見上げるのは・・・・・・・・・・・・高い建物だな。
「よっ!」
少女はそう掛け声をかけると、一番高いところまで飛んでゆく。
・・・・・・・・・・・・・・おいおい。
私も、それについてゆく。
「ふう、ついたでちゅ」
少女はそう言うと、一番高いところで腰を下ろした。
私はその隣に立つ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・別に、やることなんてないんだが・・・・・・・・・・・。
「今日は・・・・・・・・・雨で、夕焼けが見えないでちゅ・・・・・・・・・」
そう言って、その少女は先ほど買った花束二つに、どこから持ってきたのか、ビニールをかぶせて置いた。
「ルシオラちゃん・・・・・・・・・・・・・アシュ様・・・・・・・・・・・・・・・また来年も来るでちゅ・・・・・・・・・・・。その時は、一緒に夕焼けを見るでちゅ。
アシュ様にも見てもらうでちゅ・・・・・・・・・・・・・・」
そう言うと、少女は黙ってそこから飛び立っていった・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・泣いているのか?
・・・・・・・・・・・・・・・・それともそれはただの雨?
・・・・・・・・大粒の雫は、雨と共に流れていった・・・・・・・
・・・・・・・・・・・私の名前は鎌田勘九郎。
生前私がどんな人だったのかなど知る由もない・・・・・・・・・ただただあるのは、安らぎなど永遠に手に入らないという実感だけ・・・・・・・・。
私はこれからも黙って見続ける。
朝起きて、その後仕事して、そして寝る・・・・・・・・・
それだけを繰り返すおろかな人間共を
生きているのに死んでいる私と同じおろかな人間共を
その瞳に見えるのは、つまらない日常。
目的のないうつろな目。
・・・・・・・・・・・・・・・・だがなかなか面白いやつも中にはいるらしい・・・・・・・・・・・・・
そんなことが、今日分かった。
・・・・・・・・・・・・それも、どうでもいいことだがな・・・・・・・・・・・・
私の名前は鎌田勘九郎。永遠に目的のない生活を続けなくてはならない物。
永遠に・・・・・・・・・・・・
雨があがり、空には月が浮かんでいた・・・・・・
魂の運命・完
今までの
コメント:
- 今、マンガ界は大きく動いている。一昔まであった名作たちがなくなっていき、だんだん内容の薄いものがはびこるようになってきている。そんな気がする。
俺は一介の同人野郎として、なにができる?と思って、今までの「かって気ままに書いていく」から「内容のあるもの」を書こうと少しでも努力しようとした。その第一作目が、これ。少しでも楽しんでいただけたら幸いです。 (来栖川のえる)
- おっ、新しい「墓参」。中々に意表を衝いた仕掛けに先ずは一票。
ただ「私」が「少女」の一連の行為を観て、何処を「面白いやつ」と感じたのかが、今一つハッキリしませんでした。
永遠の魂の牢獄に囚われてしまった「私」の心にひとときのささやかな安らぎを与えた事でしょうか?
それとも失われた生前の記憶の残滓に響くものがあったのでしょうか? (Iholi)
- ここでは「ヒト」を、「つまらない日常に生きる、目的のないやつら」と書いています。
でも、パピリオのこの行動は明らかに「ヒトを思いやる」ことであり、その人々のために、わざわざこんなところまできている、というもので、ようは「目が生きている」んですね。そこで、「こんな人間もいるのか」ということでなかなか面白いということ。早々
コメント、どうもです。 (来栖川のえる)
- この仕掛けは、実はずいぶん前から考えていたもので、もっとしっかりした肉付けができたらよかったのになあ・・・・・・・と、ちょっと反省。 (来栖川のえる)
- どうも、お話の講釈、ありがとうございます。
せっかくのお話のポイントを逐一説明するのは、何とも気の乗らない作業であったと思います。重ねて感謝します。
どうやら僕自身が「(客観的には)つまらない日常に生きる、目的の無い奴ら」に近い処に身を置く人間なので、この「つまらなさ」が何であるのかが把握できなかったと云うのが、理解不能の原因だったようです(苦笑)。
結構、面白いと思うんだけどなあ、彼らも。まあ、個々の認識の問題ですね。 (Iholi)
- 当HPでの墓参物で、登場する影の主役花屋は
勝手ながら、「フラワーショップ、浜松町」とさせて頂きます。
うーん、メジャーデビュー? (トンプソン)
- りょーーーーかい! (来栖川のえる)
- りょーーーーかい! (来栖川のえる)
- ↑やや興奮ぎみ? (来栖川のえる)
- おお・・・・・・・・・おお・・・・・
スゴイッすねえ・・・・・・尊敬 (トシ)
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