ザ・グレート・展開予測ショー

横島夜行 英雄


投稿者名:TAK・A
投稿日時:(01/ 4/10)

「後で覚えてなさい。令子」
底冷えするような声で宣言する美智恵。横島救出が再優先される現状ではお説教の時間がないので、後で雪之丞と共にしごきが決定された。あの大戦の折の娘に対する苛烈な試練はすでに業界の伝説と化している。戦慄する一同。
「と、ところで、敵将が言ってたくろうって、なんですか?横島さんのコト指してるみたいですが」
ピートが問う。重い空気に耐えられないようだ。
「ああ、それなら、義経のコトよ。九郎判官義経」
「義経ですか?」
一同首をかしげる。銀一扮する若武者と横島、全くイメージガ一致しない。
「残念ながら義経は本当は出っ歯だったらしいわよ。とても美男とは言えないわね」
「そ、そうなんですか」
いきなり銀一が赤塚マンガのキャラクターに変わる。しかし横島を美男と思っている者は一人もいないと言うコトか。マ、当然か。
「あの霊たちは長い間に認識能力を狂わせてしまった。かれらの本拠に乗り込んだ霊力の強い人間、つまり横島君を義経と誤認してもおかしくないわね」
「霊力?」
「義経は天狗から武術を学んだのよ。おそらくそのときに神足通(速く走ったり、高く飛んだりする術)も学んだのよ。」
「それで弁慶や平家の侍をばったばったとなぎ倒したと言うわけでござるな」
シロが勢い込んで言うのに苦笑して応える美智恵。
「残念ながら、義経は本当は弱かったそうよ。」
「えええええ!」
「義経の弓は貧弱なものだったそうだし、五条大橋で負けたのは実は牛若丸だったという説もあるし、それに有名な八艘飛びだけど、あれは平教経という侍に追われて逃げ回ったかららしいわ」
「そ、そうなんでござるか」
偶像を壊され落ちこむシロ。
「英雄とは大衆が作り上げるものよ。貴方たちも覚えがあるでしょ。」
大戦でかれらのマスコミをはじめとする世間の扱いは凄かった。それを思い出す一同。特に六洞女学院のおねー様攻撃に身震いする美神。
今かれらは、ヘリコプターで只一人英雄になるコトを拒んだ男、ヒーローになれなかった男の元へ向かっている。

時はさかのぼり、赤畑村恵比寿洞。横島は装備の点検をしていた。本来仕事の前に済ませるものだが、そこはそれ、今だ未熟者なのである、
「ほんと、ろくなものがねーな」
破魔札。五万円のものが十枚。
見鬼くん。ただし旧式。
しめ縄。ぼろぼろ。
神通棍。使い古し。
霊体ボウガン。唯一まとも。矢が三本。
これらを使ってどうやって戦うべきか。
横島は考える。何か思いついたようだ。今度はがさごそはじめた。

「これでよし」
作業を終えた。ふと工具代わりにしていた『爪』をみる。禍禍しい魔物の鉤爪のような手。かつてこの霊力の手甲を栄光の手と読んでいたコトを思い出す。

この手で、栄光をつかめると信じていた。ヒーローになれると信じていた。
確かに美神を越えた。世界を救った。
しかし自分のしたコトは、
一人の女の、全てを捨てて自分を愛してくれた女の、
未来を、生きる可能性を、この手で、
握りつぶした。
自分は英雄ではなかった。

「いかんな、もう悲しまないと言ったのに」
左手を胸に当てる。そこに彼女がいるような気がして。
いつしか一人でいるとそんなしぐさをする癖が、横島についてた。

栄光とは無縁となった、血塗られた手を構え、横島は闇を進む。


本編です。横島一人のときは少し暗いかもしれません。後で合流します。Iholiさん○のことありがとうございます。

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