ザ・グレート・展開予測ショー

極楽大作戦 de 時代劇 巻之拾五


投稿者名:トンプソン
投稿日時:(01/ 3/ 2)

さて、
西片の山奥には騒動主である風炉努留と死津喪比女がいる事はたしかだが、
大名、町人を問わず別宅(別荘)を構える地域にはみあたらなかった。
「どこにいるのでございましょうか?御奉行」
「この辺りはマタギ衆(きこり)しか入らぬ山道、探すのは難儀じゃな」
鬱蒼とした森の入り口である。
ここには、
町方奉行の西条に、同心筆頭の関、そして新米の武等都比延蕩(ピート)が先にいて、
後から調査の結果、この辺りにいると確信した家老の毒田薫栖(ドクターカオス)、
そして、死津喪比女を仇と狙う小笠原流祈祷師のエミ。
京から派遣された氷室屋と仮名の忠夫、そして、
「どこえいくんだい?旦那ぁ」
そう、食人鬼と奉られていた虞螺(グーラー)である。
オホン、西条、咳払いをしてから、
「横島様?いったいどのようなお積もりですかな?」
「わかっとるわい。せやけど、しょーがないんや」
西条は思ったであろう、結婚してるにも関わらず、他の女と、俺には・・・・と。
「僕がいるじゃないですか、御奉行様」
「のわぁ!耳に息を吹きかけるな、関!」
「哀れよのォ、この歳で独身とはな」
子は出来なかったが夫婦生活は円満な毒田薫栖の心よりの台詞であった。
「そんなことより!自席家老を探す事が先決です。なにか手がかりを見つけませんと」
「ですが御奉行、あたりも大分暗くなりました、このまま山に入るのは危ないかと」
「そうだな、時に虞螺とか言ったな。お主この辺りの物の怪であろう、何か知らないか」
「残念だが知らないね、それにあたいはもうちょっと北に行ったろこに住んでるし」
「北?今藩をあげての干拓をやっている場所か?」
「そう、住んでる場所がなくなりそうだからって人を襲ってるのはあたしさ」
柄に手をかけた西条を止めたのは奉行毒田薫栖である、
「今は争っている場合か、虞螺殿、御協力頂けるならこのpイこの山を進呈するが?」
「これは好条件、しかし約束は?」
「これでも家老じゃ」
「それなら、実はあたいは自席家老に勧誘されてきたんだけど、まぁいっか」
だが、肝心の居場所は虞螺も知らないという事だ。諦めて引き返すか?の意見も出たが、
「せやが、今がチャンスやな、相手さんも責めてきたんや、奇襲はキクで」
たしかにな、と西条が呟く、そこにカラクリ人形の毬亜(マリア)がやってくる。
「毬亜どうしたのだ?」
「唐巣寺の・和尚様・これもってけと・毬亜に・渡した」
と袋の中身をあけてみると、
『ぷはー!苦しいってば、逃げないわよ』
「私の・速度には・ついて・これないです」
と、苦しそうな顔をしていた小妖怪の鈴女である。
「忘れてましたわぁ、あんさんなら妖気を辿っていけるからなぁ」
当初、何時もの如く駄々を捏ねていたが、一呼吸をすると神妙な顔付きになる。
「おやあんたも感じたかい?森の悲鳴をさ」
『うん。ねぇあんたたち本当に森に入りたいの?危ないよ』
「覚悟は承知の上。で鈴女お主には妖気の最も臭いところを教えて欲しい」
『うん。こっから歩いて半里ってところね。でもみんな気をつけて』
何を気をつけるのか、森も手前は普通の木々であったが、奥に行くにつれて、
なにか、そう見張られている気を感じるのだ。
その一寸した広間のような場所に出ると、木の実が落ちてきたと同時であった、
木々がまるでいきてるかの如く、枝葉で征伐体を狙うのだ。
「なんじゃと!毬亜、皆の身体を守れ!」
「はい・毒田薫栖」
毬亜に次いで樹木の攻撃から人間を守っているのが虞螺である。
だが、無限の弾があるが如くの森を力でねじ伏せる事が出来ようか。
「おい小妖怪、あんたは森を操る事ができるんだろ?」
『駄目!言う事聞かない!』
