ザ・グレート・展開予測ショー

ミットナイトダンディ(その七)


投稿者名:ツナさん
投稿日時:(01/ 4/11)

 カツーン・・・パラパラパラ
 洞の地蔵まであと7、80メートルまでという所。
 川が緩やかなカーブを描いているので一行の足元は砂だまりになっている。
 先ほどに比べ大きな岩が無いのでだいぶ歩きやすい。
 先頭を歩いていたピートの耳に何か小さい物が崩れたような音が飛び込んできた。
「先生!」
ピートはこれは、と聞く。
「お出迎えだな、気を引き締めろ、ピート。横島君も、『上』に注意してくれ」
振り返り横島にも注意を促す。
「上?」
横島は上を見ながら聞き返した。がその口ぶりは答えを求めたものではない。
 唐巣が気を付けろと言うのだから、何か有るに決まっている。
 この期に及んで意味のないことを言うほど唐巣は無能ではない。
「おキヌ君と水野君を頼むよ」
唐巣はそう伝えると、クロスと聖書を構え、水野を横島に預けて前を進む。
「俺から離れないで」
横島は二人の後ろから命令口調気味に言い放つ。二人は無言のままうなずくと横島のやや斜め前に立つ。
「さて・・・なにが出て来るやら・・・」
 ほんの数年前まではただのスケベな臆病者だった横島だがいまや世界有数のGSである。 そして肉弾戦においては親から受け継いだ変態的な強さという本質と美神からのある種の愛情表現によってもはや文珠なしでも化物級のタフネスがある。
 笑みを浮かべながらのこの発言はこの事実に裏打ちされた絶対的な自信の現れである。
「横島さん・・・」
おキヌちゃんは、それがとても心配でならない。

『・・・・汝我が眠りを覚ますものか・・・』
『魂は常、常は我ら、あるものは無き、無きものはあり・・・』
『汝の常は幻のごとき、我が眠りを覚ませしは誘い・・・』
『汝の魂は我が常のために有り・・・』
『・・・・汝輪が眠りを覚ますものか・・・』
『魂が見るは幻夢・・・常夜の夢こそ魂の常・・・』
『我が常がために欲すは魂・・・・』
『我は常に地にあるを望まん・・・幾千の怨の魂を我が誘いにて・・・』
『汝はともに眠らん・・・我在りし常夜の夢が中に・・・』
『我は地に在り・・・。この地は我が常夜なり・・・肉は幻・・実は魂・・』
『実を晒し我が内に・・・我は常なり。すべては常世の中に従わん・・・』

ピートの中に流れ込んできたのは強烈な念波だった。
「・・・な・・・!!!」
ピートはその場で棒立ちになり、その『声』に耳を傾けている。
 その声はまるで母親のような暖かさと、身も凍る冷たさが平行に存在するような、強烈なものだった。あがらうのも忘れ、その声の元へと歩き出す。
「僕は・・・」
ピートは洞へ向かって歩き出す・・・。

「ピート!!!」
唐巣は何が起きたのか一瞬理解できなかった。声は彼の頭の中にも響いている。しかしまだ強くは影響されていないようだ。意思はしっかりしていた。
あまりにも無防備にピートが歩いていくのが見える。
 しかしそこは熟練GSである。操られていることを察知した唐巣は、おキヌに向かって、
「ネクロマンサーの笛を!!!」
と叫んだ。
「は、はい!!!」

キィィィィィィィィィィィィィ・・・・・・

おキヌちゃんはとっさに根来ロマンサーの笛を構えると何も考えず精一杯吹く!
甲高い音とともに包み込むような霊波が川原を包み込む。
「おキヌ君、そのまましばらく吹いていいるんだ!!君の笛の音で『奴ら』が発する強烈な思念波を中和する!!!」 
「おキヌちゃん、これを!!」
横島はおキヌちゃんが息継ぎをしようとして口を大きく開けた瞬間、口に三つ文珠を押し込んだ。文珠はすぐに発動して口の中から消える。
「何するんですか!!!」
「文珠の効果でしばらく息継ぎしなくても大丈夫になったはずだ!!がんばって吹いてくれ!」
「・・ハイ!!」
おキヌちゃんは言われたとおり笛を吹く。確かに息を吐きつづけていても苦しくならない。
「いい判断だ横島君!!・・・来たぞ!!!」

がらがらがらがら・・・・

唐巣が叫んだその瞬間、大量の落石が唐巣たちを襲った!!!

続く


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