ザ・グレート・展開予測ショー

黒い呪いと天使の笛の音(7)


投稿者名:AS
投稿日時:(01/ 3/28)

そこは、暗い部屋だった。
陽が差し込む筈の窓は カーテンに隠れ・・・明かりとして使っているのは一本の蝋燭のみ・・・

「・・・・・・ブツブツ・・・」

蝋燭がほんの少しだけ、暗い部屋を明るく照らす・・・
その僅かばかりの明るさを『少年』は『鏡』が『あの女』を映せる様に・・・それだけの為に使っていた。

「・・・・・・さあ・・・現れろ!」

少年の声と共に、鏡の中に一人の『少女』の姿が映し出された。

「さあ・・・『ソレ』をこちらへ・・・」

ズ・・・ズズ・・・

少年の呼びかけに応じたかの様に、鏡の中の少女の手に握られていた笛が、鏡の中から この世界へ現れる。

「よし・・・これで・・・ふふ・・・ははは!」

笛を握り締め、少年が立ち上がる・・・すると部屋を照らしていた蝋燭の火が、一瞬にして、僅かな余韻も残さずに掻き消えた。

「さて・・・あとはこちらの鏡に・・・フ、フフフ・・・」

『笛』と『鏡』を 手にした少年は、笑いながら、暗い部屋を後にした。



ー黒い呪いと天使の笛の音(7)ー


ザワザワ、ザワザワ・・・
「さすがに静かになったわねー」
毎年行われる GS試験の舞台となる会場に到着した『美神令子除霊事務所の面々。
「うー・・・頭痛いー・・・でござ・・・うぅ・・・」
「あ、あたしも・・・」
先日の激しい闘いも 全て結界の中で行われた為、会場にはさしたる変化は見られない。

「ほら! しゃんとしなさい! 昨日応援出来なかった分きちんと応援すんのよ!」
前祝いと称した騒ぎの後、二日酔いに泣く(鳴く?)二人(二匹?)に、気合いを入れる声が飛ぶ。
『・・・・・・』
その声もさしたる効果は無く・・・依然として頭を押さえて青い顔のままの二人・・・
ピク・・・
そんな二人を見て・・・声の主は顔に青筋を浮かべ、ニッコリと微笑んだ・・・
「ニコニコ・・・あんた達そんなに麦が好き? それとも生の・・・」
「いっしょーけんめーおーえんするでござるっ!」
「右に同じっ!」
「そーゆーわけで見やすい席を確保しに行くでござる!」
「右に同じっ!」
今度の気合いを入れる声は 二人に効果ばっちりだったらしく、途端に元気良く走りだす。
「あ! 待って! ・・・行っちゃった・・・」
即決して呼び止める間も無く走り去った二人に、少女は呆然と、立ち尽くしていた。

「さ、私達はゆっくり行きましょうか。」
「そだな・・・」
「あ、待って、美神さん、早苗お姉ちゃん・・・」

既に姿も見えなくなった二人の後を、ゆっくりとした足取りで、
進む一行。

その後を、大きな荷物を背負った男が、更にゆっくりと歩いている。

「・・・・・・ゼェ・・・ゼェ・・・何で五人分も・・・」
「何してんの! 早くしなさい!」
「・・・・・・」

彼は胸中で呟いた。

(・・・・・・・・・・・・オニ・・・・・・・・・・・・・)



「さあ! 泣いて笑っても今日の試験で全てが・・・」
「僕は・・・どうしてここに・・・?」
「今日はワシが長年かけて作った自伝を・・・」
「・・・ドクター・カオス・・・それ家計簿・・・」


「相変わらずねー・・・そんなに人材少ないのかしら・・・」
昨日と変わらぬ実況(漫才?)を繰り返す解説席の顔ぶれに、顔をしかめる美神。
「まあ・・・オカルト絡みに進んで関わる奴の方が変すからねー・・・」
「あんた・・・自分の事完全に棚に上げてんでしょ・・・?」

こちらも相変わらずな二人・・・一方・・・

「さあ! 昨日の分まで! 今日はおキヌちゃんの晴れ姿をぜーんぶフィルムに収めるだ!」
そう言って早苗は荷物の中からカメラを取り出す。
「す、凄いカメラでござるな!」
「大きい・・・」
二人の反応に気を良くする早苗。
「シロちゃん達も触ってみるけ?」
早苗の言葉に目を輝かすシロ。
「良いんでござるかっっ!!?」
「もちろんだべ! ただし壊さんように頼むだ。」
シロはキッ! と真横を向いて・・・
「タマモ! 拙者からでござる! 異存は無いでござるな!?」
「はいはい・・・」
熱い眼差しで こちらを見据えながらのシロの問いに、冷めた返事を返すタマモ。
二人のやりとりを見た早苗は、カメラをシロに手渡す。

