ザ・グレート・展開予測ショー

星影〜第一章〜


投稿者名:氷魚
投稿日時:(01/ 3/19)

星影〜第一章〜

「今夜は星が綺麗だ。6等星が見える…。」
老人は独り言の様にして呟き、カーテンをひいて振り返った。
「よく来てくれた。横島君。」
「はあ…。」
横島は木の椅子に座ったままこの初老の男(ちくしょう男か)をじっと見つめた。
 体つきは普通だ。黒ぶちの眼鏡をかけていて、白髭をだいぶたくわえている。頭はだいぶ白い。横島が興味をひかれたのはその眼だった。今は実に温和な眼をしている。だが、その奥に凄まじいものが隠されていそうな気がしてならない。そして──
“このじーさん…どっか…変…だな。”
人間ではない。そんな気がする。
「どうか、したかな?」
老人の声が巧みに横島の中に入り込んできて、横島は思考を中断させられた。
「いや…別に…。」
「ふむ。」

「私の名は飛野。飛野啓司と言う。この小屋で一人暮しをしていてる。歳はもう…80になるかな。…さっき君はどうやらわしが人間ではないのではないかと疑っていたようだが、私は人間だ。」
「な、なんで解るんすか。」
「フ…。」
この歳にまでなればな…というような顔をして飛野はふっと遠くを見る眼をした。そして、ふっと元の温和な顔に戻り、
「今日はもう遅い。明日またゆっくりと話してあげよう。君をわざわざここに呼んだ理由をな。」
言って飛野は床板をはずした。はずした所にはとってが付いた鉄の板があった。
「?」
鉄板を引き上げながら飛野は言った。
「戦時中の塹壕を私が少しばかり作り直したものでな…。」

横島が塹壕の中に入って行き、飛野は鉄板と床板を元に戻した。飛野はさっきまで横島が座っていた木の椅子に腰かけ、
「『私は人間だ』…か。人間な…。」
飛野はふと立ちあがった。窓のそばに行き、カーテンを開け、空を見て呟く。
「全ての星は動き出す…赤い凶星も。蒼き流星もその内現れることだろう。伝承の通りだな…。」

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