今日の浜松町
投稿者名:トンプソン
投稿日時:(01/ 4/ 8)
ゲームセンターで会話を成り立たせるには大声が必要であろう。この時の西条もこの例に漏れない。
「しかし、令子君からデートの御誘いとはね」
カジュアルの格好と言うのが第一条件で有るので二人とも幾ばくかは若く見える。
「まぁ、デートだなんて言ってないわよ。付き合ってって御願いしたのよ」
それを男性一般はデートと認識するであろう。
西条が美神令子から連絡を受けたのは昼を過ぎた当たりであったろうか。
彼の部屋に有る専属回線の電話が鳴ったのだ。
「モシモシ、西条です」
「西条お兄ちゃん?美神令子です」
「令子君、どうしたんだい、こっちの回線で電話なんてなんか事件か?」
気を張る西条に対して電話先の美神は至極のんびりとした口調である。
「ううん。携帯が通じなかったからよ、あのさー今日暇?」
「あん?暇は暇だが、書類整理をこれからやろうとね」
「なんか、ぱっとしない休日ねぇ」
「・・君は僕に喧嘩を売りたいのかい?」
「まさか。ねぇ、ちょっとだけ付き合ってくれない?それとも御仕事?」
西条が電話先から消えたようである。
「あれ?お兄ちゃん?」
もう一度声を出そうとした時、
「いやぁ、おまたせ!!」
どうやって来たのであろうか。のスーツに薔薇を抱えて美神の目の前に姿を現したのだ。
「あら、早かったわね。お兄ちゃん、でもねその格好じゃぁね、遊びに行けないじゃない」
「遊びに行くって何処に行きたいんだい?」
薔薇を渡してから、聞くと、
「うん。もうちょっと時間を潰したら、浜松町へね」
「夕方ぐらいに?」
「そうね。駄目かなぁ」
しんみりとした空気を察知した西条だ。
「いや。それならそれで。でも時間を潰すとなるとなぁ」
「取りあえずは向かいましょ?」
「ん、OK、でもその前にスーツは着替えた方がいいかな?」
「そうよ、折角の日曜なんだから。そうだ近くのブテックで私が見てあげよっか?」
「是非に!」
そうして近くの洋品店で少し若者向けの店に向かう。
「なぁ、令子君。これはいくらなんでも」
「あら?そぉ、可愛いわよ」
着せ替え人形の感覚なのであろうか。普段自分では買わないような物をチョイスする美神である。
「令子君、楽しそうだし、まぁいっか」
女の子が選ぶ毛並みの変った洋服も有ってもいいじゃないか、当然であろう。
およそ45分、西条は着せ替え人形であったか。払いは自分である。
「へぇ、以外と安くつくんだな」
「お兄ちゃんは英国御用達とかしか買わないんでしょ?」
「否定はしないね。さて今度は何処へ行こうか、時間を潰す場所はぁ」
「この時間はバーなんてやってないでしょうしね」
美神とバーに行くのは自殺行為である。
「そうだ、こんな格好してるんだから、アミューズメントパークでも入らないか?」
「ゲーセン?まぁいいわね」
先ずは浜松町まで向かい、駅の近くに有る小振りのゲームセンターを見つけると、
「クレーンゲームね、挑戦してみようかしら」
これで、二人して1000円は無駄に使う事になる。
「まったく!暴利だわ」
「ははは。夢をキャッチするとはよく言ったもんだ」
「ヨコシマ君なら100円でとれるだろうけどね」
「そう言えば彼は?」
「横島君、親父さんが一時帰国するってんで迎えにいってるわ」
「ふーん」
「それにこの時期は彼使えない物ね」
「そう・・か。やけるんじゃない?」
「馬鹿ね。いない奴に妬くなんて私の柄じゃないわ」
しかし、西条の目には微かに動揺した妹分の姿があった。
二人ともゲームは得意では無い。それでも、
西条は狙撃関係のゲームでそれなりの高得点をたたき出し、
美神は例の漫画を元にしたパンチングマシンで、
「馬鹿横島ァァァァァ!!!」
無意識の叫びであったのか。
