ザ・グレート・展開予測ショー

ミットナイト・ダンディ(その三)


投稿者名:ツナさん
投稿日時:(01/ 4/ 3)

 泣き疲れた水野明日美が長いすでひと時の眠りについた頃。
 唐巣は彼女に毛布をかけてやると、そっと彼女の顔を覗き込み、腫瘍の様子を観察してみた。
 確かに、ひどい腫れようである。膿んではいないようだが、これはかなり痛みを伴うだろう。ただしこれは単なる腫瘍である可能性が高かった。得に霊的な要素が感じ取れないのだ。声が聞こえると言うのも、彼女の心の問題だろう。それさえ解決できればきっとその声も聞こえないはずだ。
「先生、その人はいったい?」
ピートもそのことには気付いていたようで、唐巣に質問をぶつける。
「・・・うん、確かに彼女の顔の腫瘍はただの病気かも知れないね。しかしだからと言ってこのまま放り出してしまうわけにも行かないだろう?」
「しかし、こういうことは医者に任せるのが妥当だと思うのですが」
「ピート、確かに君の言う通りかもしれないけど、私はもう少し彼女の様子を見ようと思っている。少なくとも見捨てるようなことはしないさ。私を頼ってきた時点で彼女は私の依頼人だ。最後まで面倒を見てあげるのが筋だよ。
 それよりピート。明日奥多摩の方へ行って見ようと思っているんだが、君もくるかい?」
「え、彼女の話を信じるのですか?先生は」
「ああ、彼女の話に出てきた地蔵尊を見てこようかと思うんだ。どうも引っかかるんだよね。私も話には聞いたことがあるんだ。そのあたりで何回か同じような落石事故が起こっているってことはね。ひまがなくて見に行っている間はなかったんだが、ちょうどいい機会だと思ってね。どうする、ピート」
「明日は学校も休みですし、先生が行くとおっしゃるなら、僕も行きますけど」
半信半疑と言った感じのピートだったが、付いていくといった。
「わかった。じゃぁ今日は早めに休んでおきなさい。私もすぐ寝る」
「わかりました。で、彼女はどうするんですか?」
「私が見ているよ。君は寝室で休みなさい」
「はい、ではおやすみなさい、先生」
終身の挨拶をして、居住区へ戻っていくピート。
「さて・・・」
唐巣はピートが言ったのを確認すると、教壇の中からノートパソコンを取り出した。そして配線をつなぎ電源を入れると、ICPOのデータバンクにアクセスする。
「奥多摩の落石事故に関する資料を洗いなおしておこう。何かわかるかもしれない」
唐巣が眠りについたのはそれから6時間後のことだった。

 奥多摩の山道を、傷だらけの白いライトバンが走り抜けていく。
 唐巣の教会を昼過ぎに出て、いま丁度2時を回った頃か。向こうには3時ごろまでに着くはずだ。
 運転しているのは唐巣、助手席には水野が乗っていた。ピートは後部座席でおとなしく座っている。実は乗り物酔いがひどいらしく、顔面は蒼白だった。
「大丈夫か、ピート」
「ええ、何とか・・・うぷぅ・・・」
だめらしい。しかし途中止められそうな場所はなく、そのまま車を走らせていた。
「何か感じるかね、水野君」
唐巣は不安げな顔をしている水野明日美にそれとなしに声をかける。
「いえ、別に・・・」
水野ははやり事件のことを思い出したくはないのか、仕切りに頭を振っていた。
「すいませんね。こんなボロ車しか用意できなくて。ゆれるでしょ、大丈夫ですか?」
「え、ええ、乗り物酔いはしないほうなんで。でもピートさんはかなりつらそうですね」
「ぼ、僕はだいじょー・・・うぇ、すいません袋ください・・・」
かなりだめらしい。昼食を半分吐き出しそうになっている。
「仕方ない、少し車をとめて休みましょうか」
唐巣はどこか止まられそうな場所はないか探した。すると少し先にパーキングが目に入った。そこに車をとめる。
「すいません」
ピートがどたどたと車から降りて、側溝のところまでかけて行く。水野も車を降りてピーとの背中を一生懸命さすっている。
「大丈夫ですか?」
「すいません・・・うぇ・・・」
かなり情けない姿のピートである。唐巣は笑ってはいけないとは思いつつもくすくす笑っていた。
「不死身のバンパイアにもとんだ弱点があるものだ」
「笑わないでくださいよ・・ぅぅ、気持ち悪い・・・」
情けない声を出すピート。水野も思わず唐巣に釣られて笑っていた。
「あはは、ごめんなさい、ピートさん」
「ひどいですよ、二人とも」
やっとすききりしたピートが水野に礼を言って車に戻る。
「さて、あと2、30も走れば着くはずだから。もう少し我慢してくれるかな、ピート」
「お気になさらないでください先生、早く行きましょう」
と言いつつも15分後、またピートが苦しみだし、また車をとめて休んだりしていたので、キャンプ場の入り口ついたのはそれから1時間半後、4時を少し回った頃だった。

続く


 

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