ザ・グレート・展開予測ショー

吸血奇談 幸森の復讐(5)


投稿者名:トンプソン
投稿日時:(01/ 3/27)

二人が教会に入ろうと足を入れたときに闇の空気がうねった。そして、
「おまちしていましたよ。唐巣神父、西条さん」
ピートが現れた。
「おお!ピート君、体の方は大丈夫ですか?」
嬉しそうに唐巣神父が尋ねると、明るい顔を作って、
「はい。横島さんがくれた文殊を使って一日中隠れている事が出来ましたが」
霊力を使い続けたので少しバテたかな?と苦笑する。そして、
「それ以上にこれをずっと持っている方がきつかったですね。ハーフの僕には」
西条に手渡すのは銀の銃だ。
「有りがたい!これがあれば、あのルビーと言う奴とも対等にいける!」
ちいさな武器だが手にして更に自信をとりもどせたようだ。
「無事でなによりです。外に横島君がいますかれのそばにいてください」
「はい、唐巣神父、でお二人だけで大丈夫ですか?」
いらぬ質問だと二人は軽く笑う。
中に入ると何匹かの吸血式ゾンビーが現れるが、
「神父、ここは僕が!」
1歩前に出てジャスティスを縦横無尽振るい、逃げ腰の奴には銃を使う。
油断は無かった。物の2分で低級魔物を倒したようだ。
「アーメン」
神父が憐れな者達に十字を斬った時に、建物の向かいにある階段から足音が聞こえる。
「男の足音が一つ幸森か。西条君、彼とはサシでやらしてください」
眼鏡のレンズを洋服で磨いたから、西条に言う。
「解りました」
近くの柱に身を委ねようとしてから、
「邪魔じゃなかったら使ってみてください、剣技もたしなんでいるのでしょ?」
聖なる剣ジャスティスを放る投げて唐巣に渡す。
「これは有りがたいですね。さて、因縁の対決といこうじゃないか、幸森(こうもり)」
奇襲をしなかったのは幸森のプライドがそうさせるのであろう。
「唐巣、我が妻になるべき人を殺めた恨み、いざ晴らさん!」
「幸森、一応言っておく、私が倒したのは君の恋人じゃない。憐れな吸血鬼だった」
唐巣は和式の剣構えを見せると、幸森も右の腕を爪をサーベルの形状にする。
左の手にはなにやら光物があるようだ。
「以前、剣では俺達互角だったが、今はどうかな!」
予備動作も見せず、人間以上の速度を持って唐巣に体当たりする。突きの攻撃だ。
唐巣も並の人間では無い。さっと左に避け、追い討ちの一撃を繰り出すが、
「避けたのはすごいが、遅い遅い遅い!」
壁を伝って当時はミサを聞くことの出来る吹き抜けの2階に身を置く。
「吸血鬼だけで強いのに貴様は元からGSとしての素質があるって訳か」
西条にそうよと余裕で答える幸森。その幸森の真下にいる唐巣の次の攻撃は霊気波動を。
「ホーりーウェーブ!」
唐巣の右手から出された波動もサーベルを左右に振って分散させる。
精々幸森の髪を焦がした程度だ。
「やるな。お前はちっとも衰えてないな、唐巣よ」
「そうですかな?これでも大分歳による障害があるんですよ」
にやっとして言いのけた。
音も無く2階から降りると今度はサーベルを斜めに構え微妙だにしなくなる。
「居合の一手か、相対しよう」
唐巣はジャスティスを床に垂直にして突き刺す。
こちらは何やら聖書の文句を口で唱えているらしい。
あれほどまでにうるさかった教会内が静かになる。聞こえるのは西条の鼓動だけに思う。
その静寂の中、西条は発砲を2階に向けてする。それでも二人は微妙だにしない。
西条が発砲した先には拳銃を弾かれ、手を押さえるルビーがいた。
「手助けのつもりだったのか?ルビー」
階段を使って2階へと上がる。
「くそっ、気付かれないと思ったのにぃ」
「そこまで甘く見られていたとはな。おい、今弾いた拳銃は生きてるか?」
「何?」
「後から狙う真似はしない。昨日の礼を兼ねてだ。一勝負といこうじゃないか?」
「勝負だと?貴様本気で言ってるのか?」
「あぁ、で拳銃は生きてるのか?」
「・・生きてるね、でもあんたは死ぬよ」
拳銃での一勝負、クイック・ドロウ以外にあろうか。西条はホルダーに拳銃をいれて、
「さ、何時でもいいぜ、合図はどうする?」
ルビー、小石を拾って、
「これを投げて上の鐘がなった時さ」
