ザ・グレート・展開予測ショー

笛の音に会わせて


投稿者名:トンプソン
投稿日時:(01/ 3/ 7)

「ねぇオキヌちゃん悪いんだけど貴方はしばらく現場には来ない方がいいわ」
その仕事では美神GS事務所のメンツは少なからずの傷を受けていた。
空気が凍るような美神の一言である。だが。
「はい」
としか言えないオキヌであった。
涙をこらえ傷をいやそうとお気に入りの屋上に上がると鳥が何羽かいた。
「貴方達もう来たのね。ふふもうすぐ春なんだぁ」
涙ぐむ目を裾でぬぐってから笛を出して口に当てるが、音が出ない。
「あたし・・どうしちゃったんだろぅ?」
下では、横島が半死半生の身ながら抗議の声を出していた。
「美神さんどうしてオキヌちゃんにあんな事を」
「GSってのは遊びじゃないわ。今回もオキヌちゃんがしっかりしていれば」
横島もそんな傷は負ってなかったでしょうに。と言った。
「彼女心の優しすぎる所為ね。笛が使えなくなったのよ」
「でもこのままじゃぁ」
「これは彼女自身が解決することよ」
美神にべも無い。そして横島自身も何も出来ないのだが。

しばらくして、
「オキヌちゃーん。お使いおねがいしたいんだけどー」
「はーい」
今は完全にお手伝いさんの仕事のオキヌである。
「これをカオスのおっさんのとこに持っててくれる?」
と古い蔵書をオキヌに渡す。
「分かりました。じゃぁ」
と出かける用意をするオキヌに、
「オキヌちゃん、ネクロマンス笛、持ってるでしょうね?」
「はい。一応は」
「うん、それでいいわ。別に急がなくていいからね」
さして遠くはないので、すぐにカオス宅につく。
丁度マリアが廊下の掃除をしていたので、
『ミスオキヌ・ようこそ・カオスは・部屋にいます』
丁寧とは言いかねるが挨拶を交わす。
「こんにちわ、マリアさんここがカオスさんのお宅ね」
とインターホンもついてないのでドアを叩くとカオスが出てくる。
「おぉ。美神からの使いか。ワシの貸した本じゃな。まぁ御茶でもな。マリア」
『イエッサー・ドクターカオス』
この屋にも御茶はあるらしい。珈琲をいれる匂いがする。
「時に嬢ちゃん、なにやら元気が無い様に見うけるが?」
「いえ、そんな事はないですよ」
空笑いが見破れぬ程耄碌はしとらんわ、とカオスが言うと、
隣の部屋に有る雑多な部屋から何やらを持ってくる。
「バイオリン・・ですか」
「そうじゃよ、嬢ちゃんにも霊力があるなら見えるじゃろ?」
オキヌが目を凝らすとこのバイオリンには憑き物が見え隠れする。
「これは・・?」
「ま、昔昔の有名な音楽家じゃ。おい以前話したのはこの子じゃよ」
『ほぉ。どんな音楽家よりも綺麗な音色を出すてのがこの子か』
「あぁ、そうじゃオキヌ、ちいとすまんがこの男と付き合ってはくれんか?」
「あの・・今の私は除霊なんてとても・・」
馬鹿を言っちゃいかんとカオス。
「すこーし、こいつと付き合えば良いのじゃよ」
『まぁいいさ、あんたの音色を聞かせてくれよ特に悪さはしないさ』
笛を口に持ってくるが、迷いが有るので音など出てくるわけも無い。だが、
『悪くは無いが、迷っているのか』
とその霊は言ってから、バイオリンを持ち上げ、弦を出すと、バイオリンの音色が。
とその音色は時間が発つ度に更に技巧が増してくる。オキヌも少々驚く。
「カオスさん。この方は?」
オキヌの問いには答えずに、
「どうじゃ?バイオリンとフルートでは趣が違うが良い音になるとは思わぬか?」
おそるおそる、口をつけると、ちょっとだけ音がでた。
「でも今の私には一緒に音楽をやるだなんて・・無理ですよ」
躊躇を見せる。カオスもちょっと顔が曇る。だが、
『おい。恐れるな。心に出た音をあんたは出してくれればいいさ』
はい、と言ってから、再度笛に口をつけると自分の好きなフレーズが自然と出る。
『なかなか神秘的な音楽だな。もう一度やってくれるかな?』
「はい。音楽家さん」
オキヌのフレーズに会わせるかのようにその霊は音楽に緩急を付けた。
そしてフィナーレの瞬間に。
『おい、カオス俺はお前と知り合えてよかったぜ。また呼んでくれや』
そういって只のバイオリンになっていった。
最後のフレーズが終わった後オキヌに笑顔が戻った。バイオリンを片付けるカオスが、
「どうだったかな?お嬢ちゃん」
「はい!有難うございました」
「ネクロマンサーというのは心一つで力を発揮する。今日の事を少しでも覚えててくれ」
このお使いは少々時間を費やしたがとても重要な寄り道であった。
「ミスオキヌ・元気になる・マリア・うれしい」
「そうじゃな。さて美神に電話じゃオキヌの嬢は立ち直ったとな」
バイオリンケースの中で最後にこの男の意識は一つの言葉を発していた。
『俺もまんざら捨てたものではないな。生きているうちは悪魔なんて言われたがよ』
彼は18世紀イタリアが生んだ音楽家はそのテクニック故、悪魔と恐れられたのだ。
名をニコロ・パガニーニと言うがオキヌにとってどうで良いことであった。

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