毬亜が傷つき、虞螺にも血がにじみ始める頃には人間連中も生命の危機が訪れる。
その様子を風炉努留が作った実用魔道具『中継虫』でみていた。
「ふふふふ。馬鹿な奴等だ、罠を張ってないとでも思ったかのぉ、死津喪比女」
「あんたも面目躍如だね」
それは間違っていた。
突如屋敷に何やらが落ちる音がしたと同時に屋根から大量の木屑が落ちてくる。
「おい、タコの妖怪、何かがくるぞ!」
その瞬間、小笠原流祈祷師エミが降りてきた。続いて皆が降ってくる。
「何!貴様等?なんでここに?」
「あれはなぁ、ワイが作った仮の映像や」
『だってー、あんな一部と森全体とどっちが強いと思う?』
森の攻撃はあった、だが、虞螺が鈴女と一緒に森の精である大木を発見して、
「御願いだ、力をかしてくれ!」
鈴女の力でほとんどの森の木々が協力してくれた事になった。
更にここまでの道のりを教えてくれたのだと、西条は言った。
「小癪な」
歯噛みしたところでもう遅い。
「貴様等ぁ!我が剣で死ねィ!」
と猛然と向かった用人の夏傍琉数寄(ゲソバルスキー)も、
「甘い!」
と西条の一刀で切断されてしまった。
「はぁ、流石やナァ」
しかし、敵は死津喪比女である。
「お主達も大人しくしていれば生を受ける事も出来た物を、童の力みせてやろうぞ!」
周りの大地が震えたかと思った瞬間、何十との数の死津喪比女が現れる。
「童はいわば植物の精、大地があれば、かように体を増やす事も可能よ」
流石にてこずる皆だ。
特に関の場合は単身の殺傷は得意とするが、団体戦は向いていないのは真実だ。
小競り合いを続けていたが、
「オタク達、聞いて欲しいワケ、私がこれから最高の魔法を放つワケ」
「なんじゃと?」
「でも時間が欲しいワケ、私に盾を!」
次々に現れる死津喪比女の化身を一機に吹き飛ばすならと、エミの周りに、
「ですが、混戦での撤退は下手をすると・・・」
「そうじゃな、武等都、じゃがこのままではわし等も危ない。皆でエミ殿を守れ!」
たしかに、その一点に攻撃は集中する。
「お主が魔法を使う前に皆食うてやるわぁ!」
しかし、この盾になった連中も尋常の人々ではない。
関は悪鬼の虞螺に攻め立てられる形でなんとか持ちこたえた。
「たまったってワケ」
との号令と共に盾となっていた連中はみなしゃがむ。
「何?」
との死津喪比女の大音声が響いた後、
「霊体消滅波動!!」
と、気合の波がエミの体から迸った。
断末魔の中、一匹だけがかろうじて生き延びた風体であったが、
「くそ・・・おい、せめて童の命だけは・・ゲッ!」
靴で煙草を消すが如くの格好で最後の一匹を踏み潰したエミであった。
「オタクと同じ事をいった師匠は殺されたワケ」
自席家老はいなかった。あの混戦で見当たらなかったのは逃げ道があったからだろう。

この屋敷にはやはり魔物を製造したかであろう器具の部屋があったという。
「これで魔物を作っていたのか、なんという奴じゃ。なんとかせねば」
皆の治療を文殊で施す忠夫であった。そしてお前にもと、虞螺に文殊を与えた所、
恋心も一緒に回復してしまったようである。その虞螺は
「さて約束だよ。この土地を貰おうか」
と、しっかりしているのだ。
「よかろう。じゃが、人間をくってはいかんからな」
「あぁ、アンタ達を見てると人間も満更じゃないって思うさ」
その虞螺が指を指す先には、
師匠の仇を取れたエミが声を殺して涙を流していた姿があったと言う。

これは後日談でもあるが、この森の鎮守者として虞螺は住む事になった。
そして、この地方の節分は『福は家、鬼は森』と言う独特の言いまわしが伝わった。

「御奉行!此方を、恐らくは死津喪比女が掘った穴かと思われますが」
その穴は一人がやっとの空洞だが、どこまでも続く不気味な穴であったとか。

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