ザ・グレート・展開予測ショー

ミットナイト・ダンディ(その五)


投稿者名:ツナさん
投稿日時:(01/ 4/ 5)

 水野明日美が四年前の夏、通った雑木の中この道は、今もどことなしか人を誘う『におい』を発しているような気がした。
 古来から人間はその無限にも近い好奇心によって発展してきた。そして未知の恐怖への探求もまた好奇心のひとつである。肝試しとはそんなところから生まれたのに違いない。
 しかしそれは時として取り返しのつかない悲劇を生むことを、彼女は知った。
 そして再び同じ道を、今度はGSと言う霊能者たちと歩いている。
 犯した過ちを償うためか。それともともに死出の旅立ちをするためか。
 一歩一歩この地を踏みしめるたびに、慙愧の念がこみ上げてくる。
 もしもあの時。無理にでも私が皆を止めていたら・・・。
 後悔の念は、今も彼女の顔に刻み込まれている。

 唐巣も彼女の念の強さに気づいていた。
 だからこそ再びこの地を踏ませることを選んだ。
 すべての始まりであり、すべての終わりであり。
 すべての答えは、この地に有る者達だけが知る。 

 先頭を歩くのはピートだった。そのあとを水野と、それを支えるように唐巣が傍らに立つ。そしてその後ろに横島とおキヌちゃんが歩く。
「先生、そろそろ川原に着きますが?」
先頭を歩くピートが水の音を聞きつけたらしく、唐巣に伝える。あたりにうごめく霊気の濃度が著しく高まっている。この先に霊気の溜まり場があることを示していた。風水的に言うと地脈と言う奴である。
 山河の地脈には霊的な存在が集まりやすい。ゆえに不用意に人が近づくとあまりよろしくない事件もたびたび起きる。
「ああ、分かった。このまま進んでくれ。『まだ』危険はない。それより水野くん、先にひとつお聞きしてよろしいかな」
「・・はい」
「あなたを助けたもの、その姿を見たかね?」
「・・・いえ、ただずぶぬれの手に足首をつかまれて引きずり込まれた事しか覚えがないです。・・・手の間に水かきみたいなものがあったかも・・・そんな感じがしたんです」
「そうですか。いや実はこのあたり、昔から河童が住んでいるらしいんですね」
「河童?じゃあ事件の犯人も」
「いや、それは違う。河童は古来、人間や家畜を水に引きずり込んでしまう人とは敵対する化け物と思われがちだけど、本来河童は河川や田の守り神のような存在で、確かにいたずら好きなところはあるが人間に危害を加えるようなまねはしない妖怪なんだ。むしろ時には人を助けてくれる。それと、水野君は奥多摩の出身でしたね?」
「え、ええ」
「君の家系について少々調べさせてもらったんだが、どうもご先祖に河童に近しい、もしくは河童そのものがいたらしい。聞いたことはないかね?」
「・・・亡くなったひいばあちゃんがこんなことを。多摩の川には家族みたいなもんが大勢いる。決して川を汚しちゃならないよ。わしらは皆家族なんだから」
「うん、やはりきちんとは伝わっていないながらも、伝えられていたんだね。君の一族に河童の血が流れていることが。
 おそらく奥多摩の川を守ることが水野君の一族の祖先に与えられた使命だったのだろう。そして河童たちはおそらく将来において川が人間に汚されるであろう事を予見していたんだろう」
「でも先祖が河童なんていわれてもピンとこないんじゃないんすか?」
後ろを歩く横島から質問が飛ぶ。唐巣はそれに答える。
「そうでもないよ。古来から人間と物の怪や神魔が人と契った話は山ほどあるし、そのほとんどに証拠に足る文献が残されている。人間が霊能力を強めたのもそのためだと言う説もある位だからね」
「・・・そうだよな、俺もルシオラと・・。まあそれはともかくとして、その河童とこの件とどういう繋がりがあるというんっすか?」
「もう話してもいいね。彼女のその目の周りの腫瘍、それは彼女自身が作り出しているものだ、と言うことだ」
唐巣は水野のサングラスに手を伸ばす。水野は一瞬抵抗したが、唐巣には何か考えがあるのだろうと、サングラスを外させた。
「ぐ・・・」
さすがの横島でもこれは効いたらしい。一瞬目をそらし、うめきを漏らしかけるがそこは横島、うめきを飲み込むと再び彼女の目をみた。
「私のヒーリングじゃダメなんですか?」
おキヌちゃんが尋ねる。
「こんな話を聞いたことがあるかね。一度火箸でやけどをしたことがある赤ん坊の手に冷たい火箸をさも熱いもののように押し当てる事を繰り返していると、赤ん坊は本当にやけどしたと思い込み、冷たい火箸が押し当てられたその場所にまるで本当にやけどをしたかのように水ぶくれが出来る、と言う話を」
「・・・聞いたことあるようなないような」
「人間の思い込みと言うものはそれだけすさまじいと言うことさ。そして彼女の場合は自らの目に腫瘍がある、これは死んだ仲間たちの怨念に違いない、そして私はこうなって当然だ、とつよく思い込んでしまっている。おそらくヒーリングで一時的に癒えても、再び浮かび上がるだろう。念がある限りね。
 しかし普通は感受性の強い子供ならともかく大人ならまずそれだけでこんな風に症状が出ることはないんだが、彼女の場合はその身に流れる血が強く影響してしまっているようだ。そう、河童の血がね」
「河童の血が?」
水野は自分の両手を見つめながらつぶやくように言う。
「前にも言ったように河童は水神に近しい存在なんだ。当然その霊力はとても強い。中には神魔族に匹敵する河童もいるそうだからね。その血を引いている彼女に霊能力がないわけがないんだ。もっともその血は人間と回りに混ざっていまや数%にも満たないかもしれないけど、それでも普通の人間よりは数倍強いはずだ。現に彼女は霊が見えているはずだ。そうだね?」
「ええ。時々幻聴が聞こえたり人影らしいものを見たことが・・・変な病気かと思ってましたが、そうじゃないんですね?」
「病気・・・。確かに霊能力がない人たちから見れば私たちは精神分裂病か何かに見えるのかもしれないね」
病気と言われて苦笑いを浮かべるしかない一同。
「ごめんなさい、そういうつもりじゃ・・・」
「いやいいんだ。とにかく君のその腫瘍は君の強い思い込みと体内に流れる強いエネルギー、私たちは霊気と呼んでいるが、それによって出来ているものなんだ。
 その思い込みは我々がとやかく言ってもどうすることも出来ない。だから君に真実を見せようと思う」
唐巣はぎゅっと水野の両手を握り締める。
「つらいかもしれないが・・・どうする?」
「・・・行きます。私はすべてを知りたい・・なぜあんなことになったのか・・・」
唐巣の見る水野に目には力強い意思が宿っていた。

今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa