ザ・グレート・展開予測ショー

魂の旅Z


投稿者名:ツナさん
投稿日時:(01/ 3/24)

 「これでようやく・・・ふぅ、わしも年じゃ。儀式は何度やってもくたびれる」
聖天大聖はキセルをふかしながら、どっこいしょと腰をおろした。
「これで氷室キヌの魂は神となりうる魂となったわけじゃ・・・。美神たちには魂を修復したとだけ伝えておけ。おそらく玉藻の前、いや今はタマモか、あやつには覚られるかも知れんが、ま、キツネうどんの一つもおごってやるんじゃな」
一仕事終えたと言う満足感からか、晴れ晴れとした顔をしている。
「彼女にとってはまだまだ先の事なのね。じゃ、私美神さんたちに伝えてきますね」
ヒャクメは踵を返すと部屋を出て行った。
「ん、時に小竜姫よ」
「はい?」
「横島にはなんと伝えた?すべてを話したのか?」
「はい」
「・・・上になんて報告するか、考えなくてはのう・・・。おまえは本来、天竜童子の第一妃候補だったのじゃが・・・さっさと横島と契ってしまえ。そうすればいい訳も立つ」
「あと100年もしたら考えます」
「うむ、まあそれぐらいなら待つか。どうせ天竜童子にパビリオがおるし・・あの跳ね返りがおとなしく神族になるかはわからんが」
「なりますよ。・・・あ、そろそろおキヌさんが目を覚まします」
目をあさましそうなおキヌを見やりながら言う。
「わしも行くとするか。・・・上の連中と会うのはあまり好きじゃないんじゃがな」
「あの方々と対等にお話しできるのは老師と龍神王様位じゃないですか」
「わしは昔から変わらんだけじゃよ。岩猿悟空のあの頃とな」

待合室(風呂場みたいなとこ)では美神が珍しく貧乏ゆすりまでして待っている。西条の足元にはタバコが何十本も転がっているしシロは落ち着かないといって亜空間内をうろうろ、タマモはそれをボーっと眺めていた。
 そこに横島とヒャクメがやってきた。
「あ、せんせー。どうでござるか!」
いち早く察知したシロが横島に飛びつきながら尋ねる。
「成功したらしいぜ。詳しくはヒャクメから聞いてくれ」
「横島君、ヒャクメ!」
横島たちの会話を聞いた美神が立ち上がり、詰め寄る。
「ぶじ治療は終わったのね。もう大丈夫、安心していいのね」
「そ、そう、良かった」
肩の力を抜くとふぅっと一息つく美神。西条がそれとなしに肩に手を置く。
「良かったじゃないか令子ちゃん」
「西条さん・・・うん、うん」
「だぁぁさいじょー、それは俺のだ、かってに手を出すんじゃねぇー」
それを見た横島が噛み付かんばかりに抗議する。
「誰があんたのよ、誰が!!!」
ばきぼこずがばこぼこぼこ
美神はそんな横島を一瞬の内に血だるまにする。
「何よ、いつもの調子にもどったじゃない、美神さん」
タマモは何するでもなく、その光景を眺めて居る。内心ほっとしたのか、わずかに笑みをこぼしていた。
「だいじょーぶですか先生!!ぺろぺろ」
血だるまになった横島をシロが必死に介抱している。
「そんな奴ほっといていいわよ・・・。で、ヒャクメ、おキヌちゃん本当に・・・」
「神様が三人も居れば不可能はほとんどないのね。それに美神さん、うかうかしてられないのね。おキヌちゃんの霊力は魂が再構成されて潜在能力が開放されたから数段アップしたはずなのね」
「ヒャクメ、本当に怪しい手を使ってないでしょうね。いやよ、よく見たら別人なんてのは」
「大丈夫なのね」
「うそくさい・・・」
わずかに自信を欠いた言い草のヒャクメをじと目で見やるタマモ。ずずずいっと迫ると見透かしたような笑みを浮かべる。
「嘘じゃないのね。決して人倫に逆らったことは・・・ほんの少ししかしてないのね」
ヒャクメはタマモの耳元でささやく。
「・・・したの?」
「してない、してないのね。じゃあ私これで・・・」
「まった。あとでキツネうどんおごってね。と、シロには最高級松坂牛のサーロインステーキよ」
「・・・わかったのね」
「良かったわねシロ、ヒャクメさんがステーキ好きなだけおごってくれるって」
「本当でござるか、先生も一緒にいくでござる、早く行く出ござる拙者腹減ったでござる」
シロが横島にしがみついたままパタパタ尻尾を振っている。子供ねぇ、とタマモは思った。
「・・・ライバルは多そうよ、小竜姫」
ヒャクメは人事のように笑った。

「・・・ふぁぁ、あれ?ここは・・・」
目覚めるとそこは妙神山の神殿の寝室だった。といってもおキヌがそこを知るはずもなくきょろきょろとあたりを見回している。
「あ、目、さめました?」
とそこに小竜姫がお茶を持って入ってきた。
「あの、これってどういう・・?」
おキヌは何がなにやらさっぱり、と言う顔をしている。
「おキヌちゃん、ちょっとした霊症にかかってしまったらしくて。さっきまで気を失ってたんですよ」
小竜姫は当り障りのない言い回しで説明する。
「おやつ食べるんで紅茶を用意して運んだところまでは覚えているんですけど・・・」
「ま、私たちのほうでちゃんと治療しましたから、もう大丈夫ですよ」
「それは、どうもありがとうございます」
体を起こし、ぺこりと頭を下げる。
「普段から何かとお世話になってますから、そのお礼みたいなものですよ。それよりお茶請けにこれでも。自家製の大根の粕漬けと野沢菜漬けなんですけど」
「あ、ありがとうございます」
きれいに並べられたそれの一つを楊枝でつまむ。
「あ、おいし、小竜姫様、お漬物お上手ですね」
「だてに2000年もこっち居ませんよ。今度教えてあげますね」
「ほんとうですか、ありがとうございます」
いまどき漬物の作り方で盛り上がる女の子も珍しいが、彼女たちだとさまになる。
「・・・ねぇおキヌさん」
「はい?」
「横島さんのことなんですけどね?」
「え、横島さんがどうかしたんですか?」
「・・・やっぱりいいです。また今度にしましょう」
数拍置いてから顔を少し赤らめて話しを切ろとする。おキヌは何が言いたいか察した。小竜姫は感情を、とくに「その手」の感情を隠すのが苦手らしい。おキヌは笑みを浮かべると、
「わたしも横島さんの事好きです。けど・・・」
「けど?」
「私はみんなの事も好きです。だから」
「今だけはそばに居てもいいですよね?」
「おキヌさん、あなた・・・」
「夢じゃないって、わかってましたから。さっきの。実のところ、聞こえてたんです、横島さんと小竜姫様のお話し」
「え?」
「夢の中で・・・、どこからともなく声だけが聞こえてきたんです。きっとヒャクメさまが何か細工をしてくださったんでしょう」
「・・・私は」
「いいんです。横島さんも分かってると思いますから。いざとなったら横島さんよりずっといい人探します・・・いたらですけど」
「いないかも」
「じゃあ永遠にライバル、ですか?」
おキヌはからかうように言う。
「それもいいかも知れませんね。おきぬさん・・・おキヌちゃんとはうまくやっていける気がするの」
「・・・横島さんは、やさしいですから・・・」
「そうですね。ちょっとエッチですけど」
二人は顔を見合すとおかしそうに笑った。

「あ。おキヌちゃん」
おキヌがでてきたのはそれから数分後だった。横島がいち早く気付いて駆け寄っていく。
そのあとに美神たちが続いた。
「大丈夫かおキヌちゃん?」
「横島さん・・・」
そのときおキヌちゃんは予想外の大胆な行動に出た。
『あ!!!!!!!!』
全員の視線が二人に集中する。
「・・・!?」
おキヌちゃんはいきなり横島に熱烈なキスをかましたのだ!!
目を見開いて立ち尽くす横島。呆然とする美神。西条はシロタマの肩をつかんで黙って門の外へ連れて行く。シロはかなり抵抗していたが、無理やり連れて行ってしまった。
長いキスのあと、見詰め合う二人。
「いつまでやってるのよ・・」
美神は明らかに嫉妬の色を隠せない。おキヌちゃんでなかったら絶対邪魔をしていただろう。いやおキヌちゃんだからこそ邪魔をしなかったと言うべきか。ただ一言言っただけだった。
「ごめんなさい美神さん、でも私」
「・・・分かったわよ。とにかく元気でよかったわ」
「・・・(ぽっ)」
「いつまで顔を赤くしてるか!・・・まあいいわ。かえろっか」
美神しょうがないな、と言う顔で振り返る。
「今日だけよ」
とぽそっとおキヌちゃんに言うあたりが、彼女らしいと言えば彼女らしいか。おキヌちゃんは黙ってうなずいた。彼女は知っている。横島と美神の間に割って入る余地が少しずつなくなっていることに。それでもかまわないと彼女は思う。それが大好きな人たちの幸せなら。

fin

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