ザ・グレート・展開予測ショー

吸血奇談 幸森の復讐(1)


投稿者名:トンプソン
投稿日時:(01/ 3/22)

清貧を旨とする唐巣寺に夜遅くかけ込んだのは横島にオキヌであった。
「唐巣神父!」
「すいません、こんな夜分に、でも神父さんなら頼れるかと思って」
どたどたと上から降りてくる唐巣神父は眼鏡をかけながら電気をつけて降りてくる。
「どうしたんですか?こんな夜分に」
横島の腕の中にはぐったりとした美神令子である。首筋に傷がある。
「この首筋の傷は、まさか吸血鬼一族の!」
「やっぱり!あいつめ。なんちゅう真似をしてくれたんじゃー」
今にも暴れ出しそうな横島に落ちつきなさい、と忠告してから、
「ピート君、近在のGS関係者を急いで連れてきて下さい」
「はい。じゃあいそいで行ってきます」
美神令子の体を一瞥してから、
「これは・・ブラトー島の連中とは違う種族のようですね」
「そんな事わかるんすか?神父」
「ええ。それはそうと横島君、何があったか教えてくれないかな?」
一時間前、
「んじゃ、美神さんテストが始まりますんで暫くは休みます。んじゃ」
「はい、せーぜー赤点を取らないようにね。今となってはアンタがいないと」
「俺がいないとなんすかぁ?」
セクハラまがいの行動に出るが、余裕の拳骨で対処して、
「ほら、そんな事してないでとっととかえれ、セクハラ大魔王」
幾ばくか楽しんでいる風体であるが、横島は毎度の如く流血している。
日常が繰り広げられていたその時、
『あのー。貴方が美神徐霊事務所の方ですか?』
暗闇からぬっと男が一人現れる。春も近いのに黒いコートに帽子姿だ。長身である。
「そうよ。何か用かしら?」
『はい。徐霊についてお伺いしたいのですが、このような時間でも宜しいですか?』
「えぇ、本来ですと時間外ですが、折角来てもらったので。所で貴方は?」
これは失礼しましたと、美神と横島に名刺を渡す。
その後、部屋に入ってからすぐに令子の悲鳴が横島の耳に入り、戻ってみたら、
玄関内に倒れていたと言う事だ。
「あのやろ!吸血鬼か、しかし何処にいった!」
今度は2階に悲鳴が上がった。
「しまった、オキヌちゃん!、勘弁しろ、人工幽霊1号」
文殊を二つ使う。天井をぶち破ったのが一つ、飛ぶのに使ったのだ一つ。
「オキヌちゃん!」
吸血鬼は正にオキヌの首筋に歯をあてている場面であった。
「横島さん・・助けて!」
『何?さっきのガキか、まさか戻ってくるとはな!』
「貴様、何しやがったぁ」
言うが早いか霊の剣を出す。この吸血鬼も爪で応戦しようとする。
3、4合は渡り合う。
『知らずにいれば命は有ったのに。男の血はいらねぇな。見た以上は」
ごたくを並べてはじめると、吸血鬼に隙が生じる。
「遅い!」
五叉に分かれた刃をかわす事は出来なかった。
『ぐ!、まさかこのガキがこんな力を持っていたとはな、不覚だ』
傷ついた体を窓脇まで持っていき、コートを翻すと、
「待ちやがれ!」
蝙蝠の姿になって夜の闇に消えていった。息を整えたオキヌに、
「大変だ。オキヌちゃん、ヒーリングをして?」
「駄目よ、今の美神さんにヒーリングは逆効果よ。それよりも誰かに助けを!」
「うん・・唐巣神父にしよう!」
現在、
「それで取る物も取りあえずこちらに」
「そうでしたか、吸血鬼が。時に横島君。その吸血鬼から名刺をもらったて」
「あ、はいこれを。えっと私立探偵の『幸森・(さちもり)』とかいう名?」
その名刺を見て唐巣神父はかすかに顔が青白くなる。
「『幸森・(こうもり)』、生きてたのか、彼奴が!」
「知り合いですか?神父さん」
「えぇ、オキヌちゃん。昔イタリアで遣り合った奴ですよ。しかし何で私ではなく?」
今まで何の動きも無かった美神が大量の吐血が始まった。
「美神さん!」
「いけない、吸血鬼化する兆候だ!」
「何とかしてください!」
「悪いが私も倒し方は知っているが、治し方は知らない。おそらく解るのは」
そんな?と二人が顔を挙げた瞬間に、
「唐巣、何事が起きたのじゃ!、ふーん。美神がか油断したようじゃな」
ドクターカオスの登場である。
傍にはへばったピートがいる。
「唐巣先生、連れてこれたのはカオスさんとぉ」
「令子〜〜〜ちゃ〜〜〜〜〜ん!」
六道冥子である。
「おい。先ずは十字架を隠さんかい、今の美神には毒だぞ」
指示してから懐から薬を出し、飲ませようとすると、
「血を吐いたのか。冥子、お主の式神にヒーリングがいたな」
「はーーいーー」
「吐血や発熱が続く、大変じゃが変化があった度に治療してくれ」
「わかったわー、ショウトラちゃん、おねがいねーー」
ひとまず吐血の治療を済ますと、薬を飲ませる。少し顔色が穏やかになったようだ。
「有難う御座います。カオスさん」
ほっとしたオキヌだが、
「いや、安心するのははやいぞ、オキヌの。これは吸血鬼化を押さえるだけじゃ」
「そ、それじゃあ美神さんはこのままだと?」
「あと持って48時間、それ以降は手の付けようの無い。本当の吸血鬼になる」
カオスのぞっとする一言だ。教会の外で車が止まる音がする。
「令子ちゃん!」
西条がすっ飛んできた。
「こんな・・おい、横島貴様がついていながら・・!」
大の男が涙を浮かべ一回り年下の横島の襟首をつかむ。横島も反撃せずに、
「・・済まない・・」
とぽつりと言っただけだ。
「おい、喧嘩しとる場合じゃないぞ。とっとと吸血鬼の幸森を探せ」
「どういう事だ?カオス」
「あと二日以内にきゃつの血液を持ってくれば」
美神に薬を全部飲ませて毛布をかけてから、
「こんな病気は一発で治る。おっと、オキヌお主はこっちにいてくれ」
では行きましょう。ピート君、西条君、そして横島君」
唐巣神父にとっても幸森は因縁の相手のようである。十字架を持って外に出た。
「相手が吸血鬼なら夜陰にしか動けません、朝になったら見つけるのは大変です」
4人は得意の得物を持って夜の闇に導かれるように出ていった。

-(2)に続く-

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