ザ・グレート・展開予測ショー

厄珍堂書庫の第3楽章


投稿者名:トンプソン
投稿日時:(01/ 3/ 9)

「すまないアルなーオキヌちゃん達。突然お願いしちゃって」
「いいんですよ。本当は横島さんが来る予定だったのに」
「風邪あるかー、今は馬鹿が風邪をひく時代あるかぁー」
そこで急遽弓と魔理に代理を頼んだ所、快く引き受けた二人であった。
「しっかし、あんたけちかとおもってたけど、案外ふとっぱらだねー」
「本当ですわ。厄珍さん」
美人から言われて満更でもないが女好きな厄珍も高校生は範疇でないらしい。
又バイト料が魅力だ。ジャンクストーンとは言え精霊石だというのだから。
だからこそ、保護者もこのアルバイトに了承したのだが。
「けどよー単なる棚卸なのに大変だぜ。何せほっとんどの品がオカルト関係だもんな」
「そうあるよ。一文字ちゃん。だから普通の人間には頼めないあるからな」
「ほら、口を動かす前に手を動かしましょ」
ここでも委員長面をするが、二人には慣れっこだ。
午前中から始めた棚卸もようやく目処がついてくる時間はお昼を少し過ぎた頃だった。
「おーい、そろそろ飯にするあるか?」
「そうですね。私おなかすいちゃいましたわ」
「オキヌちゃんに賛成!私もぺこぺこだよ。弓は?」
「そうね。休憩を兼ねますか。でもアルバイトってこんな楽しかったなんて!」
出前取るアルカ?と聞くとオキヌちゃんが折角だから作りますとエプロンを付ける。
あまり人を入れない厄珍堂の内部である。
中には除霊不能の品々やオカルトに関連した書籍が所狭しと並んでいる。
「こーゆー店にこんなのがあってもおかしくないけど、不気味だよなー」
「あらら、そんな事で一流のGSに・・」
と弓が最後まで言い終らない内にある書庫に目が釘付けになった。
「あん?どうしたんだよ弓」
魔理の話しも上の空といった風体だ。
「厄珍さん・・このボロボロの譜面は、もしかして」
「ほぉ、弓ちゃんは判ったアルカ。でもそれはあまり見せたくないアル」
どうしてと、小競り合いになる2人を余所に、
「なんでこんなのをみたがるのかなー」
ヒマをもてあましつつある魔理が書庫から譜面を取り出して一瞥するが、
「さっぱり判らんね。なんって書いてあるんだ?えーと『す、すちゃうばーと』」
事態に気づいた役珍は譜面をひったくろうとするが、先に動いたのは弓であった。
「ナイスですわ、魔理さん。でもこれは「schubert」シューベルトの事ですわ」
しかも直筆の品がどうして?と思いつつも譜面を開いてみると、
「こ、これは、交響曲七番ロ短調、通称未完成交響曲の!」
「見るなアル。しかもこれは普通の譜面とは違うあるよ!」
バタバタする厄珍は魔理に押さえつけられていた。
「まぁまぁ。あいつが好きな音楽らしいじゃないか。見せてやっていいじゃないの」
「違うアル!あれにはシューベルトの霊がついてあるアルよ」
譜面を読んでいた弓は真っ青になる。
「うそ・・。完成されてるじゃない。第3楽章があるわ。スケルツォの指示まで!」
弓が何故に緊張してるかというと、このシューベルトの第七楽章は未完成なのだ。
交響曲とは三部乃至四部形式を指すが、このシューベルトの七楽章は言わばオチが無い。
しかも自作交響曲8番は完成された音楽なのだが。
「はぁ、見てしまったアルかぁ。忘れたほうが良いあるよ」
「何故ですか?これは人類の宝になりえる事ですわ」
「弓の嬢ちゃんピアノは出きるアルか、出きるならその譜面を弾くがよろし」
はいと、張り切って一応障霊の残るピアノに座っていざピアノを弾き始めると、
「なにか変じゃなくて?これって本当に・・・???」
隣でおとなしく聞いている魔理も何か府に落ちないといった顔つきである。
「これってさぁ、本当に大曲なの?どー聞いてもそこいらの童謡じゃん」
何処かで常に耳にするような、言いかえれば何の変哲も無く、さながら練習曲のようだ。
「何故?私の腕かしら・・」
少々落ち込む弓だが、
「違うアルね。こーゆー」
シューベルト直筆の譜面をしまいながら、
「こーゆー類の物は霊となった紙自体が勝手に続きを書く事があるね、
 しかも残ってるのは元になる作家のたった一粒の才能だけアル。とても聞けた物じゃ」
ないアルね。と笑う。
「だから、厄珍さんは私に見るなと」
「そうアル。これを見せてシューベルトに嫌悪を覚えたって人もいたね、だから見せない
 他にも絶筆書籍の原稿なんかもここにアルよ。まぁ人間の死は何時来るか判らんアル」
なんか、しんみりした最中、台所から物音が消えて、
「厄珍さーん、弓さーん、魔理さーん、ご飯できましたよ!」
「やた!とうやく飯だぜ」
「こら、はしたない、でもたしかにお腹は空きましたわ」
やれやれ、まだまだ子供で助かったアル。色気より食い気か。と
なにやらほっとする厄珍であった。

今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa