黒い呪いと天使の笛の音(10)
投稿者名:AS
投稿日時:(01/ 4/ 7)
「おおーー! これは予想も出来なかった展開です!」
盛り上げる為とはいえ、過剰なテンションのナレーションが、会場に響き渡る。
ザワッ
その声に引っ張られるかの様に、会場に詰めかけている者達の目が、一つの結界で繰り広げられる、『決闘』に注がれた。
「レベルの違いを見せつけると思われた伊達雪之丞選手が何と! たった一発で吹き飛ばされてしまいました!」
やたらと説明的な、しかし、観る者の関心を集めるには、なかなか効果のあるナレーションである。
更に、別の効果を狙ってか、実況席の男は隣の解説席に座る金髪の男に話を・・・
「では解説のピ・・・」
「うむ! とくと聞くのじゃぞ!」
金髪の男に話をふるはずが、突然割り込んで来た、深みのある声に阻止される。
実況の男が、頭を抱えるのも気にせずに、声の主は意気揚々と喋り始めた。
「あの娘っ子はじゃなー・・・」
声の主が気分良く説明を始める中・・・観客の半分は、別の試合に視線を注ぎ始めた・・・
「右手にのみ霊力をー・・・」
ー黒い呪いと天使の笛の音(10)ー
ややスローな解説の声の流れる中、注目の試合は新たな局面に突入していた。
「行くよっっ!!」
「くっ!」
(あの右はヤバイーー!!)
ドガアアァッ!!!
経験から(先程もらった一発も含めて)相手の『右』に、脅威を感じた雪之丞は、攻撃をかわすと、大きく飛びずさって間合いをとった。
(ちい・・・っ!)
間合いをとり、相手の女・・・一文字魔理を見据え、雪之丞は歯をきしませた。
(この俺が・・・数多くの実戦・・・その中には中級、上級の魔族との戦いも含めて、命のやり取りを経験して来たこの俺が、あんなヒヨッコ相手に・・・!)
経験からの判断なのだから、決して間違ってはいない・・・そう判っていても、自分が逃げの一手に出たのは、雪之丞には認め難い事だった。
(野郎・・・)
すぐにでも、このお返しを・・・と思っても、雪之丞は動けなかった。
(・・・そうだな・・・今は動くよりも・・・)
一文字への警戒は怠らず、『右手』の分析を始める。
(あの右手・・・以前のアイツの霊波刀に似てやがるが・・・)
雪之丞が動きを止めたのに合わせ、一文字も雪之丞を見据え、足を止めた。
(さすが・・・こんな早くに切り札使わせただけでもすげぇのに、もう打つ手を考えつつある・・)
一筋の汗が一文字の頬から滑り落ちた。
(でもね・・・あたしは頭わるいんだよ!)
「!」
一文字からのプレッシャーが強まったのを感じ、雪之丞も構えを取る。
「オラァーーーーー!!!」
闘いが再開され、一文字が右手をふるう。
「チイッ!」
雪之丞はその右手のタイミングを計り、霊力を込めた蹴りを・・・
ガシイイィッ!!
雪之丞の蹴りと、一文字の右のグローブがぶつかりあい、霊気が
火花の様に散らされていく。
グ、ググ・・・!
「く・・・」
「ウ、オオオーーッ!!」
「! うわっ!」
一文字が気合いを発した次の瞬間、雪之丞の身体が宙を舞った。
「くそっ!」
バシュウッ!
空中で身をひねり、落下時に追撃を仕掛けようとした一文字に、霊波を放ち、足を止める。
「ちぇ! やっぱそんな甘く無いか。」
「・・・・・・」
二人は再び、距離を取って、動きを止めた。
「はーーっ・・・! 息つく間も無いっすねー。」
試合を観ていた現役GSの二人・・・その内の一人が感嘆の声を漏らした。
「・・・・・・」
もう一方の女性は、試合から目を離さずに、押し黙っている。
「それにしても凄えなー、まさか雪之丞と互角に・・・」
「互角じゃ無い・・・」
「へ?」
突然返って来た返答に、片方が間の抜けた声を上げる。
「そ、そうすかー? どう見ても一文字さん、雪之丞と互角に・・・」
その声に、女性は首を振って、答えた。
「互角じゃ無いわ・・・『今の』あの娘の攻撃力は完全に雪之丞を上回っている。」
「!?」
予想外の言葉に思わず反論しようとするが、先程雪之丞が競り負け、宙を舞ったのを思い出し、口を閉ざす。
「惜しいけど、勝負はもう見えてるわ・・・」
その言葉に、閉ざした口を開いて尋ねる。
「じ、じゃあもしかして、一文字さんの・・・」
女性は一息ついて、その言葉の後を続けた。
「負けよ。」
「なるほど、な・・・そういう事か・・・おい!」
突然、雪之丞が一文字に声をかけた。
「・・・何さ?」
唐突に声をかけられ、やや動揺しながら、返事を返す。
「ギブアップしな・・・もうてめえの勝ちはねぇ。」
「ーーー!!」
予想もしなかった言葉に、一文字は一瞬呆然とし・・・次の瞬間、雪之丞を睨みつけた。
そして、ひとつ、息を吐き・・・
「そういうセリフはおねんねした奴に言いな!!」
一気に頭に血を昇らせて、飛び出す。
そして、距離を詰めて、右手をー・・・
ガシイイィッ!!
「ーーー!!? え・・・?」
一文字は目の前の光景に、我が眼を疑った。
「ど、どうして・・・」
一文字の『右拳』は、雪之丞の『左手』に完全に抑え込まれていた。
ス・・・
雪之丞は右手を広げて・・・一文字の顔の少し手前まで近づけた。
そして、一言。
「まだやんのか?」
一文字は首を振った。
「今回は・・・負けだよ。」
一文字がその一言を告げると、雪之丞の右手が高く上げられた。
『勝者、伊達雪之丞!』
その名前が会場に響き渡ると、観客席、結界の外からいくつかの声が・・・
「ああ、俺の一文字さんがー・・・」
「でも良くやった方よ・・・それに、もしまだ続けたりなんかしたら・・・」
「?」
「顔に傷がつくどころか・・・命に関わってたわ。」
「えー!?」
その声に、ややうんざりとしながらも、説明を続ける。
「横島君が最初に、あの何たらソーサーを使った時にー・・・」
「サイキック・ソーサー・・・」
ビシ!
「余計な口挟まんでいい! あん時全身の霊力を集めて、堅い盾を創ったでしょ? あのグローブは『ソレ』と同じよ・・・」
横島はその時の事を思い出し、驚きの声を上げる。
「じ、じゃあ、もし・・・」
「あの状態で、まともに雪之丞の攻撃くらったら、良くて病院送り・・・悪ければ・・・」
「・・・・・・!」
その言葉に、横島の顔が青一色になる。
「物凄い破壊力を得るのとひきかえに、防御力をほぼ失う特攻技・・・身を斬らせる、文字通りの『キリフダ』ね。」
「・・・・・・」
「敗因はー・・・右手だけで、攻めのパターンが読みやすいからね、来るとこわかってれば、そこに霊力集中するだけだから・・・どこ行くの?」
その言葉に、ビクッとして、横島は振り返った。
「い、いやー・・・そこまでして勝てなかった一文字さんを慰めて・・・(あわよくば・・・)」
「ふーん(ニッコリ)」
ドカ! バキイッ!! グシャアアァッッ!!!
「こ、ここまで・・・やらんでも・・・(ピクピク)・・・」
「(パンパン!)さっきの俺の一文字さん・・・も込めたから、それに・・・」
言葉を止めて、試合場の方を向く。
そこには、試合を終えた友達に駆け寄る黒髪の少女の姿が・・・
「あんたの出る幕じゃ無いわよ。」
「・・・・・・」
「・・・んだよ・・・?」
「ま、あんまり無様じゃ無いとは言えないけど、おめでとう。」
「あんがとよ。」
コツ、コツ、コツ・・・
「格好良かったわよ。」
「おう。」
「あはは・・・ごめん! 負けちゃったよ・・・」
「(フルフル)謝る事なんて・・・私、感動しました!」
「か、感動・・・ハハ、照れるな・・・つ、次はおキヌちゃんの番だね。」
「はい!」
「おキヌちゃん、頑張れ!」
『はいっっ!!』
「・・・・・・あんた達・・・いつまでカメラいじってんの?」
返事は返らない。
「おキヌちゃんの試合、始まるわよ。」
返事は・・・
『ええーーっ!?』
「た、大変だ! カメラ! 応援旗は!?」
ガシャン!
瞬間が、停まった。
「・・・・・・ああーーーー!!! カ、カ・メ・ラが・・・」
ドサアッ!
「さ、早苗殿ーーーーーー!!?」
「か、勝ったけんノー・・・!」
シーン・・・
「な、何なんじゃろ・・・この孤独感は・・・」
虎は・・・(虎の習性とも言える)・・・孤独さに涙した。
AS「続きです、今回も良い所と悪い所、出来ればお願いします、面白かったら、嬉しいです。」
今までの
コメント:
- 補足、です。 タイガーの話も書きます・・・ (AS)
- 応援旗持参とは・・。
あんがい御祭り好きなメンバーだね! (トンプソン)
- ←忘れ物 (トンプソン)
- 格闘シーンはテンポが良くて緊迫感があるし、解説シーンも理に叶っていて無理が無い。それでいて横島たちのお約束ギャグもきっちり入っていて、原作の雰囲気を損なわないバランスの取れた出来だと思います。
ただ、早苗たちのシーンはもう少しト書きを加えても良かったと思います。三人+カメラが登場しているので。
次回、氷雅×タイガー戦、楽しみにしています。 (Iholi)
- そういえば、タイガー君も戦ってたんですよね(^^;)
最後の台詞が無かったら忘れちゃうほど本編に熱中しちゃいました。
しっかし、雪之上に比べて一文字さんはまだ未熟って事が明らかになってしまう内容でしたね。
これを機にうんと成長してほしいです(というか、多分一気に成長してくれるでしょう)
こんご、このお話が長引いたときにその辺も書いてくださるとうれしいです(というか、是非書いてほしいです) (かいぜる)
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