言いざまに小石を上方へ投げる、鈍い鐘の音がなった後、二発の銃声が鳴り響く。
「あたしの・・負けかい?」
西条は顔に傷がついた程度の避けた。だが、ルビーの喉元には穴があいてある。
「まて、私はこれ以上悪さはしない、だから見逃せ日本から出る」
「無理だな、残念だが」
残りの銀弾を全部発砲する。特に頭に打ちこんだのが効いたようだ。
「アーメン」
西条が柄にも無く十字を切った。
下では、未だに対峙が続いたが、西条の一言「アーメン」が引きがねとなった。
唐巣が剣の柄に少し触れようとした瞬間、
「そこまでだ!」
サーベルを斜めに切りながら突進を見せる。
「かかったな!」
旱魃をいれず、横に移動してから武器の無い左側に体重を移動させる。
「何?剣を使わないのか!」
幸森の左腕を掴むと振り子の要領である。立てかけた剣目掛けて幸森自体を一振り。
「ぎゃ!」
短いが大きな悲鳴であった。体は吹っ飛び、唐巣の手には幸森の左腕が残る。
「血清用の左手は頂いた」
「くそぉ!手の一本がどしたぁ!」
バランスを治しながら立ち上がろうとする幸森の耳に剣が風を斬る音が入る。
「ゲフ!」
唐巣の投げた聖なる剣に突き刺されてとうとう幸森も動けなくなった。
「勝負ありましたね」
優しく幸森に問いかける。
「・・あぁ、負けだ」
「幸森、お前彼女を心底愛してたんだな」
「なんで解った?」
幸森の左腕を見せて、
「吸血鬼が普通銀の指輪を填めるか?これ婚約指輪だろ?」
何も答えないが少し笑みを見せる。
「信じるかはお前次第だが、彼女は俺に殺してくれと言ったんだ」
「・・・かもな・・おい。俺も・・・辛くなってきた。一思いに・・やってくれ」
唐巣の廻りに十字、横島、西条、ピートが集まってきた。
「ふ、仲間か。これが俺の敗因かも・・な」
それには答えず、
「おまえの左腕、血清を取ったらお前の彼女の墓にいれてやるよ」
「墓?」
「あぁ、私の寺院にある。いいな。さらば幸森」
聖なる気を浴びせ、幸森は泡の如く消えていく。そして、
「アーメン」
その場にいたメンバーも唐巣神父に合わせ十字を切った。
さぁ、帰りましょう、といった時、狂ったような女の笑い声が響く。
「しまった!ルビー生きていたか!」
しかし、ピートが慌てずに、
「バンパイアミスト、アズポイズン!」
体を霧にして教会全体を覆うと音も無く解ける荒寺院だ。まだ横島の太陽は健在だ。
断末魔の響く中、最後は十字が聖なる気を浴びせ、ルビーも邪な生命を消し去った。
「これで本当に終わりましたね」
十字が言った。
いそいで寺院に戻るとカオスが引っ手繰るようにして幸森の腕を奪い、
「よし、なんとか間に合いそうじゃ!」
と用意してあった煮沸した御湯やらを使い血清を作る。
「よし!あとはこれを飲ませるまでじゃ」
美神に与え様とするが、飲む力が無いらしい。口のなかにはいるだけだ。
「ち、仕方が無い」
カオス、薬を口に含むと強引に飲ませようとする。別段下心が有るわけではないが、
「痛ぁぁぁぁぁ!」
無意識の美神が平手で抵抗したというからおもしろい。
不意を突かれたのでかなり吹っ飛んだ。
「横島君、君がやりたまえ。今回最も活躍したのは君だからな」
「え?でもいいのか?西条」
「あぁ、それに僕は喫煙者。口の中は臭いさ。そうだ煙草でもすってくるよ」
西条が外に出ると、少ししてから冥子が西条の様子を見に行く。
「西条さーーん」
「ん?どうしたんだい?冥子ちゃん」
「あのね〜、令子ちゃんにとって〜西条さんは〜いいお兄ちゃんなのよ〜」
はん、と鼻を鳴らしてから、
「ま、それが救いかもね。令子ちゃんの答えは昨日の夕方に解ったし」
「ねぇーえー、西条さんー冥子ーお酒のみにーいきたいのー」
鳩に豆鉄砲という言葉がぴったりの西条であった。
唐巣寺院内では歓喜の声が聞こえてきた。血清に成功したようだ。
「あぁ、高級品を御馳走するよ。車も大破したしね」
「期待ーしてるわー」
「しかし、朝からやってるバーなんてあるかな?」
西条の心配は杞憂に終わる街が東京である。二人のその後は私の知った事で無い。

-FIN-

今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa