ザ・グレート・展開予測ショー

魂の旅X


投稿者名:ツナさん
投稿日時:(01/ 3/22)

 そこは一面真っ白の雪山。
 あれから幾星霜すぎたのか・・・。まるで夢のような時間が過ぎた気がした。
「・・・私、どこ行くんだろ?」
おキヌはただその雪の中をとぼとぼとどこかへむけて歩いていた。
 いつもの巫女の服装。それではとても寒いはずなのに全然寒くない。 
「おお、おキヌ!」
 目の前に突如人影が現れた。おキヌはその人影に夢中で走りよった。
 そこに立っていたのは懐かしい顔。
「女華姫様・・・」
「久しぶりだな」
「ええ、姫もお変わりなく」
「そうか。私もまたあえてうれしいぞ」
女華姫はその決して美しいとはいえないが、温和な笑みを浮かべる。
「でもなんでこんなところに姫が?」
「ん、なぜかな。私にもわからない」
腕を組み、考えるしぐさをしながら答える女華姫。
「それよりほら。おまえの父と母も見えられてるぞ」
「え?」
女華姫が指差した方向を観ると、そこには幼い頃死に別れたはずの父と母がたたずんでいた。
「なんで・・?」
「あってくるといい。今しかあえないんだからな」
女華姫が方を押してそっと送り出す。
「うん・・・とおさま、かあさま・・・・」
おキヌは童心に帰って、父と母に向かって駆け出した。二人はおキヌを迎えると、そっとおキヌを抱きとめた。おキヌは幸せそうに笑みをたたえている。まるですべてがその時に帰ったかのように。

 そこには複雑な魔方陣が描かれている。そしておキヌはその中心に横たえられている。
そしてその魔方陣の外、正三角形の頂点になる位置に聖天大聖とヒャクメが鎮座している。最後に一角には小竜姫が座る事になっていた。
「・・・後は小竜姫を待つだけだな」
「あの子、うまく決着つけられるのね?自分の心に」
「知らんよ。だがつけねばならん事はあ奴が一番よう知っておる。あやつはわしの弟子じゃぞ。いらん心配は無用じゃ」
「恋愛の事は男には分からないのね」
「ふん、はいとれ」

「・・・なぜ?」
横島は小竜姫に尋ねた。答えは帰ってこないであろう事を承知で。
 彼女の目を見れば、いくら鈍感な横島でも彼女が自分の事をどう思っているのか気付く。
 まさか、とも思うが、同じ目をした、自分を愛してくれた女が彼には居た。
「・・・分からない・・・」
小竜姫は横島の考えを見透かしたように、答える。
「やめたほうがいいと思いますよ?馬鹿だ助平なだけっすよ?」
横島は困り果てた顔をして言う。なぜ困ったかは自分でもピンと来ない。自分は人間、彼女は神様だ。立場がまるっきり違う。恋愛感情となるとやはり、さすがの横島でも考えるところがある。
「・・・迷惑なのは分かってます、でも、仕方ないでしょう、私にだって心があるんですから!心に嘘がつけない!」
「そ、そんな怒鳴らなくっても、ね」
慌てる横島。小竜姫ははっと我に帰り、ごめんなさいと誤る。
「・・・横島さんがそのうち私たちと同じ存在になるってわかってから・・いえ、もう少し前、あなたと出会ってから・・だんだん強く、やさしくなって行くあなたに何時の間にか惹かれてたんです。たまにここから覗いてたりしたんですよ・・ふふ・・、神様らしくないですね」
恥ずかしそうに告白する。
「横島さんが神族になるって聞いた時、そして私に任せるって上から言われた時、私うれしかったんです。横島さんとずっといっしょにここで居られるって。私たちにとって100年200年なんてあっという間ですからね。少し待ってればまた会える・・・ずるいですよね。
待ってればいいだけなんですから・・・」
「・・・・」
横島はただ押し黙っている。何と言えばいいのかわからない。
「でも、おキヌちゃんを神格化させるって決まって、わたし、怖くなったんです。待ってても横島さんは私に絶対振り向いてくれない、おキヌちゃんにみんな取られちゃう。私はいや、横島さんを・・・・」
「・・・なみだ、拭いてください」
何時の間にか涙を流していた小竜姫に、ポケットからハンカチを取り出して、そっと手渡す横島。
「ごめんなさい、私身勝手ですよね、わかってるんです。ただ待ってるだけで横島さんに振り向いてもらおうなんて、ずるいんです、私神様の癖して」
「・・・死んだ後の事なんかわからないす。ただ今はおキヌちゃんも、美神さんも、小竜姫様も、おれにとってはかけがえのない人っす。俺が生きているうちは誰も欠けてほしくない。それじゃ答えになんないっすか?」
横島は真剣に考えて言葉を選んで答えた。我ながら臭い台詞をとでも思ったのか、必死にテレ笑いをしている。
小竜姫は涙をぬぐいながら、笑みを浮かべた。
「・・・、やっぱりやさしいですね横島さんは。皆さんが惹かれる気持ちわかります」
「そうっすか、もてないと思うんだけどな、俺って」
「そんなことないですよ。自信もっていいです」
「え、そうっすか?」
「でも調子に乗っておキヌちゃんや美神さんを悲しませないでくださいね」
「美神さんが悲しむ?・・・まさか。でも気をつけますよ」
横島ががあまりにまじめに答えるので、思わず笑ってしまう小竜姫。冗談ですよ、とくすくす笑っている。
「いや今日はついてるかも。小竜姫様の笑顔と泣きべそかいたの、両方見れて。でもやっぱ笑顔のほうが素敵っす」
「神様をからかわないでください横島さん!・・・ごめんなさい、変な話ししちゃって。できれば忘れてもらいたいところですが」
「忘れてもいいっすよ。手はありますし」
文珠をちらつかせ、言う。
「いえ、止めておきましょう。お互い心の奥にしまって置くって事で。・・・あ、ハンカチ、後でお返しに行きますね」
「いいっすよ。わざわざ」
「まあいいじゃないですか。じゃ、私行きますね」
「・・・お願いしますね、おキヌちゃんのこと」
「任せてください。私にとっても彼女は大切な友達ですから・・・あ、それとついでに。
神族では一夫多妻が認められてるって、知ってました?」
いたずらっぽい笑みを浮かべてさらりと爆弾発言を残す小竜姫。
「え?」
小さい声だったので聞き取れなかったのか、横島が聞き返す。
「いえ、聞こえなかったのならいいんですよ?たいした事じゃないですから。では、後は私たちに任せてください」
笑顔を浮かべたまま踵を返した小竜姫はいつもの凛とした、意志の強い顔に戻っていた。

続く。

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