ザ・グレート・展開予測ショー

黒い呪いと天使の笛の音(5)外伝


投稿者名:AS
投稿日時:(01/ 3/13)


「・・・試合放棄とみなし、勝者、氷室キヌ!」

どうして・・・自分は気が晴れないんだろう・・・

「や、やった・・・! おキヌちゃん勝ちましたよ!」
「・・・・・・」

あの娘が勝って、嬉しいはずなのに・・・

「・・・・・・」
「おーい! 美神さーん!」

・・・どうして? せっかくおキヌちゃんが・・・

「・・・・・・日本一のサディス・・・」

             バキッ

・・・どうして? ・・・せっかくおキヌちゃんが勝ったのに何で喜べないんだろう・・・

「し、しっかり聞いてるやんけ・・・(ドクドク)」

余計な一言への『適度』な仕置きは怠らなかったが、やっぱり気は晴れない・・・

「・・・・・・ふぅ・・・」

晴れない気分を押し出すように、私はため息をついた。



黒い呪いと天使の笛の音(5)外伝



「よし! さっそくおキヌちゃんのとこに・・・行って来ますけど、いいっすか?」
「(ジト・・・)好きにすればいーじゃない」

相も変わらず 超人的な『怪』復力で立ち直った『煩悩男』が言い出した言葉に、そっけなく対応する。

「あ、美神さんは・・・」
「変な気ぃ回さんで、とっとと行けっっ!!!」

              ドカッ

いつもはまるで鈍く、こういう時にだけ鋭い『煩悩の化身男』を軽く蹴飛ばす。 (ちなみに真実は『ドガァッ!!』なのだが)
『煩悩の権化男』は少しよろめきながら階段へと歩いて行った。

「・・・・・・」

一人になり、静かになると、またため息が・・・

            バンッ!!

「あーもー! 何柄にもなくたそがれてるワケ!? うっとおしい!!」

静かでなくなったので、ため息をつけなくなった。

「だいたいせっかくおたくんトコの娘が勝ったってのに! 何沈んだりしてるワケ!?」
「・・・・・・」
いつもならぐうの音も出ない程、言い負かすのだが・・・どうしてもそんな気分になれない。
「・・・・・・」
こっちが黙ったままなのを見て、エミが神妙な顔に・・・と思った次の瞬間、ニヤニヤし始めた。
「なーるほど・・・そ・う・ゆ・う・コ・ト? まさかここまでとはね・・・おたく物凄い親馬鹿になるかもね。」
「・・・・・・」
エミの全て分かったといいたげな『ツラ』を見てると むしょーに、腹が立ってくる・・・が、それでも言い返すまでにはならずに黙って試合の方に目を向けた。
「おキヌちゃーん!」
「あ! 横島さん!」
ちょうど下では 『煩悩全開男』とおキヌちゃんが・・・
「おたくが浮かない顔してる理由は二つ、一つ目は・・・自分が知らないうちにあの娘が成長してたのが、悔しいんでしょ?」
「ーーーーー!!?」
ふいに耳に入ったエミの言葉に、思考が止まった。
「な、なな! 何の根拠が・・・」
自分がどもっているのが分かるが、止めようがない。
エミはニヤニヤしながらこちらを見つつ、また口を開いた。
「そりゃー悔しいのも分かるワケ・・・何せおたくがあの娘には無理と判断して棄権させようとしたのに、あの娘はあきらめずに勝ったんだから!」
「・・・・・・」
さっきまでとは全く違う理由でだが、ただ黙っているしか出来ないこちらに、エミはなおも喋り続ける。
「だいたいおたくは身内の事過小評価してるワケ・・・敵の力量計るのは得意でもね。」
「・・・・・・」
いつのまにか周りの連中が騒いでるのに気付いたが、場所を変える気にもなれない。
なおもエミは言いつのる。
「横島にしても、あの娘にしても・・・こっちから見れば超強力なライバルに見えるワケ! 普段一緒に過ごしてる程、そうは思えなくなるけどね。」
「・・・・・・」
「まあ・・・おたくは自分の知らないところで何かがどうこうなるのが気に入らない性質だからね、おたくが沈んでた理由の一つはそれ・・・もう一つは・・・」
本能的に聞きたくない事だと分かるが、こちらが動くより早く、エミが口を開く。

『あの娘を信じなかったからなワケ。』

「・・・・・・・・・・・・」

・・・完全に固まってしまったこちらの肩をエミが叩いてきた。

バンッ!

「さ! 理由が分かったんだし! とっととあの娘んとこに行くワケ! 後はおたくの自由なワケ!」

「・・・エミ・・・」
「!」

エミはこちらの視線に気付くと、視線をそらし、身を翻した。

「さ、さっさと行くワケ!!」

うろたえるエミの態度に、幾分余裕を取り戻した私は・・・

「さすがは三位止まり・・・カウンセラーに転職したら?」

そういって走りだす自分の後ろで罵声が聞こえたが、構わず先を急ぐ。

「おキヌちゃん!」

自分が渡したお守りを片手に、おキヌちゃんが振り向いた。
「美神さん! 私ー・・・」
「おキヌちゃん!」

駆け寄ろうとして来るおキヌちゃんを その場にとどめ、ゆっくりとおキヌちゃん(ついでに『煩悩1080男』)の側に息を整えながら 近づいていく。

「あ、あの? 美神さ・・・」
ガバッ!
ふいにおキヌちゃんを抱きしめ、小声で囁いた。

(・・・ごめんね、おキヌちゃん・・・)信ジテアゲラレナクテ

「! え・・・? 美神さん今何て・・・」

おキヌちゃんの問いには答えず、ただこうしていようとした時・・・

「ふ、不潔じゃーーーー!!! 美神さんにそんな趣味がーーーーーー!!!?」

思考が180度・・・いや! 540度回転し、燃え上がった気がした。

バキ! ドガ! ガガガガガッ!

「ギャーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッ!!!!!」

余計な事を口走った『煩悩馬鹿男』を紅い海に沈め・・・おキヌちゃんの方を向く。

「あああ! よ、横島さん・・・」
「へーき、へーき! ここの医療斑みんなヒーリング使えるから(・・・試験受けに来た人専門だけどね・・・)大丈夫よ」
「は、はぁ・・・」

戸惑うおキヌちゃんを横目に、私は背筋を伸ばしながら・・・


「さて! とりあえず一回戦突破のお祝いしなきゃね! おキヌちゃん何食べたい?」



AS「とりあえず外伝です・・・背景の書き方が足りないと言われたので、美神の(自分のイメージの美神ですが)視点で書いてみました(背景の説明にも気をつけながら・・・)初めての書き方なので、不安ですけど、読んでもらって 面白かったら嬉しいです。






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