ザ・グレート・展開予測ショー

史上最大の大脱走、走れシロ!!


投稿者名:トンプソン
投稿日時:(01/ 3/30)

暗い室内にスクリーンが用意され、男達がひしめいている。
「此方の写真をご覧下さい。超貴重種、メスです」
スクリーンにシロのあどけない姿が映し出された時、会場内にどよめきが走った。
「今のところ健康状態良好ですが、一般のペットよろしく、予防接種は必須です」
満場一致で頷く。この男たちに白衣姿もチラホラといる。
「そして、飼い主の美神氏からもう一つの情報、新ペットタマモ、狐種のメスです」
かちと、スクリーンが移行し、油揚げを食べている写真が映し出される。
「この子はシロよりも大分知恵が働きます。奇襲で予防接種が一番であるかと」
対応は出来てるのか?という質問が出ると、
「さる筋の方に依頼を頼みました、我々はシロの捕獲になりそうです御協力を」
会場にいた男たちは皆頷く。
「あのー、山村さん、料金は定額しか払わないわよ?」
美神が呆れ顔で確認すると、
「あの貴重種を守らなくて、何が動物医師だーーーー」
男達のどよめきが会場内にこだました。
「・・・・・・」
苦笑も凍る美神であった。
時を同じくして、何時もの公園でナンパに失敗した横島がベンチでへばっている。
「あー、桜よ桜、どうしてお前は散るんだい?」
桜だからだ。散歩の相手シロは犬相手に会話をしている。(犬語翻訳、トンプソン)
『う、コロ殿はもうかの魔の手にかかったで御座るか?』
『そうなんだワン。痛かったワン』
『人間とは勝手な生き物で御座るゆえ』
『シロ様はまだやられてないのかワン?』
『そうで御座るよ、今年は免除で御座ろうか?』
『そんな事は無いと思うワン、ボクは毎年やってるワン』
『う!』
『ボクのお兄ちゃんが街角で刺客達がこの街に集まってたのを見てるワン』
犬たちの刺客とは、動物病院の先生達の事であろう。
『ま、不味いで御座る、ここは逃げるが一番でござる!』
『ボクもそう思うワン、急いで逃げるワン!』
逃げようとするシロをいち早く察した横島が、
「シロ、お手!」
獣の性と言うべきか、シロに空白の時間が生じて、気付いた時には、
『ワン、ワン!!』
横島の差し出した手に自分の手を乗せていた。
「帰るぞ、シロ」
「い、嫌でござるぅーーーそ、そうだ拙者、山に戻りたくなったで御座る」
「そうか?今日はオキヌちゃんが骨付き肉を買ってくるって言ってたけど?」
喜んで帰るシロを見た犬のコロちゃんは、
『あぁ、シロ様も人間の毒牙に・・』
憐れんでいたとか。
夢の中まで骨付き肉を持っていったシロであったが、次の朝、
「は!しまったで御座る」
「あん?何が」
寝ぼけ眼のタマモが聞き返す。
「タマモ、このあたりに何時もと違う匂いを感じないで御座るらぬか?」
くんくんと、鼻を使う。
「そうだね・・なんか消毒液とかそんな匂いがするね」
「不味いで御座るよ」
「だから何が?」
「これは、陰謀でござる、健康な拙者らに針を打ちこむ奴等が来てるで御座る」
「なんだって?、落ちついて説明してご覧」
「春になると、人間は・・・」
自分たちの体に何やらの液を打ちこんで、痛いと泣くのを楽しんでいるでござる、
動物の主観から見る予防接種は正に拷問なのであろうか。
「しかも、針を打たれた二三日は元気が失われるで御座るよ!」
屋根裏に美神でも横島でもない、男の足音が聞こえてくると、二人は身を寄せ合った。
「き、来たでござるっぅぅぅぅ!」
「そ、それは大変ね。逃げないと!」
窓を開けて、タマモが、
「ほら、しっかり捕まって!先ずは外に」
飛行術を使い始めたその瞬間であった。どこぞから、音速で風を斬る音が耳に入る。
「ぎゃ!」
タマモの可愛いお尻になにやらが突き刺さった。鉄砲の弾の替わりにワクチン針が。
「し、しまった・・シロ、あんただけでも・・逃げて・・」
睡眠剤も混ざっていたのだろう。呂律が廻らなくなった。
事務所の外では、
「タマモ対策の奇襲ってコレ?」
「そうです!」
「成功したみたいだけど、いったい誰が撃ったのよ?」
「それは言えません。漏らしたら命がありませんからね。超A級狙撃手に頼みました」
「その人ってもしかして、ゴル・・」
「言っては駄目です!、おお、確認のメールが入りました。『完了した』 と」
「本当に定額料金でいいの?」
「当然です」
ちなみに狙撃手の報酬額は20万ドルである。
屋根裏でどたばたと荒そう音が聞こえ、静かになるまでに二分弱てあったか。
失敗かな、と呟いた動物病院の先生が、懐からトランシーバーを出して、
『CQCQ、屋根裏班、応答を願う。こちら、山村大本営』
『屋根裏班より、大本営へ。結界石の奪取には成功、成功を祈る』
よくやったと褒めてから、屋根裏班の男はオキヌちゃんから治療をうけていた。
正面玄関にいる美神達の前にシロは現れなかった。
「裏口から逃げたか」
「裏口?私の事務所は道に面した門しか無いわよ?」
「甘いですね。美神さん。子犬が出入り出来そうな穴が御隣のビルに通じてますぞ」
