ザ・グレート・展開予測ショー

黒い呪いと天使の笛の音(10)外伝


投稿者名:AS
投稿日時:(01/ 4/10)

「ぐうっ! ・・・げほ、げほっ!」
やや、世間一般でいうところの、不良と誤解されてしまいそうな髪型の少女が、脇腹を押さえ、むせこんでいる。
「サイキック・ソーサー・・・だったか?」
その少女の向かいには・・・こちらも、ややキツい眼をした青年が、何やら盾の様なモノを右手に携えながら、その盾を見、何事かを呟いている。
「霊力の盾・・・」
苦しげに身を起こした少女も、青年の盾に視線を注ぐ。
(なるほど・・・ああいうやり方もあるんだ・・・)
少女は青年の『盾』に、感銘に近いものを感じた様な眼差しで、ゆっくりと、立ち上がった。
「・・・・・・」
少女が立ち上がるのに合わせて、青年の眼も、鋭さを増していく。
両者の間には、何かが激しくぶつかり合った後の様な、ある種の異様な空気が漂っている・・・
その空気が今度は、更に、激しいぶつかりあいを予感させるものへと転じたその頃・・・

<試合ー・・・はじめっっ!!!>

『彼』の試合が幕を上げた。



黒い呪いと天使の笛の音(10)外伝



「いい事タイガー!? こんなとこでつまづくんじゃー無いわよ!?」
やたらと気合いの入った激励の声が、『虎』の背後から飛ぶ。
目前の、時代がかった女性からは目を離さずに、『虎』はその声に、返事を返した。
「心配いらんですたい! ・・・今度こそはエミさんの顔に泥は塗らんですケェノーーー!!!」
その返事はそのまま、向かいにたたずむ相手への威圧となって、
会場に響いた。
「フ・・・」
並の人間ならば、いかに距離が離れていようとも、すくみ上がる・・・文字通りの『虎』の『叫び』。
しかし、その女性は、まともにその威圧にさらされながら、ただ
冷笑を漏らしている。
「随分な自信ですこと・・・ご自慢のつまらぬテレパシー能力が効かない・・・それでも同じ事が言えるのかしら・・・?」
「・・・・・・!」
「タイガー!」
無論、この女の言葉は、この試合を自分のペースで運ぶ為の挑発
に過ぎない・・・例えそれが判っていても、自分の能力を小馬鹿にした・・・その事が『虎』から思考力を奪った。
「グ・・・ガアアーーーーーー!!!」
「タイガー!!」
珍しく焦りの声音で、叫ぶエミ・・・
しかしそれは、『虎』の身を案じるのでは無く、相手の女性に、である。
「タイガー・・・」
『虎』が発した精神感応波は、どんな過酷な状況ですら、瞬時に
再現して・・・相対する者をその場へと送り込む事も出来る。
キレていようと、タイガーなら、相手を『壊す』様なイメージは
与えない筈・・・そう思っていてもエミは不安になった。
「・・・・・・」
相手の女性は目を閉じ、ただ立ち尽くして・・・
「フ・・・!」
突然、女性は目を開くと、どこからか取り出した『真剣』を手に、『虎』に向かって斬りかかった。
「ーーー!!」
ザシュッ!
虚を突かれ、反応が遅れた『虎』の左腕に、亀裂が走った。
「く・・・!」
「だから言ったでしょう・・・? 心を殺せる忍びに精神感応なんて、意味無いのよ・・・」
「・・・・・・!」
刀を構えた忍び・・・くの一は、興奮した様な表情をして、刀を構えた。
「・・・この鍛え直した、ヒトキリ丸で・・・フフ・・・斬り刻んであげる・・・」
「タイガー! もし負けたらおたくなます斬りにするからね!」
どちらも、同じ様な内容の、物騒な言葉・・・しかし、込められた『意味』は対極である。
過激な言動の『師匠』の、いつも通りの言葉が、『虎』を落ち着かせた。
「心配いらんですタイ! ワシのテレパシーはまだ負けておらんケェノー!」
そう言って、『虎』は、新たな精神感応波を放った。
(無駄な事を・・・まさに獣ね・・・)
目を閉じ、送られて来る映像を心から消し去る・・・
「まだまだー!」
『虎』は新たなイメージを次から次へと叩きつける。
(・・・もう・・・付き合う価値も無いわね・・・)
そう判断した、くの一の女性は『心』を解放した。
途端に異質な世界のイメージが流れ込んで来た。
「そこっ!」
ヒュン!
「ぐっ・・・!」
くの一の投げた苦無(くない)は、正確に『虎』の腕に突き立った。
先刻、斬りつけられたのとは、逆に、今度は右腕である。
「じわじわと・・・ね、だからさっきのも加減したのですよ・・・ふふふ・・・」
もはや、すっかりと、危険な目をしたくの一は、興奮している為か、更に喋り続けた。
