ザ・グレート・展開予測ショー

魂の旅W


投稿者名:ツナさん
投稿日時:(01/ 3/20)

 門の前ではヒャクメが首を長くして待っていた。
「早くするのね!!」
救急車が門に横付けされて、後ろのドアがけ放たれると、中からわらわらと美神たちが下りてきて、そしてキャビネットに載せられたおキヌがそっと下ろされる。
「お願い、助けて」
美神がじっとヒャクメの目をみて頼む。実に真剣で切実な目だった。
「わかってるのね。私の目の一つをあげた子だもの、死んでほしくないのね」
ヒャクメはうなずくと、鬼門に門を開けるよう命ずる。
「どうにかなるのですか?ヒャクメさま」
西条が猜疑心を持って尋ねる。彼はまず自分の常識の範疇で物事を考える癖がある。やはり神族にも魂を復元するのは無理があるのでは、と考えているのだ。
「まぁ、神界の医療をもってすればちょちょいのちょいなのね」
「助かったはいいけど人じゃなかったってのは無しよ」
タマモが何か感づいた節があるのか釘を刺すように言う。
「わかってるのね、妖狐のお嬢ちゃん。それと横島君、一緒にきてほしいのね」
ヒャクメは内心ぎくりとしたがそれを表に出さぬよう整然と答え、横島を指名する。
「え、俺だけ?何でだよヒャクメ」
「いいから。ほかの人たちは待合室にでもいてほしいのね。ホラ横島君押すの手伝って」
「ん、ああ、じゃ、いってきます」
「邪魔するんじゃないわよ。・・・じゃ、ほんとにお願いね、ヒャクメ。小竜姫にもよろしくいっておいて」
「わかったのね」
ヒャクメは勤めて軽くてを振ると、横島を伴って中へ向かった。

 神殿内。おキヌはすでに聖天大聖の待つ奥の間へ通されている。すでに「治療」は始まっているのか。
 横島は応接間のようなところで一人、ぽつんと待たされていた。
「なんだよ、俺なんかに何の用があるんだ?」
疑問をわざと口に出すあたり、不安が隠せない現われだ。頭を掻いたり鼻をいじったりとそわそわしている。
「横島さん」
そこに小竜姫が何時の間にか姿をあらわした。
「あれ、小竜姫様。おキヌちゃんのほうは・・・」
「今聖天大聖老師が儀式の手はずを。後30分ぐらいかかると思います」
「そうですか」
「で、それまでに話しておかないといけないことがあります。・・・ただしあなたがどうしても聞きたくないというのでしたら話さずにおきましょう。おそらくは現世では直接関係の無い事ですから」
「・・・死んだ後って事ですか・・・、確かに関係ないっていったら関係ないんでしょうね。でもそういう言い方されると、なんか気になりますね」
「聞きますか?」
「・・・聞きましょう」
横島は数秒考えたが、聞くことに決めた。なぜか聞いておかないといけないと思ったからだ。
「まず、この話をする前に誓っていただきます。この話は私たち神族以外には決して明かさない事」
「なぜですか」
「疑問は受け付けません。いいですね」
「・・・話したら?」
「そういう気持ちでいるのでしたら話せません」
「・・・わかった。絶対話さないと誓います」
「よろしい。ではお話します。これは現時点の判断ですか、横島さんの魂はすでに我々神族と同程度の力をもっています」
「魂?」
「そうです。今は人間の肉体という枠に収められているのでその力がフルに発揮される事はありませんが、肉体から開放されたとき、横島さんの魂はおそらく私以上の力を手にするでしょう」
「って待ってくださいよ、人間死んだらお終いでしょう?俺みたいのがそんな力があるなんて信じられると思います?」
「あるんです。理由は二つ一つは高出力の魂と融合した事。一つはその魂に神魔族の中でも劣らないほどに知識を刻み込んでいる事。この事によって宇宙意思の中での存在率が神族並にアップしてるんです。本来人間の魂は宇宙空間ではすぐに宇宙意思に取り込まれるのですが横島さんのように強い魂はそのまま存在しつづけ、転生を繰り返し、やがて神格化し新たに肉体を持ちます。人間から派生する神々はほとんどこのように生まれるのです」
「なんだかよくわからないですけど、小竜姫様もそう生まれたんすか」
「いえ、私は神と神の間に生まれた神の子です。神界ではほとんど子供が生まれる事は無いんですけどね」
(注;寿命は長く致死率が低い生物はそのぶんそれだけ子を成す確立が低くなるというのが生物学上のセオリーである。神族も生物に近いのでこれが当てはまる。下っ端はそうはいかないようだが)
「それはともかく、横島さんはヒャクメの計算上、死後数年ないし数十年で神格化し、神か魔族になると思います。その時は神族が横島さんを引き取る事になっています」
「・・・なんかぴんと来ない話しっすね」
わけが分からないと首を横に振る横島。
「まぁそうでしょうね。少なくとも生きているうちは人間ですからね。でもおキヌちゃんはそうもいかなくなってるみたいなんです」
「え?」
「彼女の魂はすでに長い時間人間界に留まったため人間界に存在する限界を超え、消え去ろうとしています。それを防ぐためには彼女の魂を神格化させるしか手が無いんです。はっきり言って」
「それってつまり、神様になるっきゃ手が無いってことですか?」
「そうです。ただししばらくは人間の姿で人間界にとどまる事になるでしょう。かわいそうなのは子供が成せなくなる事ですね。神様は規律で人間との間に必要性が無い限り子を成してはいけないんです」
「それって人間とは結婚できないってことですか?」
横島は自分で言っておいてくだらない事を聞いたな、と思った。あまりに矢継ぎ早に話しを進められて良く話しがわかっていないのだ。考えて話す余裕も無い。
「・・・例外を除いて。たとえば横島さんは時期神候補だからオッケイです。ルシオラの事もありますし上ではそれが好都合だと思ってるみたいですね。でも私は・・・」
「・・:・小竜姫様?」
「私は賛成・・・しかねます」
小竜姫はうつむきながら呟くように、その言葉を喉の奥から搾り出す。

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