ザ・グレート・展開予測ショー

迷魂の横島


投稿者名:Shinsho
投稿日時:(98/ 2/23)

初投稿です。
Shinshoといいますが、どうぞ宜しく。
最終回予想のつもりで構想してたんですが、この話にはまだ続きがありそうです。
きっと本編も、まだ続きそうな終わり方をするのかなぁ・・・などと考えていますが、
やっぱりまだ終わってほしくないなあというのが本音です。ちなみに「迷魂」という
のはおいらの造語です。
****************************************


いい朝だった。
朝型の人間であればすがすがしく散歩もしたくなるだろうし、低血圧の人間なら柔らかい窓からの日差しの中で極上の二度寝が楽しめるだろう。真に、万人にとってのいい朝だった。
春先の風に長い黒髪をなびかせて歩く彼女は、どうやら前者のタイプのようだ。すれ違うものは男でなくとも振り向き、笑顔になってしまいそうなその容貌は、優雅というより闊達で、まだ10代の面影を残していた。
氷室きぬ、21歳。
外見からは想像もできないが、若手の活躍が目覚ましいゴーストスイーパー界でも選り抜きの精鋭である。特に昭和一桁生まれのベテランが多いネクロマンサー(死霊使い)の能力者の中で、彼女は期待の星であった。5年前の大戦でも重要な戦果をあげ、協会本部からの信望も厚い。
『おはようございます、氷室オーナー』
「おはよう!人工幽霊1号!」
事務所につくと彼女はまず郵便物をチェックし、自分の部屋で簡単な事務処理を済ませると、書類を持って共同の事務室に向かった。
「おはようございます!美神さん」
「あ、おはよう、おキヌちゃん」
「これ、先月までの決済と今月の予定表です。5日の仕事は私一人じゃ無理そうなんで、空けといてくださいね」
「おキヌちゃん、もうアシスタントじゃないんだから、そんな事務処理やんなくていいのよ。私だってそのくらいできるんだから。」
美神は明日やろう、明日やろうと伸ばし伸ばしにしてきた事務処理を朝の数分で済ませたおキヌにばつが悪そうに言った。共同経営になってから、面倒なデスクワークも自分でやろうと思ってはいるのだが、どうしても甘えが出てしまう美神である。最もおキヌのほうはそんな関係が気に入っているので、美神をとがめだてするばかりか進んで以前やっていたような仕事もこなしている。
「いいんですよ、私こういうのすきですから・・・・。それに、アシスタントだって、まだいないじゃないですか。」
「そうなのよね〜。こないだ雇ったのも、活きがよさそうだったのに、たった3重の結界障壁のなかでほんの5時間自縛霊を取り押さえさせただけで逃げ出しちゃったし・・・」
「そういう仕事を初日にさせるから逃げ出されるんです!!!」
どアップでつっこんで、はあ、とため息を吐くおキヌであった。つくづく、あのころのアシスタントは頑丈だったんだなあと、美神もつられてため息を吐く。あのころは・・・。
つい、また「あのころ」を思い出しそうになって二人とも鼻につんとした感覚を覚えた。あわてて美神が話を戻す。
「とにかくね、出入決済ぐらい自分でやるから、おキヌちゃんも忙しいときには私にいろいろ言いつけてよね!!」
美神さんに決済を任せたらまた税務署が来てしまう・・とは言わず、おキヌは素直に「はい」といった。
電話が鳴った。デスクに座っていた美神がとる。
「はい、美神・氷室除霊事務所です・・・ああ、久しぶり、元気で・・・え、なに、うん、
うん・・・」
電話に応対する美神の表情と声が徐々に深刻なものとなっていくのを見て、おキヌは少し不安になった。電話を置くと、美神は一層沈痛な面持ちでほおずえをつく。
「タイガーと雪之丞が帰ってくるわ」
「え、ほんとですか!!久しぶりですね!」
「それがね、ただの帰国じゃないらしいのよ。何でも彼らじゃ手におえないから私たちに、特におキヌちゃんにお願いしたい仕事があるって・・・。彼ら二人がかりでだめだったとなるとよほどの事だわ」
「私に依頼・・・?」
おキヌは戸惑った。5年前の大戦後、タイガーと雪之丞は共に修行に入り、2年前から二人で共同で香港で除霊事務所を開いている。特にタイガーはここ数年でもっとも実力をつけたGSで、大戦後のGS資格取得試験で平均試合時間1分23秒というとんでもない記録を打ち
立てて主席合格し、今やアジア全域でも有数の除霊実績を持つ、第一線のGSとなっている。かつて、「秀才はどんなに努力しても天才にはかなわない」と言い放っていた美神も1目おかざるを得ない存在に成長していた。その彼らが、報酬の厳しい美神に電話してきたという事は・・・。二人とも落ち着かない気分になり、黙りこくってしまった。
タイガーと雪之丞が到着したのは、昼前のわりと中途半端な時間帯だった。ささやかな再会を喜ぶ挨拶の後、さっそく本題に入る。
「場所はニュージーランド沖の太平洋上。二人でいったん除霊を試みたんだが、とても手のつけられる状態じゃない。現場じゃ霊空間まで歪んでて、近づくのもやっとだ。霊体自体に悪意はないからおれたちの攻撃じゃ逆効果になる。ネクロマンサーの能力が必要だ」
一気に捲し立てて雪之丞がおキヌを見る。変わって美神が質問した。
「いったいなんなの?」
「生前に心残りがあったり、何らかの事故で成仏できなくなった霊体が、路頭に迷って苦しんでるって事でノー。さっきもいったように霊体自体には悪意はないんじゃけど、霊体の心理の霊波動が周囲に影響して海上の事故が多発したり、観光客が減ったりでうちに依頼が来たっちゅうわけで・・・」
「なんだ、一番よくあるパターンじゃない」
「そうだ、ただしその規模が尋常じゃない。あのままだとそのうち気象にまで影響して、とりかえしのつかない事態になるな」
「そ、そこまでじゃ、私なんかいってもどうにもならないんじゃ・・・」
「いや、おキヌちゃんの能力なら、成仏までさせられなくてもいったんその波動を治まらせる事はできるとおもってノー、無理いって申し訳ないが、うちらも手伝うけえ、ひきうけてくれんかいノー」
タイガーが巨体を縮めて懇願する。雪之丞が続けた。
「現時点では除霊は無理だろう。危険過ぎる。でも、害の無い状態にまで安定化させる事はできるかもしれない」
霊体は、それ自体が存在する事が現世では不安定であるが、こういった場合については前例もあった。とりあえす害の無い状態にとどめて、しかる後にゆっくりと除霊するという方法である。現に、害が無いという理由で除霊されていない幽霊はどこにでもいるのである。ただしそのほとんどは影響の少ない小さな霊で、今回のような霊体はいったん沈静化してもいつ影響が出るか知れたものではない。波動の巨大な霊体の存在は、それ自体が霊の善悪に関わらず、危険であった。タイガーと雪之丞がいったのは、苦汁の選択である。
「頼む、おそらく今回の霊体はおキヌちゃんしか無理なんだ・・・」
雪之丞も頭を下げ、おキヌはすっかり戸惑ってしまった。自分にそんな事ができるのか・・・。その時、美神が口を開いた。
「ちょっと待って、おキヌちゃんでなきゃ無理って言うのはどういう意味?」
「う、それは・・・」
「・・・何かまだ、隠してるわね・・・?」
雪之丞が、観念したように肩を落とした。
「しょうがない、どうせ、ばれちまうことだしな・・・。あれは・・・横島だよ。」
「・・・えっ・・・?」
「わしの精神感応でわかった・・・あれは、横島さんじゃった・・・」
タイガーも雪之丞も、二人の顔を直視できず、うつむいたままである。
と、唐突に、美神がショックのための数秒の沈黙を打ち破った。
「あんたたちね〜!!どうしてもっとそれをさきにいわないのよ!!!!」
「・・・・は?」
「おキヌちゃん、すぐ支度よ!!霊体安定用の護符、たっぷり用意して!!それから精霊石もね!幸い新しく仕入れた高速飛行用の人工式神があるからそれ屋上に設置して!!ええとそれから・・・」
「また横島さんに逢えるんですね!!どうしよう、なに着て行こうか、あ、そうだ、美神さん私の笛のグレードアップ、すんでます?」
「それならばっちりよ、今までの3倍の威力はあるわ。あ、そうだ、長旅になるからお弁当も作ってね、もちろん3人分よ!!」
「は〜い!!!」
「おいおいおいおまえら!!!」
「あれ、あんたら、まだいたの?」
「・・・・あのな、かつて生死を共にして戦って戦死して行った戦友がだな、成仏もできずに太平洋の海上で荒れ狂っているんだぞ!!な〜にをそんな嬉しそうに・・・」
「なにいってんの!うちのアルバイトに生きてるも死んでるも無いわ!!おキヌちゃんだってまえは幽霊だったんだからね!現世にいるなら、仕事に戻ってもらわなきゃ!!」
「お、鬼だ・・・」
「じゃけど、記憶を残しているかもわからんのに・・・」
「大丈夫です!!横島さんがわたしのことわすれるはずありませんっっ!!!」
「私たち、でしょ、おキヌちゃん!!」
「ぁ、あれ?私、そう言いませんでした?」
「とにかく支度を急いで、げ、なにこの髪、最悪だわ・・・おキヌちゃん、私ちょっと出てくるから・・・」
「ぁ、まって、美神さん、美容院、私もいきます〜!!」
完全にデート前の女子高生と化した二人は、どたばたと出て行ってしまい、後には呆気に取られたタイガーと雪之丞がぽつんと残された。
「な、なんちゅう不謹慎な奴等だ!!あれでもごおすとすいーぱあなのかっっ!!!」
「うう、かわいそうに横島さん、あれじゃ2度と成仏できへんノー」
「こうなりゃやけだ!!タイガーおまえ同窓会名簿でありったけの横島の友達に電話しろ。おれはゴーストスイーパー方面に連絡する!」
「何を連絡するんじゃあ?」
「決まってるだろ!!『横島忠夫迷魂祝賀パーティー』の連絡だよっ!!」
ばん、とタイガーの背中をたたいた雪之丞は、どうやら一番不謹慎なGSであるようだった・・・。
****************************************

すっごく長くなってしまってすみません・・・。ともかく、こんな最終回はどうかなと思って書いてみました。なぜ、南極で死んだ横島が太平洋海上にいるのか、ルシオラ達はどうなったのか・・・。その辺の構想が実は先に逢ったのですが、あまりに暗く切ない描写になってしまって、これはGSの世界ではないなと思ったんで出すのはやめました。あくまで展開予想ですからね、ここのコーナーは。そういうわけですからその辺は皆さんで自由に想像してください。(^^;
こんな読みにくいの最後まで読んでくれてありがとうございます。新参ですがこれからも宜しくお願いします。


今までの 賛成:9 反対:1
コメント:

[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa