ザ・グレート・展開予測ショー

吸血奇談 幸森(こうもり)の復讐(4)


投稿者名:トンプソン
投稿日時:(01/ 3/27)

「なんだと?これが捕食者の傷か?」
驚きの第一声は十字である。捕食者が吸血鬼化する力を持つとは通常ありえぬのだ。
「これは特殊なケースじゃよ。お若いの。互いに只ならぬ霊力の持ち主だからな」
「世の中こう言う事があるんだな。だからこの世も捨てたもんじゃないか。古いの」
なかなか言うのぉと少しだけ笑みを見せるカオスだがすぐに顔を引き締めて、
「しかし、今回取れなかったのは結構きついぞ、美神も我々も」
うなだれる男3人だ。
また、美神の吐血が始まった。
「朝が来たからな。身体に悪いんじゃろ。カーテンを全て閉めとくれ」
皆に命じてから、瞳孔や脈を計って、
「オキヌの、そろそろ美神の身体に入ってくれぬか?」
いやとは言えぬが陰りを見せる。
「・・まぁな。ワシは経験した事ないがきついからな」
「俺がやろうか?」
横島が手を挙げるが、
「おぬし等は夜に向けて体力を蓄えとかんかい」
意を決したオキヌが霊体になって美神の体に入りこむと、又うめき声を発生する。
「だ、大丈夫なのか?カオス」
「これしか方法がない。美神の脳を守るためじゃよ。西条の」
「時に古いの、あんたは誰だい?吸血鬼治療のエキスパートより知識を持ってるな」
「わしか?ワシは欧州の魔王Drカオスじゃ」
「そうか。今度是非、吸血鬼予防対策委員会で講習を願いたいね。当然ギャラは出すよ」
何時も金に困ってるカオスには絶好の申し出で有る事は間違いない。
「ま、気が向いたらな。もうええぞ。オキヌの。辛かったじゃろ?」
元の体に戻るとはぁはぁと呼吸が荒い。
「大丈夫?オキヌちゃん」
「はぁはぁ、大丈夫です。横島さん、ちょっとつかれちゃいましたけど」
「ショウトラちゃ〜ん、オキヌちゃんにも〜ヒーリングを〜」
命じる冥子にも疲れの色が濃い。
「さて、戦闘部隊はとっとと休め」
「そうですね。今は体力を蓄える事が先決ですね。上にベットがあります。どうぞ」
しかし、西条も横島も美神から離れようとはしなかった。
しかたありませんねと、苦笑しながら上に行く唐巣神父が上から毛布を持ってきた。
「・・寝たほうがいいぜ。横島とやらもな。なんなら睡眠薬使うか?」
十字がなにやらの薬を取り出すが、
「ううーん、私がー、やってーあげるー、ハイラちゃーん」
「あ、ちょっと待って、確認だけど十字さん。どのみち吸血鬼は太陽には弱いよな」
「あぁ。当然だよ」
確認してから横島は大人しく床に付く。もう一人の西条は、
「外で一服だけしてくるよ」
そういって教会の裏手に廻って煙草を咥えようとするが、
「くそっ、何たる失態!」
声もなく泣きむせぶ姿を冥子だけが、影で冥子だけが確認していた。
「あのひともー、ちょっとーかわいそー。だってー令子ちゃんのー心はー」
西条が一服する事もなく引き返してきたので急いで寺院に戻った。
夕刻、寝ていた男たちが起き始める。
「うはー、よっ苦寝た。お、横島君も御起床かい?」
横島は少し前に起きていたらしい。そして手には二つの文殊が有る。
「おや?それが噂の文殊かい?業界仲間では有名な事だけどはじめて見るよ」
それから西条が目を覚まし、続いて唐巣が降りてくる。
「さて、戦略を練りましょう。昨日の失態はまさに無謀だったからです」
幾つかの案が出された中、横島が文殊を使う作戦には皆が度肝を抜かれた。
「おそらく、文殊を使えば可能です。まるで御伽噺ですが」
「成功させてください。そしたら我々の勝機は各段に増えます。
では、行こうと男達が腰を挙げたとき、横島は誰かに掴まれたようだ。
「美神の、御主はもう意識がないと言うに」
いっちゃいや、そんな意思表示であろうか、美神は横島の腕を掴んでいる。
「大丈夫ですよ、美神さん。あんなゾンビー共にやられる俺じゃないっすよ」
そして、美神は掴んだ腕を離した。
オキヌ、冥子も疲労の色を隠し切れていない。何故かカオスだけは何時も通りだった。
「一応聞こう、若しもだ、血清が取れなかった場合どうする?」
「どうするって?」
「殺すか、吸血鬼にするかじゃ。美神なら吸血鬼でも恐らくは意識を持つじゃろ」
「横島君、君が決めたまえ」
西条が言う。唐巣も君の一存にと言ったので、
「美神さんが化け物になる姿は見たくない。絶対に戻る!」
「む、小僧良い答えじゃ」
そして、リターンマッチとかの墓場まで向かう4人だ。
「それにしても、ピート君とやらは大丈夫かな?幾らハーフだからって」
「俺はピートに文殊を一個渡してあります。それを巧くつかえてれば大丈夫かと」
唐巣神父、横島を見据えて
「有難う、横島君!」
頭を下げる神父であった。
「みんなついたぜ、さて。廻りは夜だ。行こう時間が無い」
墓場の中にある荒れた教会の鐘撞堂から廻りを確認していた吸血鬼のルビーが、
「おや?ハーフの坊やを探していたら、又来たのかい?」
「あぁ、俺はあいつの仲間を頂いたからな、当然さ」
幸森もいたらしい。
車を降りて、横島以下、全員が墓場の中に入ると、又吸血鬼たちが襲ってくる。
「さ、横島君やりたまえ!」
3人が横島を守る形で応戦する。何やらの文字を文殊に写しこむ。
「成功してくれ。文殊の二つ使い。記入文字『太』と『陽』!!」
願いは通じた。
「ルビー、中に入れ、嫌な予感がする!」
信じられない光景が展開する。
「まさか、西から太陽が昇るとは」
教会にいた二人は太陽の攻撃を逃れられたが、ゾンビたちは成す術が無い。
氷の如く解け始める、と同じに横島も力をほぼ使い切ってしまった。
「唐巣神父、貴方と西条で幸森とルビーは任せます。この坊やのバックアップは私が」
そういう決まりだったようだ。
二人は唯一のこる半壊の教会に入っていった。
其処は太陽の恩恵も受けられない闇夜のような入り口であった。

-(5)に続く-

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