「はい、シロちゃん」
「うわーー! 見れば見るほど不思議なカメラでござるーー!」

好奇心いっぱいの目で、早苗のカメラを手に、はしゃぐシロ。
それを横目に・・・

「あれ・・・もしかしなくても、ものすごーーーく、昔のカメラなんじゃ・・・」

冷静に品定めするタマモの目の前で・・・

「す、凄いでござるっ! こんなカメラ初めて見たでござる!」
「へへ・・・それ程でも・・・」

シロは目をキラキラさせたまま・・・子供の様にはしゃぎ、早苗はそんなシロの喜び様を見て、顔を緩ませている。

タマモはそんな二人の様子に・・・

「・・・・・・ハァァァーーー・・・・・・」

深い・・・深いため息をついた。



観客席の面々が、試合と余り関係無い事で盛り上がっている一方・・・

「あ! 一文字さーん!」
友達の姿に気付き、声をかけるおキヌ。
「・・・・・・」
しかし一文字はその声に応えようとしない・・・
「? 一文字さん・・・?」
側まで近寄ったおキヌが、もう一度声をかける。
「・・・・・・」
それでも一文字は反応しない・・・
不安になったおキヌは、思わず声を荒げた。
「一文字さん!?」
「! うわあっ!? ・・・って・・・何だ・・・おキヌちゃんか・・・おどかさないでくれよ・・・ああ、びっくりした。」
そんな一文字の言葉にムッとするおキヌ。
「びっくりしたのはこっちです! こんな近くで声をかけても返事してくれないし・・・!」
そう言ってうつむくおキヌ。
一文字は慌てて・・・
「ああ、ごめんごめん・・・ちょっと集中してたんだ。」
「集中?」
率直なおキヌの問いに、一文字は少し苦い顔で答えた。
「そ、集中・・・次の相手との試合がどうなるかにね。」
「次の試合がどうなるか考えてたんですか?」
「うん・・・まあ・・・」
「どうだったんですか?」
「・・・・・・」

予想した通りのおキヌの問いに、一文字はますます顔をしかめた。

「・・・・・・八回やって・・・八回とも負け・・・」
「ええぇっっ!!?」

予想もしなかった一文字の答えに、顔をしかめるおキヌ。

「い、一文字さんが!? ・・・そんな・・・」
おキヌの反応に、今度は苦笑いを浮かべる一文字。
「・・・相手があれだから・・・ね。」
そう言って一文字が視線を巡らせた先に、おキヌも・・・
「え・・・えええーーーーーー!!!」
「ま、そういう事・・・」

一文字は驚きで固まったおキヌをよそに、再び目を閉じた。

そして、固まり続けるおキヌの視線の先には・・・

アシュタロスとの闘いなどで、共に戦った、非公認とはいえ日本でも指折りのGS・・・『伊達雪之丞』が居た・・・


「ふーん・・・あの子と雪之丞か、・・・結構面白くなるかもよ。」
様子を見ていた美神が呟く。
「あーのーやーろー・・・! もしも俺の一文字さんに傷一つでも・・・ブッ!!?」
「経験から言えば、雪之丞の完勝・・・あの子がどれだけ伸びてるか・・・ね。」
「・・・・・・(ドクドク)」


「そんな・・・一文字さんと雪之丞さんが・・・」
いまだ固まったままのおキヌに、一文字は片目を開け・・・声をかけた。
「おキヌちゃん、今は自分の相手を気にした方がいいよ。」
「え?」
突然声をかけられた為か、一文字の言葉を把握しきれないおキヌ。
「おキヌちゃんの相手だって・・・下手したらこっちより厄介かもよ・・・」
そう言われたおキヌがきょとんとしていると、突然後ろから肩を叩かれる。
「お手柔らかに・・・ね。」
そう言って『彼女』は微笑み、立ち去った。
「・・・・・・え・・・えええぇぇーーーーーーー!!!?」
再び悲鳴を上げて固まるおキヌ・・・
声をかけた『彼女』は・・・以前対抗戦で、自分を負かした相手『矢神桔梗』だった。

「・・・・・・」

連続して襲って来たショックにおキヌは・・・

「・・・・・・」

固まっていた。



おキヌが固まっているその時・・・同じ会場の中で・・・
「さて・・・と、チャンスはあいつが笛を手放した時・・・つまり、試合が終わった時・・・ふふふ・・・」
良からぬ事を胸に・・・少年が目を光らせていた。

『少年』はおキヌを見据え、禍禍しい鏡を手に、呟く。

「懲らしめてあげるよ・・・この呪いで・・・」

ーと。




AS「気持ちが落ち込んでいたのですが、いつまでも落ち込んでいられないので、続きを書きました・・・来年まで色々勉強したいので、良くない所とかの感想お願いします・・・長文すみません。」





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