流石は動物医師、そこいら辺の地理は頭に叩き込んである。再度トランシーバーで、
『CQCQ、こちら大本営、戸名理(となり)ビル待機班、そちらに向かった模様』
『こちら戸名理ビル待機班、現在シロらしき獣確認、追跡を開始します!』
『そこから右の交叉点A地点にも実働隊がいる、そちらに追いこむように!成功を祈る』
こやつら、何処まで本気なのか、それとも遊んでいるのか、
「結界石を取られたのは誤算でござる。どうすればいいで?」
考えている暇は無かった。
「シロ、発見しました。さぁ大人しく、注射をうたれたちょうだい」
大人しくするわけも無い。
「嫌でござるー」
犬姿であれば、脚力はチーターにも勝る。ワンワン鳴きながら、外に出る。
外に出て、左にも白衣の男がいたので、右に向かう。
「たしか、この先は交叉点、で右に廻ると!そうだ厄珍堂があるで御座る!」
人間の姿になったほうが、攻撃パターンは増えるのでなんとしても結界石は欲しい。
だが、その交叉点A地点には5人はいるであろう動物医師が待機していた。
シロはその姿を確認したが、A地点の医師団はまだ見つけていない。
「ま、不味いでござる!!」
と、其処に一台のトラックが赤信号で止まる。
「神の助け!!」
ピョンとトラックの荷台に飛び乗る。幸い身を隠す藁もあった。
「やったで御座る。これに乗って山に向かうで御座る。
トラックは右折して、そこの交叉点は逃げる事が出来たように思えたが、
「おい、あのトラックに犬の匂いがするぞ!、待てそのトラック!」
なんという嗅覚の持ち主であろうか。しかも次の交叉点も赤信号で止まる。
「まず!」
医師団が来る前に、トラックから飛び降りると、A地点5人の医師団は追ってくるが、
「人間の足で拙者を追う事なんぞ無理で御座る、おっ!厄珍堂でござる!」
ひらと、建物の中に入る、だが、
『CQCQ,こちらA地点待機班、只今厄珍堂に潜伏!』
『こちら、厄珍堂、変装待機班、了解!』
何も知らずに中に入るシロだ。
「あいや?令子ちゃんのとこのワンコロあるか?」
『ワンワンワンワン』
犬じゃないもん!といっているらしい。
「どうしたあるか?あぁ、結界石がほしいあるか?」
ここで通じた事に違和感を覚えたらしい。
「結界石はない有るが・・」
厄珍の目が怪しく光ると、
「予防接種液ならあるあるよー!」
なんと、変装用の御面をはがす。小さいが決して厄珍ではない!
「わお!」
取り押さえようとする魔の手を渾身の力で振り切って、住居区に入る。
あまり掃除をしない内部で匂いにクラクラするが、スピードも手伝って、
裏口まで逃げる事に成功した。
「あ、相手を見縊ってたで御座る」
それから、前方からA交叉点待機班、後方は戸名理ビル待機班の医師団がやってくる。
「ああああーーーー」
パニくるシロの目の前には工事中でマンホールが開いていた。
「南無三!」
マンホールの中に入る、この中なら追っては来ないとの算段。だしかし!
『CQCQ,こちら厄珍堂傍マンホール外待機班、シロを穴の中につれこむ事に成功!』
なんと工事をしている男たちも医師団の仲間であった。
「ふぅ、ここまでくれば安全で御座る」
しばしの休憩と少し横になろうとするが、ザブザブと水を歩く二本足が。
「ま、まさか!」
そのまさかであった。防護服を着た一団がマンホールの中に待機していたのだ!」
「し、しつこい!」
しかし、暗がりで有る事と、小柄なシロの方が地下戦に持ちこむ方が有利だ。
匂いを辿り、上に下にと歩むが、
「ち、ここも柵があるで御座る」
何故か町内をから外に出られないのだ。6回目の柵にぶち当たった時に気付いた。
「まさか、奴等は地下までもバリケードを!」
そうだ。それらの柵はつい昨日用意された物だったのだ。
何度か人間に当たったが暗がりが奏して逃げる事に成功しつつあるが、
「とにかく、外に出ないと駄目で御座る!」
そうは言ってもなかなか外に出てるマンホールが見つからなかったが、
「あ!見つけたで御座る!」
ようやく見つかったマンホールから外に出ると、其処は昨日立ち寄った公園であった。
地面に手を出して、外に出ようとしたその瞬間、手に鋭い痛みを感じた。
「痛ッ、小石でも当たったで御座るか!」
その痛みは益々増える。
「ま、まさか!」
おそるおそる、外を見ると、
「チェックメイトだ、シロ君!!」
満面の笑みでシロの腕に予防接種する山村動物病院委員長であった。
「え、え、え、!!!」
「実は、マンホールの蓋はここと君が入った所しか開いてなかったのだよ」
注射が終わると、首に結界石が戻されて、
「どう?これなら大人しく注射されたほうがよかったんじゃない?」
美神が言うと、
「・・そうだったで、ござる・・それに注射ってそんなに・・痛くなかったで御座る」
「よしよし、少しだけ大きくなったのね」
と言った後に大声で、
「やっぱり痛かったでござるーー!!」
大泣きのシロであった。

-ちゃん・ちゃん!-


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