ザ・グレート・展開予測ショー

魂の旅V


投稿者名:ツナさん
投稿日時:(01/ 3/20)

 妙神山の神殿を建て直すとき業者がわざわざ作った裏道を、一台の救急車が走り抜けていく。
「もっと急いで!速く!」
救急隊員に怒鳴りつけているのは、美神だ。キャビネットに載せられたおキヌの手をしっかりと握り締めながら、半ば狂乱的に叫ぶ。
「無理言わんでくださいよ、ただでさえオカルトGメンの依頼とはいえこんな場所まで走らされて・・・」
救急隊員の方はたまったものではない。急患だといって飛んできてみればオカルトGメンのお偉いさん(西条君です)が待っていて、急いで妙神山まで運べというのだから、もう何がなにやらさっぱりである。
「本当に病院じゃなくっていいんですか、こんな何も無いような山の中・・・」
疑問をぶつけてもただ急げとしか言われない。終いには17、8の少年に刃物を突きつけられて脅される始末である。
「しかし、何でこんな事に・・・」
西条も話を聞きつけて一緒に救急車に乗り込んでいた。何か役に立つ事は、と考えたんだろう。今も弱りゆくおキヌにずっと霊波を送りつづけている。
「知るかんな事!!それよりもっと気合入れろよ!西条!!!」
「君に言われんでもわかっているさ!」
「喧嘩なんかしてんじゃないわよそこの馬鹿二人!!!」
ぴりぴりしているタマモに怒鳴りつけられてぐっと黙る馬鹿二人。
「そろそろ着くわよ」
美神が道の先を見ながら伝える。

「と、言う事です、老師」
小竜姫の話を押し黙って聞いているのは岩猿孫悟空、もとい聖天大聖老師である。ひげを指でなぞりながらただただ話に耳を傾ける。
「うむ、話はわかったが・・・小竜姫よ、おまえはそれでいいと思うのか?」
キセルの中の灰をぽんと火鉢に捨てながら小竜姫に尋ねる。
「ええ、けっこうです・・・上の命令には逆らえませんからね」
「あの横島という男・・・ああみえてなかなかの逸材ぞ。このままいけばおまえの良き伴侶となったろうに・・・」
「止めてください老師。それは先の話でしょう、彼が人間の生を全うしてからの話です」
聖天大聖にいたずらっぽく言われ、顔を赤くする小竜姫。あえて否定はしない。もしかしたら悪い気はしていないのかもしれない。
「うむ。横島がが後々、かの卑弥呼や道真、将門のように神として、もしくはそれに限りなく近い形で転生するのはまず間違いないからな・・・」
「ええ。神族となるか、魔の物となるかは別ですが」
「あれは魔には出来ぬよ。また適応不全の魔王を生み出すつもりは、あの上層部にもあるまい。ならばせめて気心の知れた神族の元へおいておくほうが安全と考えるじゃろう」
キセルにタバコを詰め、火をつけながら言う。
「だがのおキヌという娘は別だ。あれは言うなればそう、我が師、玄奘三蔵に似ておる。
もっとも半分は、というべきか。我が師は確かに徳のある僧であったが、同時に、それこそ横島のごとく、いやそれ以上に色好みだったのじゃ。ぶっちゃけた話、当時の聖域天竺におった女神に片っ端からちょっかい出して半殺しの目にあってのう・・・。よって神にはなれなんだ」
(注、三蔵玄奘がとんでもない破戒僧であった事は史実らしい)
その様子を思い出したのか苦笑いを浮かべ、紫煙をを吐き出す老師。
「・・・あまりいい例えではないような・・・」
「人としての本能が異様に強くても聖人には変わりない。いや、純粋に本能が凄まじく強いというだけで悟りを開き神になったものもおる。たとえば阿修羅とかな。
 とにかくあの娘にはそういう素質がある。意志も強く、何千年にもなるであろう神の勤めも無事果たす心の強さもあろう」
「ええ、そうですね」
「で、おまえはそれでいいのか?」
「・・・・はい・・・」
「ふむ・・・嘘はいかんな。それではあの娘を滅ぼしかねんぞ。だからじゃな。ヒャクメが戸惑いを見せるのも・・・。心によどみがあれば、純粋な形での神格化は不可能になる」
「私は・・・神です。あせってなんか・・・」
「今までは無かったな。先が決まっておったからな。ただ今はそうはいかん。強力なライバルの出現におまえは明らかにあせっておる。いや、嫉妬か。
 まあ気にするな。われら神にも心はある。咎めもせんし非難もせん。現にわしだって極わずかだがは女子を抱きたいという下世話な欲がある」
「・・・しかし・・・」
「ま、よく考えるんじゃ。その気持ちが無ければ人界の神は勤まらんし、いざとなれば、まあそれはあの娘と話し合え。とにかくわしは結界を張る。おまえも心正しておくのじゃ」
「・・・はい、老師」
(・・・わたし、やっぱり・・・)
聖天大聖が踵を返し、奥の間へと引っ込む。小竜姫はふぅと小さく息を吐くと、困ったような、照れたような、怒ったような、なんともいえない顔をした。

続く

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