ザ・グレート・展開予測ショー

ミットナイト・ダンディ(その2)


投稿者名:ツナさん
投稿日時:(01/ 4/ 1)

 「そう、あれは忘れもしない・・・、4年前の夏、花火の音が街中に響いていた日」

 『水野明日美の回想』
 T物産会計事務局の事務員達は、七月末の連休を利用して奥多摩の人里離れたキャンプ場でキャンプを企画していた。
 企画したのは部長の玉置広二、40歳独身である。風貌は決して良いとは言えなかったが、程よく日焼けした肌とその面倒見のいい性格から、なかなか部下からは人気があった。彼は毎年夏になると、ひまな若い部下を捕まえてはキャンプに連れて行くという習性があった。
 上からの命令ではあまり乗り気でない部下たちもおいそれとは断れず、せっかくの夏ながらとかく用事のなかった事務員9名ほどが、まあ玉置部長の話なら、とキャンプに参加することになっていた。
 そしてキャンプ当日、玉置が探してきたキャンプ場はそれこそ都心から車で約2時間半、それこそ山道という山道を揺られ、さらに歩いて20分という、確かに穴場といえば穴場だが、キャンプ場とは名ばかりでほとんど森を切り開いて一応テントが張れるようにしてあるだけという、まさに何もないところだった。
 しかし近くに川がるのか、川のせせらぎが気持ちよく、ごみごみとした都会から見ればそれこそ天国のように穏やかな場所だと言えた。
 そして水野、玉置達はテントを張り、各自食事を作ったり川辺に釣りに行ったりと各自思い思いの時を過ごし、夜も夜半を過ぎた頃である。
 アルコールも程よく入り、皆が盛り上がってきた頃。
 だれかれともなく肝試しをしないか、と言う話になった。
 皆その話に乗り気になり、それなら、と玉置がキャンプ場周辺の地図を取り出した。
 彼の話によるとこのキャンプ場から南に抜けるあぜ道から川原に抜け、さらにその川原沿いを200メートルほど行くと、そこに古くからある祠らしきものがあると言う。そこからさらに北に道をたどると公道に出て、道なりに歩けばキャンプ場へ入る道へ戻ってこれると言う。
 で祠にはひとつお地蔵様があるから、その上に百円玉を置いてくるってのはどうだ、と玉置は提案した。確かに肝試しにはもってこいである。
 皆は面白がって賛成した。しかし水野には何か引っかかるものが有ったらしい。
 昔曾祖母に聞かされた話の中に確か奥多摩のお地蔵さまについての話があったような気がしたのだ。あまり良くない話だったのでうっすらとしか覚えていなかったが。 
 それとなく遠まわしにやめたほうがいいと言ったが、酒の席のことである、どうせ自分が怖いからだろう、と一笑にふされた。
 そして肝試しが始まった。二人一組で行くことになっていて、初めに玉置と彼の意中の人らしい御局さまの湯木女史、続いて同僚たちが3組、時間を置いて出て行った。
 そして最後の組が水野と同僚の山口ともえの組になった。ともえは男勝りの熱い女傑で、怪談話にはまったく恐怖を見せない。どんなに恐ろしげなところでも顔色一つ変えず平然と歩いていくことから、別名チタン・ハートと呼ばれていた。
 水野は彼女の陰に隠れるように、夜の山道を、そして川辺を歩いていた。
 そして問題の祠に指しかかろうとした、その時。
 そこで目にしたのはとても口では言い表せないほどの、ひどい有様だった。
 なんと先行した8人が8人、すべて巨人に鈍器で脳天に一撃を食らったかのごとく頭から脳漿を飛び散らせ倒れていたのだ。山田はその光景を見てもまるで引き込まれるかのように地蔵へ向けて歩いていく。しかし彼女には何も言えない。
 こういう光景では一時、悲鳴すら上がらない。
 そして彼女の上から何か崩れる音がした。同時に声が聞こえた。汝ら、われらが眠りを妨げし者か。
 彼女は地蔵を見た。月明かりに照らされた出来たその影から、声が聞こえてくるような気がした。
 彼女は曾祖母の話を思い出した。
「山奥の川辺の地蔵さんには意味なく近づくなよ、地蔵さんさぁ、川で無念に死んだもんの眠りを見守ってるんだよ。からかい半分に死人の眠りをさましゃ、罰があたるからよ」
彼女はその意味を理解した。しかしもう手遅れだったらしい。先に行っていた山田がすでに死んでいた。・・・あ、私も死ぬんだ。と彼女は思った。しかし彼女はなぜか川の中へ引きずり込まれた。
 
「私が目を覚ましたのはそれから4日後のことでした。1キロほど流されたらしく、体中傷だらけでしたが、命に別状はありませんでした。でも目の周りの腫れ物だけは一向に引かず、そのうちこんな風に・・・。部長たちの一件はがけ崩れと言うことで処理されました。私も何度か警察のほうでいろいろと証言しましたが信じてもらえず、そのうち私が犯人じゃないのか、おまえは何か知っているじゃないかって・・・。結局証拠不十分で釈放されましたけど。会社でも顔のこととあいまっていろいろと悪口を言われて・・・。事件から半年でやめました。しばらくは自宅でおとなしくしていたんですが今度は腫瘍がしゃべってるような気がして、怖くってお医者さん何件も回ったんですけどどこもいいお返事をくれなくって、悪いものにでも憑かれたんだろうっておばあちゃんにお払いの人紹介してもらったんですけど、関係ない、わからない、金のない奴なんか知らないって。
 いろいろやってみたんです、でも全部だめで・・・。怖くって、悲しくって。
 そんなときにこちらのお話を聞いたんです。唐巣神父ならきっと何とかしてくださると・・・」
「・・・話はわかりました」
唐巣はそういってハンカチを差し出した。そのハンカチにはクロスが刻まれている。
「もう、苦しまなくていいのです。あなたは神の御許で懺悔なさった」   
唐巣は水野の肩に手を置き、やさしく声をかける。
「私があなたを救ってみせます。・・ただ、今はお泣きなさい。涙は心の傷を癒してくれる」
「・・・う、うわぁぁぁぁぁあああ」
水野はその場で泣き崩れた。唐巣は彼女の顔をそっと胸に抱いた。

続く 

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