ザ・グレート・展開予測ショー

魂の旅Y


投稿者名:ツナさん
投稿日時:(01/ 3/22)


 雪は深々と降り積もる。
「おキヌ・・・」
「大きくなったな」
 父と母交互に話し掛けられて、おキヌは目頭が熱くなるのを感じた。
 これは夢。
 それでも彼女はたまらなくうれしい気持ちになった。
 たとえここが黄泉の国でも、二度とと戻れなくてもいいと言う思いが心をよぎる。
 抱きしめてくれる二人の暖かさが全身に伝わってくる。
 今だけでいい、もう少し甘えていたい。言葉なんかいらない。
「ずっと、こうしててもいいですか・・・」
おキヌは幼子のような顔で二人を見やりながら、言う。
「そうもいかない・・・わしらはおまえの夢の住人だから。おまえの心に刻まれたな」
「夢の住人・・・?」
「おキヌ。あなたには帰るべき場所があるでしょう・・・。行きなさい」
「帰るべきところ・・・・?」
おキヌは思い出した。私には帰るべき場所がある・・・。薄れ行く記憶の中にある小さな思いと、いとおしい人たちの待っているところ。
「わたし、行かなくっちゃ・・・」
二人からそっと離れ、呟く。
「うむ。えらいぞおキヌ。・・・わしらはいつでもおまえの心の中に居る。いつでも見守っている事を忘れないでおくれ」
「頑張って、おキヌ。私たちの分まで精一杯生きてね」
笑みを浮かべる両親。やさしい笑み。忘れられない笑み。暖かい笑み。忘れかけてたすべての思いといっしょに。
「とおさま、かあさま・・・はい。おキヌは元気に生きていきます」
涙をぬぐいながら、精一杯の笑顔を浮かべるおキヌ。涙なんか流している場合じゃない。
私には帰るべき場所がある・・・。そう強く思った瞬間。両親の姿は、そして振り向いたとき女華姫の姿も消えていた。

 そして目の前には闇が広がっていく。
「なに・・・?」
急速に体の力が抜けていくのがわかった。少しずつ思いでがまるで流れゆく小川の流れのようにさらさらと消えていく。
「どうなっちゃうの・・・だれか・・・」
へたり込みながら、助けを求める。
 視線を感じた。誰かが見てる・・・。
「助けて、私まだ・・・まだ生きていたいの・・・。永遠なんていらない。例え少しの間でもいいから・・・。約束したの、生きるって。横島さんや美神さんや、シロちゃんやタマモちゃん、みんなのところへ帰りたい」
『それが汝の願いか・・・』
「・・・私は・・・何年も幽霊やってきて、みんなのおかげでやっと生き返って・・・」
おキヌは声に向かって答える。その『声』はさも当たり前のようにそこにたたずんでいる。
「もう誰にもあんな悲しい思いはしてほしくない。幸せに生きてほしい。幸せに逝ってほしい。私にだって少しぐらいは、誰かを悲しみから救う事ができる・・・」
『汝、悲しみを背負い生きるのか。永劫に渡りその悲しみと愛を背負う覚悟があるか』
「・・・私がいる事が、誰かの幸せにつながるのなら・・。それでみんなが幸せになれるのなら・・・」
『汝の愛の深さ、確かに我らに伝わった。汝の魂はこのまま朽ちさせるには惜しい』
数瞬の間を置いて、重厚な声が返ってくる。
『汝の魂に新たなる力を与えよう。そして人としての生を全うし、我らが元へ来るがよい』
そのときおキヌの体が強烈な光に包まれた。おキヌは自分の魂が何か別のものへと変わっていくのを感じた。
「なに・・・何が起きたのですか・・・?」
その顔に戸惑いは隠せない。
『恐れる事はない。我らに身をゆだねよ・・・』
『今は眠るが良い。目覚めた時、すべては終わっている』
『汝の魂に祝福があらんことを』  

おキヌはその言葉のままに、深い深い眠りについた。

続く

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