夕日が映える時刻に二人は東京タワーへと向かうのである。
「エレベーターだけなのに、結構な料金取られるわね」
愚痴をこぼすもこの時ばかりは美神もお兄ちゃんに甘えず、自費で出す。
そして、ゆっくりと展望台のドアが開く。
「ゆっくり見てきな。令子君のライバルが好きだと言った光景をさ、一人でいっておいで」
「え?・・うん。そうするわ。お兄ちゃん」
西日で真赤に燃えたような配色の場所へと向かう。
おそらくは、一人で来るのが怖かったのであろう。そんな事は百も承知の西条だ。
「ま、男冥利につきるかな?」
喫煙所に向かい、ビニールを切ってとんとんと底を叩いて一本加える。
「なんで、だろう?」
昨日横島が東京タワーに登ったのを知ってどうしても来たくなったと言う。
「ふふ。誰にも会えるわけでもないし」
しかし、だ。
「あ!あんたは美神しゃんじゃないでちゅか!」
「その声はパピリオ!」
視線を低くすると確かに彼女の、パピリオの姿があった。
「いいの?こんな所に来て」
「うん。今日は御許しを得て東京に来てまちゅ。親切な人が教えてくれたでちゅ」
内心、道案内をちゃんとした者に感謝する美神だ。
「それにしても、夕日って綺麗でちゅね」
あれ?答えが返ってこないでちゅね、と美神を見上げるパピリオ。
「あっ」
それっきり何も言えなかった。美神は泣いているのだ。
何がかなちいのでちゅか?どうしたんでちゅか?どうしてと、質問したいパピリオだが、一種の迫力に負けているのだ。
しばらくは雑踏に耳を向けていたパピリオだった。じっと夕日を見て。
「やっぱり、綺麗でちゅ」
春一番が来た。昨日横島達が置いていった黄色い花束の花弁が少しだけ残っていた。
「あ」
「ルシオラちゃん・・?」
泣き止んだ美神もパピリオも花弁を蛍と見間違えたのか。でもそれが何かすぐに解った。
「まるで蛍みたいだね、おやパピリオちゃんじゃないか」
新しい洋服に煙草の匂いをつけてやってきたのは西条である。
「こんにちわでちゅ、しゃいじょう(西条)しゃん」
「ま、こんな格好だが食事に付き合ってもらおうじゃないか。どうだい御二人さん」
二人の口から御付き合いしますと答えが出たのは夕日が完全に落ちてからであった。
-FIN-
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のえる様、『昨日からの贈り物』の設定を勝手ながらお借り致しました。
御許し頂ければ幸いです。
今までの
コメント:
- 許すも何も元々パクったの俺だし・・・・・・・しくしく。まあ設定をトンさんに使ってもらえるなんて光栄ですよ。 (来栖川のえる)
- 変わりばえしないコメントですが、凄い良かったです。 (AS)
- うっわあ〜〜〜〜〜・・・・
こういうお話でしたか。
題名からは想像つかなかった。
なんか、美神さんがすっごい良かったです。
まじ、これだと続きを書くのは難しいだろうけど
出来れば是非この後の食事や事務所に戻ったあと、
そして翌日横島君に会ったときの美神さんの反応なんかを書いてほしいです。 (かいぜる)
- 美神と西条の互いの呼び名は「令子ちゃん」と「西条さん」だと思います。それとも今回の美神は「お兄ちゃん」にトコトン甘えようとしていたのかな?
あと、「しゃいじょうしゃん」はヤリ過ぎですね。彼女の幼児訛りは語尾「でちゅ」のみにしか適用されず、言い回しがやや子供臭かっただけで基本的には普通に喋っていた筈です。まあ、ちゃんと「さん」付けで名前が呼べるようになったのは嬉しいんですが(笑)。
さて、この「墓参」もの、果たして展開予想の一ジャンルとして定着するか? (Iholi)
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