ザ・グレート・展開予測ショー

吸血奇談 幸森の復讐(3) 


投稿者名:トンプソン
投稿日時:(01/ 3/26)

ヘッドライトを石でぶつけられたのが最初の攻撃である。
「洗礼か、なかなかアジな事を」
反撃の意味合いも込めて西条が銀の銃を墓地に向けて発砲すると、
『ゲヘェ!』
断末魔が響く。
「あれ??もしかしてやっちゃった?」
西条を先頭に敵陣に向かう。最後尾にいたピートが入ると、地面がうなり始める。
「な、なんだぁー」
地震か?と皆が思ったが地面が割れると、不気味な手足が幾つも出て来る。
「そぉか。吸血式のゾンビーか」
この連中は知恵なぞ無い。只己らの欲望のまま動く肉塊に過ぎないが、
「この連中に傷をつけられたら同朋になってしまいます。気を付けて!」
ピートが爪を出してゾンビーに第1攻撃をしかけている。
「ヨコシマ君、こっちを頼む。私と神父で幸森を探す!」
「う?でも俺は奴の顔を直に見てるから、おれもそっちに」
言い合いをしている状態ではない。この会話をしながら、
西条は右にジャスティスを使い首を刎ね、横島も霊気の剣を振るっている。
結局、唐巣も西条もその場から離れられないのだ。アーメンと聖なる波動攻撃をしつつ、
「これは多すぎる、何処だ!幸森!!」
一人だけ、少しずつ少しずつ墓場の教会に近づいているのだ。
「皆さん、俺がホーリークロスをやります!バックアップを!!」
半ばゾンビーに埋もれつつあったピートが声を出す。
「OK,ピートで何をすれば」
「すいませんが、僕の周りにいるコイツ等をお願いします」
了解と言って横島だけがピートの援護を始めるが、
「西条、お前も手伝えよ!」
そう言われても西条は、
「いや、僕は神父に付いていく」
と言って唐巣神父のところへ向かおうとする。
「しょうがないぜ、あいつは、ま、俺だけでも雑魚ぐらいなんとかなるさ!」
右に霊気の剣、左に文殊で爆発系と霊力を度外視した攻撃に転じる。
このいゾンビー達も決して弱くは無い。だが、横島を同属にする決定打は無かった。
「すごい、横島さん・・日に日に強くなってくな」
この修羅場でもちょっとだけ余裕の出来たピートである。
「僕もぼやぼや出来ないな、よし、これなら!」
見定めて空を飛ぶ、そして体が発光し、少量ながら聖なる気を集めて、
『グランドクロ・・!』
最後の一言を言う前にピート、木の葉が舞い落ちるが如く地面に這いつくばる。
「なに!大丈夫かピート」
横島がピートに近づくと、
「大変・・です・・敵の一人は・・銃を・・あ、僕はだいじょ・・・」
意識が混濁したのか、目を閉じる。
「ピート!」
ワラワラと集まるゾンビー共に抵抗する力は横島は少量しかない。
「しまった・・幸森とやらは銃もつかえるのか?神父」
「そんな馬鹿な、あいつの拳銃嫌いが気が変ったのか?僕は横島君たちの所へ」
そういって、自分の無計画を悔いた。西条も向かおうとした時、
「危ない、神父!!」
かぶさるように唐巣神父に飛びついて右手を張って発砲するが、
高い金属音を立てて西条が持つ銀の銃が手を離れる。
「うふふふふふ。幸森が出るまでもなかったわねぇ」
ボルテージ姿で金髪の女、これも吸血鬼であろう、が倒れた二人の前に現れる。
美人の類に入る体と顔だが、ひたいに宝石のような赤い出来物が光ってある。
「ま、私が怖かったのは、あんたの銀製品だからもう怖い物無しね」
くるくると拳銃をフィンガーを使って廻している。
「万事休す!!」
西条に冷や汗が走る。唐巣神父が口を開く。
「貴様、何者だ?」
「あたい?人間の名は忘れたわ、でも通称はルビーよ、ま、あんた達は好みだから」
八重歯を光らせてから、
「眷属にしてあげるぅ。最初は痛いけどね」
横島も最早体力が尽きた。ぐったりとうなだれる横島の手の中には最後の文殊があるが。
「脱出用だな、ピート大丈夫か?」
ピートに答えは無かった。不意に横島の耳に車のエンジン音が聞こえた。
その車は墓場の柵を破壊して中に入ってくる。
「ルビーそこにいたか!」
驚いたルビーが顔を挙げると、車の主は知った顔であるのか、
「あんたか、しつこいわねー私がそんなに魅力?」
「全くだな。だが俺には吸血鬼の彼女がいるから間に合ってるさ!」
先ずは西条と唐巣にとりついた連中を波動で取り除くと、
「乗ってください、御二人さん」
西条が最後の力を振り絞って車に乗りこむ。横島も火事場の馬鹿力で車に飛ぶ。
文殊は使わなかったようだ。
「残念だわ」
案外軽いルビーであった。
墓場からある程度車を走らせたから、西条が御礼を言う。
「助かりました。十字さん」
十字、彼はWHO所属の対吸血鬼専門の警察官である。西条の上司格に当たる。
「日本でも有数なGSですね。彼等の攻撃で吸血鬼化しなかったのは珍しいですよ」
「神父さん、すいませんピートはあの場から持ってこれませんでした」
誰も横島を攻めることが出来ない。
「大丈夫ですよ。彼は半ば不死身。きっと生きてます」
それから、十字の説明が始まった。
 吸血鬼には大まかに別けて2種類あります。捕食者と言われる奴らでこれは人間を
吸血鬼化は出来ません。実は幸森もこの類に入りますが、力はあなどれません
 そして、私が追ってるのはルビーです。あいつはクリエーター、創造者と言われて、
人間を完全に吸血鬼化する事が出来ます。おそらく幸森さんはルビー退治に失敗して、
吸血鬼化したもの考えています。
だが、この説明を受けたところで美神令子の薬になる物ではない。
「あの、昼に攻撃したら駄目ですか?」
横島が質問するが、
「あのルビーという奴は昼間は影になって実態を消します。夜だけです。狙えるのは」
十字が答えた。
そして血清を作る余裕はあと1日しか残ってない。
気付けば朝日が昇り始めていた。

-(4)に続く-

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