「どんな場所に姿を溶け込ませても、気配が隠せなければ無駄よ・・・観念なさい・・・痛く無いから・・・(嘘だけど)」
「・・・・・・」
シュン!
「!」
くの一の視界に、元通りの試合場の光景が飛び込んで来た。
「あら、ほんとにあきらめるとは・・・あがく獲物の方が愉しいのに・・・」
「ウオオオオオオォーーーーーーーー!!!!!」
心底残念そうな、くの一に向かって、『虎』が猛然と、突っ込んで来た。
「ふ、そうこなくては!」
くの一の女性は、刀の替わりに刃の付いた鉄甲の様な物を腕にはめた。
「霊的格闘モード!」
女性は衣服に手をかけ・・・脱ぎ捨てると、レオタードの様な、動きやすい服装に・・・(後で『ソレ』を映像として修めたテープに、血迷った、とある煩悩男による騒動が起きた。)
「この爪は以前折られたヒトキリ丸の分身・・・手に馴染むわ・・・」
「ウオオオオッッ!!!」
「! あら、残念。」
余裕で『虎』の動きを見切り、くの一は距離を稼ぐ為、後方へと、大きく飛んだ。
(助走して、最高の速さの一撃を打ち込んであげる・・・)
くの一の女性がそう思った、次の瞬間。
バシイイィッ!!
「ーーーー!!?」
くの一は結界によって、大きく跳ね飛ばされた。
(ど、どういう事!? 何であそこにーーー!?)
くの一のその『疑問』は目の前の光景にかき消された。
飛ばされたその先には、霊波を撃とうと、待ち構える『虎』の姿が・・・
バシュウゥッ!!!
「ーーーーー!!」
まともに霊波を浴び、くの一は吹き飛ばされた。
「ぐ・・・!」
顔だけを上げ、くの一は『虎』に疑問を投げかけた。
「ど、どうして・・・あそこに・・・結界が・・・?」
その時。
シュン!
「ーーーー!!」
試合場の結界の位置・・・『虎』の背後の結界が突然、遠ざかった。
「ワシは一度もテレパシー送るのやめとらんケェ・・・」
「く・・・!」
『虎』の言葉に、くの一は、敗北を悟った。
だが・・・
「く! おおおぉ・・・っ!」
「・・・おたく、もうやめとく方が賢明よ・・・」
『虎』の背後の色黒の女性から、制止の声が飛ぶ。
その声に、結界の外に居る審判が動く素振りを見せるが・・・
ギラッ!
「ーーー!」
くの一の必死の『眼』に、二の足を踏む。
「負けられないのよ・・・忍びにも・・・誇り・・・が・・・」
足を引きずりながら、こちらへ向かって来るくの一・・・
「・・・・・・」
『虎』は、そのくの一をただ、じっと見ている。
「はあ・・・はあ・・・」
前回、とある煩悩男に負けた屈辱をバネに、修行を積みー腕を上げて臨んだ今大会・・・・ここで負けるわけには・・・!
その思いだけで、くの一は爪の届く間合いへと・・・
「・・・・・・」
それでも『虎』は動かない。
「・・・はっ!」
くの一の執念の一撃・・・
ザシュッ!
「! えっ・・・!?」
くの一の爪はまともに『虎』の腹に突き刺さった。
「な、な・・・」
誰よりも、くの一自身、信じられない展開だった。
「ぐう・・・!」
膝をつく『虎』。
「・・・・・・」
くの一はその『虎』をいまだ、呆然と見ていた。
「ギ・・・」
『虎』がうめき声を上げる。
「ギブ・・・アップ・・・」
くの一はただ、呆然と・・・
「ギブアップ・・・?」
『虎』の言葉を、そのまま、繰り返してしまった。

ーその瞬間ー

『勝者、タイガー寅吉!」

決着が着いた。


「・・・か、勝ったケンノー・・・!」
最後は完全なまやかしの為、腹に傷は無いが、両腕の傷は本物の為・・・やや苦しそうな『虎』。
しかし・・・
シーン・・・
いつの間にか、エミも姿を消していて・・・『虎』を迎える者、
祝う者は誰も・・・いなかった。
「な、何なんじゃろ・・・この孤独感は・・・」
涙する『虎』・・・そんな『虎』の姿を映す眼差しが二つ。
その眼差しとは・・・
「ま、これでおたくもプロ・・・これからはもっともっと、コキ使ってやるワケ!」
遠目から、実に機嫌良さげに、タイガーを見ている師匠と・・・
「・・・完全な・・・負けね・・・」
(生涯の獲物・・・見つけたわ・・・この手で必ず!)
報復を誓う、暗殺者の、鋭い眼光だった。
この後、『虎』が背後に視線を感じるのは・・・
「ん・・・何か寒気が・・・?」
別の話である。






AS「続きです・・・しつこいですが、良い所と、悪い所・・・
出来ればお願いします。」

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