ザ・グレート・展開予測ショー

横島夜行  今昔


投稿者名:TAK・A
投稿日時:(01/ 4/13)

(どないせえっちゅんじゃ)
 横島はうめいた。意外に思われる方も多いと思うが、今の彼は作戦を立ててから戦いを挑むタイプである。これには三つの理由がある。
 第一に、なるべく楽に安全に勝ちたい。根が臆病で怠け者なのである。勝算なしに危険に挑むほど男らしくないともいう。
 第二に、考えなしに飛び出してもどうにもならないことがあることを大戦で学んだ。もっと早く学んでいれば彼女を殺さずにすんだかも知れない。
 なによりの理由は、文珠の意外な欠点である。文珠は大抵のことは何でも出来る。だが逆に言うとそれは、数多の選択肢から正解を選ぶ必要があるということだ。実戦の場でとっさに正解を常に出せる、横島はそれほど自信家ではない。そのためある程度何に使うかあらかじめ決めておく必要がある。
 しかし、敵を知らずにたてた作戦など、所詮絵に描いた餅である。
(何で城なんかたっとるんじゃ、洞窟の中、水の中に)
 そう、洞窟の奥の海水がたまった広いくぼみに、しかも水の中に、竜宮城ににた城が建っていた。
(てっきり、後はさっきより強い侍が巴御前みてーな綺麗なねーちゃん侍らしてるだけだと思ってたのに)
 どっからそんな結論がでた?何にしろ横島の思惑がはずれたことは確かである。
 城門が開き騎馬武者が十騎でてきた。その中心にいる武士は外の武士と違い明確な意志が見え、知性を感じさせた。
『そこな下郎、九郎判官はいずこぞ?』
 中心の武士が聞く。
「くろう?さっきの長刀使いもそんなこといってたが・・・
ってだれが下郎じゃ!」
『なに、すると悪兵衛を討ったのは貴様か?』
 横島の抗議を無視する。
「あくのひょうえっていうのか、あのおっさん、いかにも悪役だな。そいつを倒したのは確かに俺だよ」
『なんと・・・このようなものを九郎と間違えるとは、そこまで狂っていたのか』
「・・・大体あんたら何者だよ」
『無礼な!』
『やめい!右近介』
 怒る側近を止める。
『我は、平智盛』
「たいら?じゃあんた平家か?壇ノ浦とか、耳無し法一とか、祇園精舎とかの?」
 やっと敵の正体を知った横島。
『いかにも、我らは壇ノ浦で滅んだ平家一門。ただなぜ祇園精舎がでてくるか分からぬが、それに耳無しとは何だ?」
「あー、しらねえかやっぱり」
『そういう貴様は何者か?』
「GS横島忠夫だ!」
「誤雄戸水破?なんだそれは?」
「早い話が、おまえらを祓いにきたんだ!」
『むう、陰陽師か、そうは見えぬが』
「うっせえ!」
 怒鳴りながらも横島は懐かしさを覚えていた。出会ったばかりのお絹を思い出していたのだ。
 まだ幽霊だったおきぬは現代のことなどなにも分からずにいた。彼女にいろいろ説明していたことを思い出す。
(あのときのおきぬちゃんは、俺が覗きをしててもよくわからずになにしてんですかぁ、ってかわいい声で聞いてきたんだよなあ。それが今じゃ怒りに震えて聞いてくるんだモンなあ。ああ昔はよかった。おきぬちゃんもあのままで人間になっていたら、今頃何でも・・はっ、俺は一体なにを!おきぬちゃんみたいないい子に手を出すほど落ちちゃいない!違う!違うんだああ!)
 いきなり黙り込んだと思ったら身もだえを始め、次は岩に頭を何度もぶつけ出す横島を見て冷や汗流す平家一同。
『智盛様!あやつ怪しいです!怪しすぎます!早く殺しましょう』
『待たれよ!怪しすぎるにも程がある。うかつに殺せば、いかなる祟りがあるかわからんぞ!』
「おまえらがいうなー!」
 実際に祟りを起こしてる連中にいわれたくない。
『横島とやら、我らを祓いにきたといったな』
「ああ」
 やっと仕事に入れそうだ。
『見逃してやる。早くここを立ち去れ。おまえごときにあの方は祓えぬ。それにモウスグ教経が帰ってこよう」
「あのかた?!あんたがボスじゃないのかい!」
『坊守?いやみてのとうり出家はしてないが?』
「いやだから、そうじゃなくて」
 蹄の音が聞こえてきたのはそのときだった。

   次回『不屈』に続く

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