ザ・グレート・展開予測ショー

ミットナイト・ダンディ(その六)


投稿者名:ツナさん
投稿日時:(01/ 4/ 8)

 水の香りは済んでいた。春風に流れる淀みない川の匂いは、その場に漂うプレッシャーに対してやさしかった。
 そして唐巣一行は大岩の並ぶ川原を踏みしめるように歩いていく。
 先行する身軽なピートは岩並を軽々飛ぶように歩いていくが、唐巣、横島はともかく水野やおキヌちゃんには高低の差が大きいこの岩並はきつい。
 やはり普通に歩くよりは格段に遅くなってしまう。
 それでもあまり遅くならないようにと時折男たちが手を差し伸べ順調に進んでいく。
「変わらない、あの時と・・・」
明日美のつぶやきが、一同の気を引き締めさせる。

 ここで話は昨日の夜に戻る。
 メガネをあげながら食い入るようにディスプレイを見る唐巣の姿があった。
「・・・多摩・・・多摩湖に流れ込む支流・・・これだ、・・・っと、えーと・・・」
次々にウィンドウが開かれていく。
「・・・これか。このキャンプ場周辺で起きた心霊事件を洗ってみよう・・・」
データでは面白い事がわかった。
 この周辺域はかつて隠れキリスト教徒の集落や戦の敗者たちの落人集落があったらしいこと。そして河童集落の存在。
 またキシリシタンや落人の集落が点在するだけあり、安土桃山終期から江戸初期にかけてたびたび山狩りがあり、その度に大量殺戮があったという事実。
 そしてそれを慰めるために多くの地蔵尊が立てられたと言うこと。
 事件に関する要因は十分ある。
 非業な死を迎えた魂は地に残る。
 残った魂は地蔵尊を墓標代わりにしてそこで眠りにつく。
 そして眠りにつきながらも同じように非業の死を遂げた魂を強く引き寄せるのだ。 
 そしてより怨念を強めた魂たちは時に生者すら引き寄せ、道ずれにしようと常に隙をうかがっている。
 そうすることで自らの怨念を少しでも和らげようとするのだ、と言う。 
 河童達がこの地に住み始めたのはそれ以前かららしい。人間たちがさまざまな事件を起こしても移り住まなかったのはおそらくこのを通る大陸からの地脈のためだろう。
 神魔に近い彼らにとって地球のエネルギーの流れである地脈の周辺はかなり住み良い土地なのだろう。また河童たちがいるおかげで、心霊被害がある程度は抑えられているようだ。 
「しかし、それだけではないはずだ。・・・ここ20年間、このキャンプ場と地蔵尊の周辺では実に13件もの死亡事故が発生している。本来このような場所は人はそれほど集まらないはずなんだが。なぜか大きな地元誌にもほとんどといっていいほど事件に関する記事がない。噂にすらなっている様子がない・・・」
唐巣は事の異様さに首をひねる。
「なぜだ・・・まるでで誰かが口封じをしているような・・・。上役が口封じをしたところで話は必ず漏れるものだ・・・。地元衆だってこれだけの事件が多発すれば手を打つはずだ。それが損につながるとしても」
さらにキーボードをたたきながら、考えを進める。
「広域に渡る人の思考に影響を与えるほど強力な念波を発する霊達なのか・・・。
 しかしそんな話は聞いたことがない、もしそうだとしたら被害はより多く、より甚大なものになる。・・・そうだ、被害者たちの関係を当たって見よう。被害者同士に関係があれば話は変わってくる」
残り少ない冷めたミルクを飲み干し、更なる作業に取り掛かる。
 そしてそれから数時間後、唐巣はあるひとつの仮定を導き出したが、その時は確証はもてなかった。

 続く
 

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